『インフォーマ』に『ヴィレッジ』…ヒットメーカー・藤井道人 過去作から紐解く“飛躍の要因”

藤井道人の過去作から紐解く“飛躍の要因”

 台湾と日本の合作ともなった最近の作品『青春18×2 君へと続く道』(2024年)を観ても、世界的に評価の高い、台湾の新時代の青春映画を観ているように錯覚する瞬間や、逆に台湾のアート系映画らしくない、娯楽作としてのスケール感を表現する場面があるなど、独自の道を貫きつつ、娯楽映画であることを踏み外さずにアート的感性をとり入れることに成功していると感じられる。こういった実験的な試みもまた、経験をこなすことで切り拓いたものだろう。

 韓国映画の日本版リメイク『最後まで行く』においては、バイオレンスとノワールがエキセントリックに表現される、韓国映画のスタイルにも接近している。近年の韓国映画が日本映画に比べパワフルに感じられたり、海外の広い市場で評価される場合が多いというのは、シネフィル的価値観以外のところで観客を満足させようとするアプローチがとられた作品が多いという点もあるように思える。その意味でいえば、藤井監督こそ、そういった韓国映画の力強さと繋がる資質を有しているといえるかもしれない。

 そういった諸々の姿勢が、ドラマシリーズでも十分に発揮されたのが、『インフォーマ』だったというわけだ。鮮烈なのは、やはりそのバイオレンス表現だ。劇中で佐野玲於が演じる記者の三島が、「ギャングスタズ・パラダイス」ならぬ「反社パラダイス」とセリフで表現するように、暴力団や半グレなどの反社会的な集団が「おいコラ」と言いまくる治安の悪さが目立つ。このコワモテの雰囲気を最も体現しているのが、『ヴィレッジ』にも出演していた一ノ瀬ワタルだが、次なるシーズンでもクレジットされているので、活躍に期待が高まる。

 もちろん、森田剛や北香那、MEGUMIなどなど、前作から継続して出演する俳優陣のほか、さらに新たなキャストとして、莉子、池内博之、二宮和也、SUMIRE、兵頭功海、豊田裕大、山田孝之、渡辺いっけい、安井順平らが、新シリーズに出演することが決まっている。

 新シリーズの総監督には、前シリーズで藤井監督ともども複数のエピソードを演出し、とくに最終話を手がけている、藤井監督作で助監督を経験してきた逢坂元が就任している。藤井監督作の特徴には、前述したように突飛な演出が用いられず、同時にクオリティの高い映像表現が実現されることで、“俳優が引き立つ”という効果もある。それが藤井監督作が業界で信頼され、俳優がぜひとも出演したいと考える理由でもある。その仕事を熟知している逢坂元監督の演出にも期待できるところだ。『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』は、果たしてどんな作品に仕上がっているのか。実際にABEMAでチェックして見てほしい。

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