アーティストの負担を減らし、創作活動に没頭するためにーーDIYアーティストが選ぶべきパートナーとは?

 アーティスト・クリエイター自身が楽曲を手軽に世の中に発表することができる現代において、個人で著作物の管理・運用までを行うことも増えた。

 それに伴い、アーティストが専属実演契約や、CDをベースにしたライセンス契約や、出版社との著作権譲渡契約の内容に疑問を唱え始めた。アーティストのための負担を減らし、創作活動に没頭できる環境を整える手立てはあるのか。

 今回はそんな疑問を解消すべく、アーティストを取り巻く環境の変化を専門家である弁護士の東條岳氏と著作権管理事業を主に行うNexToneのデジタルディストリビューション&マーケティング部の垣内貴彦氏、長谷部海氏、秋元悠歩氏に話を聞いた。

アーティストを取り巻く環境の大きな変化

――専属実演契約やCDをベースにしたライセンス契約、出版社さんの著作権譲渡契約の内容に疑問を抱くアーティストたちとお話しすることも多いかと思いますが、どんな疑問や問題が存在するのかを教えてください。

東條岳(以下、東條):たしかにアーティストサイドで、契約周りについて疑問をいだく人は増えました。たとえば、アーティストはレコード会社の事前の承諾なく、収録目的の実演をしていけないようになっています。コロナ禍で自宅での弾き語りのYouTubeライブも、アーカイブを残す形になると収録目的実演ということになってしまう。やりたい場合は専属解放料の支払いが必要になりますが、アーティストとしてはいちいちレコード会社に許諾を取らなければならないこと自体がストレスに感じるようです。

 著作権譲渡契約に関しても、出版社取分率に対する疑問を投げかけられることはありますね。音楽業界で流通している一般的な著作権譲渡契約であるFCA・MPAフォームには、著作権譲渡の目的として「利用開発を図るために著作権管理を行う」と規定されています。しかし、アーティスト側からすると、音楽出版社がやっている「利用開発」というのがなかなか見えてこないケースもあります。著作権譲渡契約は関係者への利益分配システムにという側面があるとしても、事前に相談なく、出版社取分2分の1と記載された著作権譲渡契約書が、出版社側の捺印済みの形でアーティストに回ってくることもあり、アーティスト側からはそれに対する疑問を聞くことも珍しくはありません。

――出版社との著作権譲渡においても疑問を持つアーティストが増えてきている傾向があるということですね。音源リリースについても、従来の仕組みとは大きく変わってきていますが、NexToneがArtist Directを立ち上げた背景には何か問題意識などはあったのでしょうか?どのような背景でArtist Directを立ち上げたのか、改めてお聞きできればと思います。

垣内:アーティストの方々を取り巻く環境が大きな変化を遂げていく中で、何か新しいNexToneならではの選択肢を提示できないかなと考え始めたのがきっかけではありました。

垣内貴彦

 NexToneではデジタルディストリビューションの事業を2003年からスタートしているのですが、これは基本的にはレーベルさんに向けたBtoB事業なんです。ただここ数年の間に個人のアーティストの方の活躍がめざましくなってきて、直接のご相談や配信のご依頼をいただくことが増えてきました。そこで、せっかくなので20年培ったスキームとノウハウを改めてサービス化して使って頂こうということで立ち上げに至りました。

https://artist-direct.asia/message/

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