『BPL SDVX』ファイナルの激闘をレポート 「マジカルでもミラクルでもイリュージョンでもない」戦いの結末は

『BPL SDVX』ファイナルの激闘をレポート

ファイナル SILK HAT vs TAITO STATION Tradz

 2024年3月20日。この日の午後、船橋アリーナ周辺をひとときの驟雨が通り過ぎた。雨上がりには陽が差し、空には虹が見事な弧を描いていたという。

DAIKI.選手は応援メッセージで埋め尽くされたフラッグを羽織って登場
DAIKI.選手は応援メッセージで埋め尽くされたフラッグを羽織って登場

 ファイナル開始前には選手が観客席の中央に設けられた花道を通って登場する演出。チームイメージミュージックのTsubusare BOZZ feat.madoka*「Colorful Magical Parade」をBGMに、会場の白いサイリウムに見送られ、“マジカル・ミラクル・イリュージョン!”をキャッチフレーズに掲げるteam SILK HATの082選手、STR選手、DAIKI.選手が舞台に歩みを進めた。

 一方のTAITO STATION Tradzのイメージカラーは赤×黒。誰が称したか「紅白ボルテ合戦」とは粋な表現だ。グレイスによる選手紹介アナウンスと、493Water「NO SURRENDER」の強烈なディストーションが掛けられたキックに乗って、“The Party Rockers here to beat.”を標榜するTAITO STATION Tradzの350B1選手、MURAKAMI選手、XD*LEVI.選手が姿を見せた。

花道を歩むXD*LEVI.選手。チームカラーに染めた髪とその佇まいでエースの貫禄を振り撒く
花道を歩むXD*LEVI.選手。チームカラーに染めた髪とその佇まいでエースの貫禄を振り撒く

 ファイナルの口火を切る先鋒戦は082選手と350B1選手によるメガミックスバトル。セミファイナルからさらに課題曲のレベルが引き上げられ、この戦いの基準レベルは18。相互PUCでのタイが発生しづらくなり、序盤から各自の選曲による点の取り合いが頻発。自選曲をひとつ落とすことが後の致命傷につながる熱い展開を、2セクション連続S-PUCという信じがたい展開すら見せた350B1選手が制した。

最終戦だけにチーム控え席からの応援も熱が入る。オーディエンスの熱狂は言わずもがな
最終戦だけにチーム控え席からの応援も熱が入る。オーディエンスの熱狂は言わずもがな

 次鋒戦はSTR選手 & DAIKI.選手、XD*LEVI.選手 & MURAKAMI選手によるタッグバトル。ここではSILK HATが終始安定したプレーで自選曲「HAVOX」を通すと、その勢いでTAITO STATION Tradzによる選曲「Dogeza Stairs」までSTR、DAIKI.両選手がMAX-1ケタという驚異のスコアで打破。2連勝でポイントの逆転を果たした。

自選の曲名に合わせて土下座をかますユニークな一面も。『BPL SDVX』には、選曲公開時に選手がジャケット画像を真似る伝統芸能がある
自選の曲名に合わせて土下座をかますユニークな一面も。『BPL SDVX』には、選曲公開時に選手がジャケット画像を真似る伝統芸能がある

 中堅戦はSTR選手と350B1選手による対決、課題曲の譜面レベルはついに19に突入した。「Verse IV」「For UltraPlayers」「Dyscontrolled Galaxy」といった、KAC最終課題曲を含めた超難関楽曲が無数に飛び交う恐怖のメガミックスバトル。レギュラーシーズン第12試合の先鋒戦や大将戦でも鮮烈な激戦を繰り広げた2人が、ここでも凄まじい試合を見せつけた。

 レベル19をものともせず相互に星を取り合った第2~5節、自選で発動させたレベル3のEXCEED GEARを互いに撃ち落とし空振らせてみせた第7~8節、ラスト直前にポイントを均衡させた第10節。瞬きひとつすら許しがたいダイナミックな展開が観衆の琴線をごりごりと揺さぶる。

 勝負を決するアウトロセクションはTAG作曲・cosMo@暴走P編曲による「GERBERA-For Finalists-」。ファンから畏怖を込めて「壁」と称される難地帯を取りきり、STR選手が粘り勝ち。この一日で最も観衆の脳内物質を放出させたであろう驚愕の一戦は、SILK HATの勝利に終わった。

