“雨穴×クレヨンしんちゃん”異色のコラボはなぜ生まれた? その背景に迫る

 映画『変な家』の原作者としても知られる覆面ホラー作家兼YouTuber・雨穴(うけつ)が、8月31日放送のテレビアニメ『クレヨンしんちゃん』に出演する。

 『クレヨンしんちゃん』では、子どもから大人まで楽しめるようなユーモア溢れるエピソードの他に、”トラウマ級”と称される「ホラー回」が存在する。過去に放送された「ホラー回」では「殴られウサギの逆襲だゾ」や「オラとオラの対決だゾ」、「恐怖の幼稚園だゾ」などは、一度見たら頭から離れなくなるような内容となっており、今回の放送にあわせて公式YouTubeチャンネル「【アニメ】クレヨンしんちゃん公式チャンネル」では、それらの名作をみることができる。

 本稿では、今年の「ホラー回」に雨穴が出演する背景と、そこから生まれるであろう相乗効果について考えてみたい。

 雨穴は、本名や素顔、地声などが非公開の覆面ホラー作家。元々は2018年より『オモコロ』等でのライターとして活動をスタートさせ、YouTubeチャンネルでも独特な動画をいくつもアップしていたが、2021年に公開した「【不動産ミステリー】変な家」が大ヒット。この動画の内容に大幅な加筆を加えた長編小説『変な家』を出版し、近年では同作が漫画化・文庫化・映画化も果たし、映画は興行収入41億円を突破した。

 ほかにも単行本や小説を出版したり、テレビ東京『何かおかしい』という番組への出演など、幅広い活躍を見せているが、彼の面白さが最大限に出ているのは、やはり登録者が166万人を超える(※)YouTube内での表現だろう。

※2024年8月29日現在

 見た目からすでに特異な雨穴であるが、YouTubeの動画ではボイスチェンジャーを利用した女性のような甲高い声で話すのが特徴だ。雨穴のYouTubeチャンネルでは、日常の中に潜む不気味な出来事や、人間の心理の奥底にひそむ恐怖をテーマにし、視聴者を引き込む独特の語り口が何よりも魅力的である。動画の冒頭から予想できない結末が徐々に明らかになっていく過程は鳥肌もので、最後に明かす衝撃的な展開は視聴者を虜にする。筆者も動画を視聴した後はその考察が頭に残り、深く考えさせられるほど夢中になった。

 ”進み出したら止まらない”影響力は他のクリエイターが雨穴の動画を見て実況する動画を投稿するようになるなど、新たなファン層を獲得&躍進とともにさまざまな形であらわれている。単純に動画の作りも見やすいため、ホラー好きでなくとも楽しめるというのも、彼の強みと言っていいだろう。今回『クレヨンしんちゃん』とコラボすることになったのも、この見やすさ・わかりやすさが背景にあるのかもしれない。

 過去に『クレヨンしんちゃん』は、ハローキティやあいみょん、さらにプロバスケットボール選手の八村塁など、幅広い世代やジャンルとコラボレーションを行い、さまざまな層から親しみを持たれている。そして今回、異色とも言える雨穴とのコラボの実現により、独特な世界観を醸し出す”雨穴ワールド”が『クレヨンしんちゃん』のユーモアとどのように融合するのか、良くも悪くもこの新しい試みが非常に興味深いところである。雨穴自身「小さいお子様にはちょっとだけ気をつけてご覧ください!!」とコメントを残しつつも、これまでのホラー回とは一味違う、視聴者を沸かすような予想外な展開や結末に期待している自分がいる。

 今回のような挑戦は、YouTuberにとって新しい活躍の場を得るチャンスにつながると考えられる。現代は芸能人やスポーツ選手、アーティスト、テレビアニメなどさまざまな人やサービスがSNSを扱い、互いに交流を深めている時代である。その中でYouTuberも進出してコラボレーションすることは、新たなエンターテイメントを提供することに繋がるため欠かすことはできない。もしかすると相反するような予想外のコラボレーションが、私たち視聴者を引き込むような面白いコンテンツを生み出すのかもしれない。動画クリエイターと国民的アニメのコラボレーションの新たな形として、放送後にどんな盛り上がりが生まれるのか、いまから楽しみだ。

◾️関連リンク
雨穴YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@uketsu
【アニメ】クレヨンしんちゃん公式チャンネル:https://www.youtube.com/@kureshin_official

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