“手狭な日本の住宅”で「MRのある暮らし」を体験 Meta公式イベント『MR House』レポート

手狭な日本家屋で「MRのある暮らし」を体験

「四畳半あれば、何でもできる、何にでもなれる。」

 Metaが打ち出したこのキャッチコピー、文言そのものに対しては多少の賛否両論もあったが、「場所の制約を超える」というのは、VRの持つ主要な特性の一つだ。VRヘッドセットをかぶれば、ヴェネツィアのゴンドラに乗ることも、月面基地を歩き回ることも、ドラゴンが飛び交う異世界に行くことだってできる。

Meta Quest 3「四畳半あれば、何でもできる、何にでもなれる。」篇

 昨年10月に発売された『Meta Quest 3』は、場所に縛られないVR世界の旅を、ハイクオリティに実現する。くわえて、『Meta Quest 3』はVRだけでなく、現実世界の上にバーチャルなものを重ね合わせる「MR(Mixed Reality:複合現実)」も体験できる、数少ないコンシューマー向けXRヘッドセットだ。

 そんな『Meta Quest 3』は、日本の手狭な住宅事情でも十分すぎるほど活躍できる――そう打ち出そうとするMetaの公式イベント『MR House』が開催された。筆者も手元に所有している『Meta Quest 3』だが、さて、四畳半で実際にどんなことができるだろうか。標準機能や対応アプリを、イベント中の体験コンテンツからご紹介していこう。

玄関で“バーチャルな猫”とたわむれる暮らし

 『MR House』のテーマは、日本の一軒家で『Meta Quest 3』を活用する「日常生活のシーン」の体験だ。多くのVRデバイスが志向するゲーム用途や、ソーシャル用途とは少し異なる、普段使いのユースケースが紹介された。

 会場となったAraiya Tokyoは、東京・港区の泉岳寺駅から徒歩圏内にある古民家のような宿泊施設だ。部屋数はそこそこあるものの、一室あたりの間取りは四畳半程度と、「日本の手狭な住宅事情」を擬似再現するにはもってこいの舞台である。

 

 土間のような玄関でまず体験したのは、『もっと!ねこあつめ』で触れ合う猫との暮らしだ。MR機能によって、フルカラーの現実世界上に出現した猫にエサをやり、ねこじゃらしでたわむれ、持ち上げて愛でる。デフォルメデザインであっても、猫との触れ合いはやはり心が安らぐ。

 ペット不可の物件でも、ペットとの暮らしが体験できる「バーチャルなペット」は、MRのわかりやすい訴求点だろう。『もっと!ねこあつめ』以外だと、直近ではARゲーム『Peridot』の派生MRアプリ『Hello, Dot』も適任だ。

 

模様替えも、マルチモニターも、楽々実現

 2階では、いくつかの“暮らしの1シーン”に触れた。まず最初は、部屋の模様替え。とはいえ、動かす家具もまたバーチャルである。『Joyverse』というアプリを使い、家具やインテリアの3Dモデルを選び、こじんまりとした和室に置いていく体験だ。

 深度センサーも搭載した『Meta Quest 3』のMR表現は正確だ。和室に設置された3Dの家具たちは、その場を歩き回ってもおおむね指定した位置に存在し続ける。購入前に実寸大の家具をMR置いてみて、サイズ感や、部屋との相性を事前に測れるというわけだ。日本では未対応だが、アメリカでは『Joyverse』内でその場で家具注文もできるらしい。「勢いで買ったが部屋に合わない」という不幸な事故を減らせるならば、なかなかによさそうだ。

 『Meta Quest 3』のビジネスユースも体験した。仮想ディスプレイアプリ『Immersed』を用いた、バーチャルマルチスクリーン環境のPC作業だ。手元にラップトップしかなくても、『Immersed』経由で『Meta Quest 3』を接続すれば、デフォルトでは3枚、課金すれば5枚までマルチスクリーンを実現できる。

 ディスプレイを買い足す必要も、複雑な配線でPCに接続する必要もない。ディスプレイの位置やサイズ変更も自由自在だ。正面に原稿、左にDiscordを表示し、交互に見比べながら仕事をする自分のような人種にはうってつけの環境だ。もっとも、そこそこの重さのヘッドセットを装着したまま首を動かすと、そこそこの疲労感があることは付言すべきだろう。

XRな余暇とワークアウト

 仕事を終えたあとの余暇にも、『Meta Quest 3』は役立つ。多くの人にマッチするいまどきの余暇は動画鑑賞だろう。というわけで次は『YouTube VR』を体験した。

 初代『Meta Quest』時代から配信されている、いわば“ド定番”なアプリのひとつだが、『Meta Quest 3』ならばMRモードが活用できる。つまり動画ディスプレイを、部屋の好きな場所に表示して視聴できるのだ。正面はもちろん、左右の壁に置いてもいいし、寝転がってから天井に置いてもいい。サイズも自由だ。刺激がほしければ360度動画もある。狭い家でも活躍できるプライベートホームシアターとしての役割も担える、ということだ。

 最新アップデートで、過去の思い出を臨場感たっぷりに楽しむこともできるようになった。立体視で鑑賞できる「空間ビデオ」や、前方180度に展開される「パノラマ写真」も、『Meta Quest 3』ならば体験できるのだ。

 直近では『Apple Vision Pro』の専売特許のようなイメージがある「空間ビデオ」だが、『Meta Quest 3』でも及第点のクオリティだ。単なる映像を見るよりも、より「過去の瞬間」を見ている印象が強い。利便性の面では、iPhoneでの撮影とアップロードが必要なことを踏まえると、ヘッドセット一台で撮影まで完結する『Apple Vision Pro』に軍配が上がるが、本体価格を考慮すれば一択にはならないだろう。

 動画や写真ばかり見ていては体がなまってしまうからと、ジムに行って体を動かす……いや、そんな必要はない。『Les Mills Body Combat』を起動すれば、和室はそのままフィットネスボクシングのジムに早変わりだ。

 本作は、リズムに合わせて拳を振るう、シンプルで直感的なフィットネスアプリだ。なんだかんだ筆者も初めてプレイしたが、基本操作で迷うことはない。ゲーム慣れしていない人でも、これならば大丈夫だろう。そして、5分程度のワークアウトはしっかりと身体に負荷がかかる。在宅ワーカーには特に効き目抜群。

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