湊かなえ、永作博美の朗読を絶賛 Audible記者発表会レポート

 『サファイア』のなかに収められている「ムーンストーン」が2016年にフジテレビでテレビドラマ化された時、主演を務めたのが永作だった。刑務所に入る過酷な役柄に体当たりで挑んでいた永作に感銘を受け、湊は今回彼女であればまた違う物語の側面が見えたり、深まっていくんじゃないかと永作を指名したという。永作は声のみで『サファイア』の世界観を表現するのに苦労したようで、特に普段は演じることはほとんどない男性の役や同年代の女性3人の演じ分けが難しかったようだ。「Audibleは聴くだけなので、自分の世界に入れる心地いい瞬間でもあるけれども、違和感に気づきやすいコンテンツだとも思うので、それはやはり感じてほしくないですし、作品を傷つけるという思いもありました。意図とは違うふうになってしまうのは嫌だなと思いながら、物語の展開は激しいんですけど、とにかく私は繊細に、聴く人が違和感を持たないように読みたいと思っていました」と収録時を振り返る。

永作博美、湊かなえ

 収録を見学しに行ったという湊は控室に聞こえてきた永作による男性の一人語りに、その情景が浮かんできたという。「いまは男性だと分かるし、娘だと、お母さんだと分かる。大きく声を変えているわけではないのに、その人の内面を捉えているから、こんなにも伝わってくるんだろうなと思って感動したんです」と永作の朗読を絶賛する。

 Audibleの話が来た当初は「本ぐらい自分で読めばいいんじゃないか」と積極的ではなかった湊だが、永作が朗読をした『サファイア』を聴き、それは大きな勘違いだったとして、「テレビドラマ化、映画化、Audible化というくらいに確立した物語の表現方法」だと称賛する。続けて、「一度声で入ってくると、今度自分が本を読み返したり思い出したりするときに、永作さんの声で物語が蘇ってきたり、こんな声のトーンで言ってたんだとか、こういうふうに間があって掛け合いがあったんだというような耳で聴くからこその新しい発見があるコンテンツだと思います。耳から物語に触れながら日常生活を送れるというのは、生活自体が豊かになるものだなと感じました」と新たな読書体験を推奨した。

 さらにオーディオファースト作品として8月30日に配信予定の『AI分析でわかったトップ5%社員の読書術』の著者である越川慎司とAudibleシニアディレクターコンテンツの宮川もとみ氏による対談も行われ、“トップ5%”は忙しいからこそ本を読んでいると越川は語る。読書と仕事を分けておらず、仕事の中に本があり、業務効率を高める手段として読書をうまく活用している、その一つにAudibleを利用している人が多くいることを話していた。

越川慎司、宮川もとみ

 発表会は宮川氏とAudibleカントリーマネージャーの逢阪志麻氏により進められ、冒頭に先述した聴き放題対象作品の増加だけでなく、会員数は2023年4月から2024年4月の1年間で28%の増加、聴取時間も同じ期間で55%増えたという。今後もAudibleでは村上春樹の『羊をめぐる冒険 上・下』 を染谷将太による朗読で2024年冬配信、同じく村上春樹の『スプートニクの恋人』 を宮﨑あおいによる朗読で2024年秋配信など、続々とオリジナル作品がラインナップされている中で、東野圭吾による加賀恭一郎シリーズ『誰かが私を殺した』がオーディブルオリジナル作品として7月に配信されることが発表された。配信を記念したお披露目イベントも7月に開催予定とのことで、詳細は追ってアナウンスとなる。

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