音楽ゲームのeスポーツ界隈で広く活躍する“異界の挑戦者”STR選手が、また一つその名を轟かせた
音楽ゲームのeスポーツ界隈で広く活躍する“異界の挑戦者”STR選手が、また一つその名を轟かせた

 副将戦はSTR選手と082選手、MURAKAMI選手と350BI選手による最後のタッグバトル。「月光乱舞」ではSILK HATがリードするも、中盤からじわじわと差を縮めたTAITO STATION Tradzが逆転、わずか8点差で勝利の果実をもぎ取る薄氷の展開。

タッグバトルの勝利を分かち合う350BI選手とMURAKAMI選手
タッグバトルの勝利を分かち合う350BI選手とMURAKAMI選手

 そしてタッグバトル最大の熱戦となった「Absurd Gaff (Metallize Remix)」は、序盤にSTR選手主導で相手に水をあけたSILK HATが、シーソーゲームを経て終盤で突き放し、TAITO STATION Tradzの選曲にカウンター。チーム総合スコアを、総合優勝にリーチのかかった6-3へと広げてみせた。

ファイナルにふさわしい激戦を制したSILK HAT。これほどアツいタッグバトルは『BPL SDVX』の2シーズン史を通してもなかなか類を見ない
ファイナルにふさわしい激戦を制したSILK HAT。これほどアツいタッグバトルは『BPL SDVX』の2シーズン史を通してもなかなか類を見ない

 そして『BPL S3 SDVX』のフィナーレを飾る大将戦は、DAIKI.選手とXD*LEVI.選手によるエース対決。音楽ユニット・隣の庭は青い(庭師+Aoi)によるThe 10th KAC オリジナル楽曲コンテスト優秀賞楽曲「Xb10r」では、DAIKI.選手がシーズンの主人公格たる安定感を発揮して自選曲に勝利。BlackYooh vs. siromaru「BLACK or WHITE?」も、ブレイク地帯で0点差という大接戦をDAIKI.選手が制した。

 そして3曲目の最終課題曲として、『BPL S3 SDVX』オリジナル楽曲コンテスト最優秀賞楽曲、隣の庭は青い(庭師+Aoi)「NEMSYS ARENA World Hexathlon」が発表された。

大将戦曲の発表。庭師とAoiのユニット「隣の庭は青い(庭師+Aoi)」が最優秀楽曲の座を射止めた
大将戦曲の発表。庭師とAoiのユニット「隣の庭は青い(庭師+Aoi)」が最優秀楽曲の座を射止めた

 ここでは粋な演出として、画面表示が『BPL』形式の対戦レイアウトではなく、通常のゲームプレイ画面をベースとしたものに変更。素性の枠を越えてエキシビションマッチとしての芳香すら漂わせる対決では、NOTES、ONE-HAND、TSUMAMI、HAND-TRIP、TRICKY、PEAKという『SDVX』の譜面傾向を全て織り込んだ最高レベルの楽曲での対決では、TAITO STATION TradzのXD*LEVI.選手が勝利を飾った。

 SILK HATとTAITO STATION Tradzの最終チームポイントは10-5。ドラマチックな名試合の数々が生まれたセミファイナル〜ファイナルを制覇し、栄冠を手にしたのはSILK HATであった。

表彰式

 大会に続いては表彰式を開催。かつて『SOUND VOLTEX』というシステムそのものを立ち上げたひとりでもある『BPL』エグゼクティブ・プロデューサーの西村宜隆 常務執行役員、そして『BPL』チェアマンを務める沖田勝典 代表取締役社長が、3カ月にわたるシーズンを彩った選手たちと優勝チームを祝福した。

 レギュラーステージの個人賞として、PUCスターのYU11選手(APINA VRAMeS)、ベストバディ賞のMURAKAMI選手 & 350B1選手(TAITO STATION Tradz)、EXCEED GEAR賞のSTR選手(SILK HAT)がそれぞれ表彰を受けた。

