CS版『VALORANT』がついにリリース “クロスプレイ非対応”はジャンルのスタンダードとなるか
8月3日、CS版『VALORANT』がリリースを迎えた。
コミュニティに期待されるなかでようやく実現した同タイトルのCSへの移植では、クロスプレイの不採用が界隈の話題をさらっている。はたして運営の異例とも言える決断は功を奏すか。その意義を考えていく。
Riot Gamesが贈るチーム対戦型のタクティカルFPS『VALORANT』
『VALORANT』は、米・Riot Gamesが開発/発売するチーム対戦型のFPSだ。プレイヤーはオンライン上の他者と5人で1つのチームを形成。対峙する敵チームと攻守を交代しながら、エリアの防衛をめぐる戦いへと身を投じていく。ゲーム内には役割や特性、スキルの異なる20名以上(2024年8月時点)のキャラクターが登場。プレイスタイルや好みにあわせ、自由に相棒を選べる点が特徴となっている。よりゲーム理解が深まると、ターンやチーム内のバランス、相手との相性などを踏まえて最適なピックを考えるという、立ち回りとは別の戦略性も生まれる。このような性質から同タイトルは、タクティカルシューターというジャンルにも分類される。
『VALORANT』は2020年6月にリリースを迎えているが、これまでの4年間はPCのみを対象にサービスを続けてきた。『Apex Legends』や『Overwatch 2』『Call of Duty: Modern Warfare III』『Tom Clancy’s Rainbow Six Siege』など、類似するゲーム性を持つ人気作がCS向けにも展開されてきたことから、ジャンルを愛好し、かつPCを所有していない層には、CS機への移植を待望されてきた経緯がある。マルチプラットフォームでの展開がシーンにどのような影響を及ぼすかに注目が集まっている現状だ。
クロスプレイ非対応という異例の対応がジャンルにもたらすもの
一方、上述したシュータージャンルの作品はすべて、マッチングシステムにクロスプレイ(※)を導入しているが、『VALORANT』はこれを取り入れていない。そのため、今後はPCとCSで異なる環境が構築されていくことになる。CS版の開発ディレクターを務めたアーナー・ギルファーソン氏は「コントローラー操作特有の制限に向き合うことが最初の課題だった」と、リリースを迎えるにあたって出演した動画インタビューのなかで語っている。ゲーム性、公平性を保つためのさまざまな方法を模索したうえで、CS版には独自の調整を施していく道を選んだようだ。
※…PCとCS機など、異なるプラットフォームのプレイヤーが一緒にプレイできる仕組みのこと
キャラクターの能力変更や「フォーカスモード」の導入はその一例である。フォーカスモードとは、コントローラーの左トリガーを押すことで一時的にエイム感度が低くなる要素のこと。適切な状況判断が求められる『VALORANT』では、索敵時などに素早く振り返ることができる仕組みと、敵と対峙しつつある場面での繊細なエイムを、キーボード/マウス操作と同様にコントローラー操作でも両立する必要があったと、同氏は述べている。
シューター作品のマルチプラットフォーム化をめぐっては、クロスプレイを導入したことでもたらされるPC/CS間の不公平性の解消が長年の課題となっている。いまや知らない人はいないであろう同分野の人気タイトル『Apex Legends』では、キーボード/マウス操作でのみ可能な「タップストレイフ」、(CSの方が不利であることを考慮し)コントローラー操作にのみ付与されているエイムアシストなどが議論の的となるケースも珍しくない。
そうした一連の動向を受け、運営は前者の削除を試みた経緯もある。しかしながら、そのようにして新たに構築された環境もまた、ある種の不公平性をはらんでいるとされ、現状は当初のように使用できる状況となっている。去る8月7日に配信されたシーズン22「ショックウェーブ」のアップデートでは初めて、クロスプレイが適用されているPC版の環境において、エイムアシストを弱体化する措置にも及んでいる。このような経緯を見れば、クロスプレイのもたらす不公平性がいかにジャンルの永遠の課題であるかを理解してもらえるのではないだろうか。
そうした観点に立つと、『VALORANT』運営による異例の対応には別の意義も見えてくる。PC版にクロスプレイを導入せず、CS版を独立した環境にするという施策が一定の成果を上げれば、プラットフォーム間の公平性に課題を抱え、かつ競技性の高いFPS/TPSジャンルにとっては重要なモデルケースとなっていくのではないか。
無論、クロスプレイの導入には、両プラットフォームをまたいで友人と遊べる仕様を求めるプレイヤー側への配慮や、スムーズにマッチングを行うために多くのアクティブプレイヤーを確保したい運営側の事情など、さまざまな要因が存在していると推測できるため、異なる環境を構築することが一概に有意義であるとは言い難い。各作品の持つゲーム性と両立するためには『VALORANT』同様、別の調整が必要となるケースもあるだろう。しかしながら、こうした問題を考慮したとしても、異なる環境にするメリットがあるのならば、今後はクロスプレイの導入自体が同分野から減少していく可能性もある。
はたして『VALORANT』のチャレンジはどのような結果を見るだろうか。今後の動向を注視していきたい。
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