2~30代の半数がSNS疲れを感じている現代に“やさしいSNS”ができることとは?

2~30代の半数が“SNS疲れ”

 『「ReBit×あなたのいばしょ×GRAVITY」メディア向けトークイベント 』が11月20日、都内で行われた。ここにHiClub株式会社のGRAVITY運営責任者の上野絢大氏、認定NPO法人・ReBitの藥師実芳氏、同じくNPO法人・あなたのいばしょ理事長の根岸督和氏が登壇。SNSにまつわる問題などが多岐にわたり議論された。

 ReBitは、LGBTQもありのままの自分で未来を選べる社会を目指す認定NPO法人。学校や行政、企業でLGBTQやダイバーシティに関する授業や研修を約2200回・22万人以上に提供し、多様な性についての教材作成やLGBTQの就活生らのキャリア支援(計13000名超)も行っている。

 あなたのいばしょは望まない孤独をなくすため、信頼できる人に確実にアクセスできる仕組み作りのため、24時間・365日誰でも無料・匿名で利用できるチャット相談窓口を運営している。

 「GRAVITY」はダウンロード数650万を突破し、20~30代女性を中心に支持を集めるSNS。声とチャットで交流できる「音声ルーム」や興味のあるコミュニティで繋がる「趣味の惑星」、気の合うユーザー同士が繋がるための「性格診断テスト」など、匿名性を担保しつつ利用できるコンテンツが強みだ。

 トークセッションは2024年10月にGRAVITYユーザー2476人から得たアンケートの結果をもとに実施。上野氏、藥師氏、根岸氏が主に「SNSトラブルの実態」「SNS利用の不安や懸念」「SNSに求めること」「関心のあるSNSの取り組み」というトピックでそれぞれの意見を交換していった。

 先の調査によれば、SNSを利用する目的の第1位は「ひまつぶし」、次いで「情報収集」だが、上野氏が注目したのは第3位の「新たな交流を作るため」。「自分の生活圏とは違う、普段関わらないコミュニティを求める方が各年代で高い」と指摘する。

認定NPO法人・ReBitの藥師実芳氏

 しかしながら「既存のSNSに疲れを感じている」と答えた人が20代で54.8%、30代で57%と半数を超える結果に。疲れても続けてしまう理由としては20~30代が「トレンドや推しの情報収集」、40~50代が「寂しいから」が多かったという。

 これを受けて藥師氏は「SNSはプライベートだけではなく、仕事のコミュニティでもあるので疲れても離れづらい。でもSNSがあるから繋がれたり、相談できることも多い」とコメント。上野氏は「トレンドニュースを含めた情報収集でSNSを活用するのは変わらない。だから何かのSNSを辞めてしまったとしても、別の場所に引っ越すだけだと感じます」と分析した。

認定NPO法人・ReBitの藥師実芳氏

 また「SNSに不安を感じている」と答えた人は全体72%を占める。圧倒的に高かったのは30代で70%超。全年齢共通して疲れている項目は「人間関係」で、その理由としては個人情報の流出やネットストーカー被害、ロマンス詐欺などが挙げられるが、1位は「誹謗中傷」だ。

 「SNS上の暴言が誰かの命に繋がっている」と藥師氏。それに続いて、根岸氏が1日1000件、累計で120万件もあるという自身のNPOにおけるテキスト相談の実例データを発表する。

 月270件寄せられるSNS関連の相談で1番多い年代が、高校生を始めとしたティーンエイジャーから。その内容を深堀りすると最多が「ネットで知り合った人に何かしらのデータや写真を送ってしまった」、それ以下2位「他人を誹謗中傷してしまった後悔」、3位「誹謗中傷された」だった。

NPO法人・あなたのいばしょ理事長の根岸督和氏
NPO法人・あなたのいばしょ理事長の根岸督和氏

 これを踏まえて根岸氏から語られた「若年層においては、SNSに関わる部分で何かしらの対策をしなければいけないと思う」という言葉は重い。オーストラリアでも先日、世界初の16歳未満のSNS禁止法案が提出されたが今後、我が国でも同様の議論がされるだろう。

 また誹謗中傷の被害よりも加害に悩む人が多い、という実態も非常に興味深かった。いくつかのアプリで見られる投稿送信までの猶予機能なども誤投稿を防ぐ以上の効果がありそうだ。 

 「気楽に話せる、やさしいSNS」をコンセプトにしているGRAVITYも、ブラックリストに入ってるワードを検知した場合に投稿に確認が入る新機能の実装を検討するなど、ユーザー自身が感情的に攻撃的なコメントをしてしまう雰囲気を作らないような運営を心がけている。

  さらに「死にたい」などの特定ワードを検索するユーザーに関してReBitやあなたのいばしょといった団体への案内を表示するといった試みも今後検討されている。

 最近ではXにおけるブロック機能の仕様の変更など、ユーザーの縛りを緩和する流れもあるが、これについて上野氏は「自分たちとしては流されず、自分たちが目指す治安のよさに共感してくれるユーザーに向けて仕事をしていきたい」と語り、ブレない姿勢を見せた。

 最後に根岸氏が「これからもSNSに特化した相談は増えると考えているので、引き続き色々な方々と連携しながら施策を進めいきたい」、藥師が「マイノリティとか人たちを応援しよう思って、伝えていただいて本当にありがとうございます。引き続きよろしくお願いします」と挨拶。そして上野氏の「GRAVITYは今後も『よりよいSNSとは何だろう?』と考えながら、安心できるプラットフォームとして成長していきたいです」という言葉でイベントは幕を閉じた。

 もはや現代においてはSNS抜きで物事を考えるのは難しい。だからこそ放任せず、どのように付き合うかを考えていく本企画のような議論は有意義だといえよう。

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