音楽好きにすすめたい、ちょっといいヘッドホンとDACの組み合わせ SONY『MDR-1AM2』+Astell&Kern『AK HC2』長期レビュー

ちょっといいヘッドホンとDACを自腹レビュー

さらにもう一歩ステップアップ コスパに優れたDACAstell&Kern『AK HC2』を購入

 さて、『MDR-1AM2』を『USB-C - 3.5 mmヘッドホンジャックアダプタ』に接続して音楽を聴くのもいいのだが、このセッティングで音楽を聴いている場合、まだ簡単に音質を向上できる“のびしろ”がある。それは『USB-C - 3.5 mmヘッドホンジャックアダプタ』よりも高性能な「USB DAC」を接続することだ。

 「USB DAC」とはなにかというと、「オーディオインターフェイス」と言っても間違いではないし、業界によっては「DAコンバータ」などと呼ぶこともある。「Digital to Analog Converter」の略で、日本語にすると「デジタル・アナログ変換回路」のことだ。要は「デジタルの信号をアナログに変換する機構」のことで、音楽の世界だとCDプレイヤーにもスマートフォンにもMacにもこの「DAC」が入っており、ゼロとイチで記録された信号を音の波形に変換しているのだ。

 つまりDACという機械は大体の「音楽を鳴らせるデジタルな機械」の中に標準的に備わっているのだが、標準搭載のDACは貧弱で音が悪かったり、情報量の多いデータに対応していなかったり(つまりハイレゾが聞けなかったり)する。なので、独立した機械として売っている製品を別途購入して、より良い音で音楽を聴いたりする文化がある。

 ちなみに前述の「USB-C - 3.5 mmヘッドホンジャックアダプタ」にもDACのチップが入っており、24bit/48kHzまでのハイレゾ音源は再生できる。ただ、これよりもさらに多くのフォーマットのハイレゾ音源に対応した高性能なDACが欲しいと思い、選んだのはAstell&Kernの『AK HC2』。これは384kHz/32bit・DSD256に対応するDACで、これ1台と先述のヘッドホンを持っておけば一通りの高音質な音源を満足に鳴らせるはずだと購入に至った。

 購入の決め手となったポイントをもうひとつお伝えすると、『AK HC2』は「4.4mm5極バランス端子」というジャックを備えていたことがある。同製品には一般的な3.5mmのステレオミニジャックが付いていないのだが、今回買ったヘッドホン『MDR-1AM2』には4極バランスケーブルが標準で付属していたのだ。購入の際には手元のヘッドホンで使えるかどうか、一度確認して欲しい。

 『AK HC2』の音質は素晴らしく、初めて聴いた時には思わず笑ってしまった。左右の音の分離感や、特に48kHz以上のハイレゾ帯の音をしっかり鳴らしてくれる点が優秀だと感じた。小型DACの世界にはあまり詳しくないのだが、他者のレビューを見ていてもコストパフォーマンスに優れた一台であることは間違いなさそうだ。

 ポータブルアンプやUSB DACの世界にさまざまな製品があることは10年ほど前から知ってはいたのだが、ここまで音質が向上するとは思っておらず、素直に驚いた。ヘッドホンとDACのセットを揃えるだけでこの音が手に入るのはうれしい。ロスレス・ハイレゾ音源へのアクセスのしやすさも考えると今は「最新音源をいい音で手元で聴ける」という状況になっており、この感動をぜひ体験して欲しいと思う。

 ちなみに先日Astell&Kernが発表した最新機種『AK HC4』は過去製品のいいとこ取りをした決定版ともいえる内容の製品で「3.5mm/4.4mmのデュアル出力」に対応することから多くのヘッドホンで使えるほか、「UAC2.0/UAC1.0切替」の機能によりNintendo Switchなどで使うこともできる。『AK HC2』よりも高額だが、ぜひお勧めしたい1台だ。

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