美麗な手描きアートに彩られた和風世界を旅し、神話の謎を解き明かせ 高水準のアクションADV『ボウと月夜の碧い花』

 色鮮やかな和風の神話世界を巡るアクションアドベンチャー『ボウと月夜の碧い花』が、7月17日にリリースされた。

 本作はいわゆるメトロイドヴァニアの作りであり、いくつかのロケーションを行きつ戻りつしながら、アクションを増やしてさらなるエリアへ進行していくタイプのゲームである。太めの線で描かれた美しいグラフィックや、雅な雰囲気の音楽が特徴的な本作を6時間ほどプレイした感想をお届けしたい。

絢爛なグラフィックで描かれた和の世界

 主人公は「狐天体花」という種族の「ボウ」。重要な儀式を執り行うために、天界から降りてきたのだ。ボウが地上に降りきてた直後に、遠くでダイダラボッチらしき巨大な妖怪が現れ、不気味に練り歩き始める……。「一体あいつは何なのだろう? ここはどういう場所なのだろう?」とプレイヤーは勘繰るが、今のところ答えはない。

 アサヒと名乗る狐に導かれるがままに、ボウは動き始める。道中でカブト虫の相撲取りや、尺八吹きの僧侶などあらゆるNPCと出会いながら、彼はどこへとも知らず旅をしてゆく。果たして、彼は何を目指しているのだろうか。

 目を引くのは、なんといってもそのアートだ。くっきりとした線と、大胆な色遣いの省略によって描かれた和風のキャラクターたちは、誰も彼もがとても愛らしい。責任のある職に就いている者は少し頭身が高いのも面白い解釈である。彼らを助けたら、友好の証として一緒にお茶を飲むことになるのも素敵だ。

 雄大さを感じさせる遠景も見事なもので、森林や雪山といった鉄板のロケーションも、独特のライティングにより飽きさせない工夫を感じる。

 また、ストーリーの合間にはアニメによるカットシーンも挟まる。どこまでも手描きにこだわったアートスタイルは、伝統的なアニメファンに刺さるものがあるだろう。

手堅く作られたちょっとユルめのメトロイドヴァニア

 本作は『Hollow Knight』に代表されるような、空中戦を主体としたメトロイドヴァニアであり、ボウが敵を攻撃すると一度だけ再度ジャンプすることができる。

 空中攻撃を連続して当てるとゲージが溜まっていき「だるま」という遠距離攻撃技が強化されるので、基本的には地に足を着けず、アクロバティックに敵の頭を叩き続けるスタイルが求められる。

 それ以外にも、周囲がトゲだらけで、空中に配置されているギミックを叩いて連続ジャンプをするプラットフォーマーステージが目立ち、なにかと空中制御を求められるゲームだ。このあたりは昨今のメトロイドヴァニアの流行りとも言えるもので、定番ゆえに求められているところとも言えるし、流石に食傷気味でもある。

 ただし、本作はそんなプラットフォーマー部分くらいしか苦労することはなく、道中のパズルやボス戦は、何度か再挑戦すればクリアできる塩梅になっている。普段はあまりアクションゲームを遊ばないプレイヤーにちょうどいいデザインだと言えるだろう。

 ゆえに、先述した「だるま」や、ボウの装備品である「御守り」は、豊富に用意されている割には、アクションゲームを日頃から多く遊んでいる筆者からすると、細かく付け替える理由があまりないのがやや気になったが、それ以外の点において大きな瑕疵は見当たらなかった。

 ギミックを凝らしたボス戦(特におそろし橋のハシヒメ)は本作の目玉とも言えるもので、ぜひともそこまでは挑戦してみてほしいと思った。ボスのビジュアル的なかわいさと、妖怪としてのおどろおどろしさと、絶妙な難易度のプラットフォーマーアクションが混ざり、これは図抜けて素晴らしい出来だったのではなかろうか。

 以上『ボウと月夜の碧い花』のプレイレポートをお届けした。昨今の高難易度メトロイドヴァニアは厳しすぎると思っている方や、くっきりしたビジュアルの和風世界を歩き回りたいという方、巨女妖怪に怒られたいという方にぜひオススメである。

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