 優勝を果たしたSILK HATの表彰では、オーディエンスも一面の白色サイリウムで祝福。司会の森一丁は、SILK HATが昨年のSEASON 2ではクォーターファイナル敗退という結果に終わり、その苦難を乗り越えて成し遂げた偉業を踏まえたうえで、「マジカルでもミラクルでもイリュージョンでもない、本物の実力で上り詰めた」と、チームキャッチフレーズに引っ掛けて3人を激賞した。

シーズンを制したSILK HATチームメンバーが優勝トロフィーを掲げた
シーズンを制したSILK HATチームメンバーが優勝トロフィーを掲げた

 SILK HAT各選手からの優勝のあいさつで、082選手は嗚咽に声を途切れさせながら、「このシーズン中、なかなか振るわないこともあったが、最後の最後に一矢報いることができた」とコメント。「みなさんの応援のおかげで優勝できた。今日のことは一生忘れません」と言葉を絞り出し、会場から大きな拍手を浴びた。

 STR選手は、自身がチームで唯一『SEASON 3』からの新規参戦者であったことに触れ、「分からないことだらけでチームに参加したが、2人とファンのおかげでここまで来れた」「『BPL』はVOLFORCEがすべてじゃないぞ、を見せられた」と、ゲーム内スキル値では測定できない真の実力者として、実績に裏打ちされた言葉をファンに向けた。

 そしてドラフト1巡目のDAIKI.選手。前シーズンからの苦難を超えて優勝トロフィーを手にし、082選手が流す涙を目にして優勝を実感したと話し、「SILK HATって、仲が良いチームみたいに認知されていると思うが、ここにくるまでずっと楽しかったわけじゃない。つらいこと、しんどいこともあった。でも最後まで、優勝まで乗り越えられたのは、メンバー、ファン、近くで支えてくれてくれた人々のおかげ。本当にありがとう」とあらためての感謝を表明した。

 最後に「絶対言いたいことがある」と前置きのうえで、「seatrus! やったよ、優勝したよ!」と呼びかけ。事情があり前シーズンをもってSILK HATを退団した大切なチームメイトに向け、この場にいなくてもずっと一緒にいたのだと、感動のコールで優勝コメントを締めくくった。

『BPL S3 SDVX』はまだ終わらない

 試合後にはeSports推進室の室長を務める植松斎永氏が登壇し、ゲーム内イベント等を含む数々の告知が行われた。最注目といえるのは、4月20日に開催予定の『ULTIMATE DREAM MATCH』と称するスペシャルな企画だ。

 これは『BPL S3 SDVX』本戦に出場した7チーム21人の選手に加え、事情から本編出場の機を逸していた3人のスーパープレイヤーが共に出演、2チームに分かれて激突する特別イベント。esports 銀座 studioでの現地観戦に加え、バブリックビューイングやオンライン配信も提供される。

 船橋アリーナでの激戦を越え、音楽ゲームeスポーツの最先端たる『BPL』は続いていく。これからの展開からも目が離せない。

『BEMANI PRO LEAGUE -SEASON 3- SOUND VOLTEX ULTIMATE DREAM MATCH』イベント概要

【開催日程】
2024年4月20日(土)開場13:00 / 開演14:00

【場所】
esports 銀座 studio
東京都中央区銀座一丁目11番1号
コナミクリエイティブセンター銀座

【出演者】
<選手>
BEMANI PRO LEAGUE -SEASON 3- SOUND VOLTEX 選手(全21名)
7C、TORIDE、KIK

<試合会場>
グレイス(CV:石橋桃)、嬬武器雷刀(CV:悟代武)、嬬武器烈風刀(CV:吾妻奎太)

<パブリックビューイング会場>
ボルテナイザー・マキシマ feat.森一丁、つまぶきfeat.伊藤節生(オンライン出演)

【イベント公式ウェブサイト】
https://p.eagate.573.jp/game/bpl/season3/sdvx/dream_match/top/index.html

© Konami Amusement

音楽ゲームプロリーグの歩みと最先端ーー『BPL S3 SDVX』ファイナルに寄せて

音楽ゲームのeスポーツプロリーグ『BEMANI PRO LEAGUE -SEASON 3- SOUND VOLTEX』の最終戦と…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる