美しいオープンワールドと、優しくて“ごった煮”なゲームデザイン 無限のコーデが楽しい『インフィニティニキ』レビュー
Infold Gamesの開発した新作オープンワールド『インフィニティニキ』をプレイした。
本作は同社が長年作り続けている「ニキ」シリーズの最新作。かわいくて綺麗なファンタジー世界で少女が旅をするという設定でありながら、大昔に戦乱があったことがわかるロアや「コーデバトル」という着せ替えが軸のユニークなバトルシステムなど、一般的なホールサム(健全な)ゲームとはひと味違う不思議なシリーズだ。
このたび、Unreal Engine 5によって新たに構築されたニキの世界は、とんでもなく美しく、どこを切り取っても絵になる完成度を誇っている。流行りのゲームをあれこれと取り入れて、ミニゲーム集になっているところは賛否が分かれるかもしれないが、この優しさしかない極上の空間を飛び回っているだけで癒される心地がした。では、要素をひとつずつ見ていこう。
溜息が出るほど綺麗な空間を、おめかしして歩き回ろう
本作は主人公の少女ニキが、プロム(北米の高校で卒業間際に行われるダンスパーティー)に着ていく服を探して屋根裏に向かうシーンから始まる。
そこでニキは相棒のモモとともに異世界に吸い込まれ、謎の女性から「ミラクルセットコーデ」を見つけるように頼まれる。その異世界ではファッションこそが物を言い、ニキもまたスタイリストとして住民たちの悩みを聞き、少しずつ頭角を表していくのだった。
ストーリーはよく見る異世界ファンタジーの王道を往くが、やはりビジュアルの美しさはピカイチである。これ以上に高精細のファンタジー世界を作り上げたゲームはすでにあるが、ファンシーでキュートな統一感を持ち、危機感や恐ろしさを一切感じさせないながらも、ちょっと向こうまで歩いてみたいと思わせる奥行きがある作品はなかなかないだろう。
特に「行ってみたい」「写真に収めたい」と思わせるロケーションを作ろうというこだわりは凄まじいものがある。蓮の浮かぶ池に突き出た湾曲した桟橋、グリーンカーテンが敷き詰められた豪邸の中庭、由緒正しい裁縫職人の構えるブティック、川沿いに佇む小さな一軒家……その辺の花壇ひとつ取っても完璧な位置に置かれているように見えて、スクリーンショットを山ほど撮ってしまった。
基本的には街の人の悩みを聞いて回りながらストーリーを進めつつ、報酬として大量のドレスやアクセサリーをもらいまくるのが目的のゲームだ。
ストーリーをいったん止めてオープンワールドを練り歩けば、それはもうワンサカとあるミニゲームやミニチャレンジに出くわし、その都度また多少の通貨や経験値が手に入るので、街に戻ったりガチャを回したりしてさらにたくさんのドレスが手に入る(なお、この手の運営型ゲームにありがちだが、特殊通貨の種類は説明したらキリがないほど豊富なので割愛させていただく)。
これらのチャレンジはこれまでの3Dゲームから引用してきたものばかりで、近年の「マリオ」や「ゼルダ」シリーズであるとか、Ubisoftのオープンワールドゲームを遊んだことのある人なら見た瞬間にルールが理解できるだろう(たとえば、レールに沿って流れる雲を起点にあちこちに散らばっている星を集めるもの、床を上げたり下げたりして特定の場所までボールを運ぶもの、狭い範囲を調べて隠れている星形のマークを見つけるもの、などなど)。
軽率に真似をする態度に対して眉をひそめる人もいるだろうし、どのチャレンジもただ単に置いてあるだけで別に世界観に溶け込んでいるわけではなかったが、ひとつひとつのクオリティはそれなりに高く、かといって面倒臭いほど長くもないので、探索のほどよいアクセントになっていた。とりわけ、衣装のデザインを解放するために必要な「奇想の星」が手に入るミニチャレンジはどれも良い距離感で見つかるので、ついつい寄り道してしまう。
また、ストーリー進行で手に入る衣装には、資源採取や釣り、機械の修理などといったゲームを進めるうえで必要なスキルが乗っているが、それ以外の衣装には性能はなく、これらを自由に組み合わせ、自分だけのコーデとメイクをカスタマイズできる遊びは、無限通りの楽しさがあった。
ゲームの節目に登場する「ニキ」シリーズの代名詞「コーデバトル」も重要だ。問題が起きたときに仲裁の代わりに行うこの世界における決闘のようなものだと思ってもらえればいい。
本作のファッションにはすべてキュートやセクシーといった属性が割り当てられており、さらに細かく色やサブ属性や価値の情報も入っている。指定されたお題に沿ったファッションを用意してきて、採点で勝つことでストーリーが進行したり、報酬がもらえたりするのだ。
ポイントを盛るためにどんどんゴテゴテになっていくファッションが笑えるし、自分なりにイケてるコーデを持ってきて辛辣に批評されるのも楽しい。コーデというのを軸に置いた本シリーズならではの良さが詰まっているように感じた。
町の電力を普及するために水路のダンジョンに潜って配水管パズルをやらされたり、デザイン図の盗難問題をコーデバトルで解決したり、吟遊詩人の竜のメンタルをケアしてあげたり、ごった煮だからこそ何が起こるかわからない面白さがある。主なターゲットは女児なのかもしれないが、ハードコアゲーマーにもついつい遊ばせてしまうテンポの良さと綺麗なビジュアルがそこにはあった。
運営型ゲームにありがちな、あまりにも煩雑なUIはいい加減どうにかならないのかと思ったが、このクオリティのゲームが無料で遊べるのは(昨今のF2Pゲームがどんどんハイクオリティになっている状況はあれど)さすがに度肝を抜かれた。『インフィニティニキ』、オススメである。
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