闇バイトの連絡ツール「テレグラム」が使用制限も…“問題が終息しない理由”とは

 首都圏を中心に強盗事件が多発している。実行犯はSNSを通じて「高収入バイト」として募集された闇バイトが多い。とりわけ“求人”に応募すると指示役から「テレグラム(Telegram)」でやり取りするように促されるケースが目立つ。テレグラムはパーヴェル・ドゥーロフ氏によって作られたロシア発のメッセージアプリ。言論や通信の自由を制限するロシア政府に対する不満から創設されたアプリだけあって秘匿性がとても高い。

 「プライベートチャットモード」では、サーバーを介さずにやり取りできるため、メッセージのやり取りはユーザーのデバイスにしか保存されない。時間を指定すれば、メッセージを自動削除してくれる機能もある。また、テレグラムは送信者から受信者に届くまでデータを全て暗号化する「エンドツーエンド暗号化(E2EE)」を実装しており、テレグラム内でのやり取りは第三者だけではなく運営さえ確認できない。つまりは指示役の足がつきにくく、安全な場所から実行犯を“使いっぱしり”として利用できるアプリと言える。

 そのため、テレグラムは麻薬密売、資金洗浄、児童ポルノ、テロといった犯罪行為の温床になっており、それらの犯罪行為に関する警察からの捜査協力を拒否したことにより、ドゥーロフ氏は8月下旬にフランスで逮捕された。テレグラムを開発した経緯として「プライバシーの保護」「自由なコミュニケーションの促進」を重視していたため、頑なに協力を拒否していたものと思われる。その後、釈放されたドゥーロフ氏は9月下旬にテレグラムの利用規約の改定を表明。規約違反者のIPアドレスや電話番号を開示する可能性を示唆した。

テレグラムからシグナルへ 規制→移行を繰り返しに

 テレグラムの規制が進む予感もあり、闇バイト問題は終息に向かいそうに思えたが、最近はアメリカ発のメッセージアプリ「シグナル(Signal)」が利用されるケースが増えている。警視庁、神奈川県警、埼玉県警、千葉県警の1都3県の合同捜査本部は8月から闇バイトを実行役とした相次ぐ強盗事件でこれまで33人を逮捕。調べによると、ほぼ全員が指示役とのやり取りとしてシグナルを利用していることがわかった。シグナルはテレグラム同様に「エンドツーエンド暗号化」を実装しており、一定期間で削除できるメッセージ送信も可能。ただ、テレグラムよりも解析が困難とされており、シグナルを利用されると今まで以上に指示役にたどり着く可能性は低い。

 「テレグラムに誘導される=闇バイトの可能性が高い」ということは徐々に周知されてきたが、今度はシグナルが闇バイトでのメインツールになろうとしている。ただ、今後仮にシグナルの規制が強化されたとしても、今度はまた違ったメッセージアプリが主流になるのかもしれない。結局のところ、いたちごっこにしかならず、闇バイトから被害に遭う人、都合良く利用されて逮捕される実行犯を減らすことは容易ではない。秘匿性の高いメッセージアプリについては、今後もその在り方を議論する必要がある。

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