ホロライブの“ひと味違う”新グループ・ReGLOSSの四半期を振り返る(火威青/一条莉々華 編)
ネットフレンドリーなセンスを持ち合わせた女社長・一条莉々華
ReGLOSSから最後に紹介するのは、一条莉々華(いちじょう りりか)である。
赤みがかったオレンジ色の髪を肩まで伸ばし、ピンク色のノースリーブシャツ、厚みのある白いボアジャケット、薄紫色のショート丈ラップスカートをハイウェストで着る。「新進気鋭の女社長」という紹介文通り、“デキる女性”感を漂わせるビジュアルが目を惹くタレントだ。
中学生時代に海外へと渡っていた経験のある帰国子女であり、つい先日おこなわれた同じく英語堪能な赤井はあととのコラボ配信では、過去にオーストラリアやアメリカへ渡っていたことを明らかにしていた。
海外を拠点に活動するホロライブメンバーも彼女の英語力には驚いており、英語での会話がメインとなる配信でも不自由なくコミュニケーションこなせるレベルである。
こうして文字にしてみると、コミュケーション上手な明るい女性という印象を受けるが、本人いわく彼女はインドアな趣味・気質な人間であるようだ。
デビュー前からホロライブを熱心に見ていたようで、大空スバルと出会った際にはその優しさにときめいたり、兎田ぺこらがYouTube登録者数200万人を達成した際に発した言葉に心震わされたと明かすなど、ホロライブ愛あふれるタレントでもある。
デビュー直後の配信では、「みんなとゲームがしたい」「配信がしたくてたまらなかった」とやる気をみなぎらせつつ、博衣こよりとカエラ・コヴァルスキアの名前をあげて「先輩を見習いたい」と話すほど、VTuber活動への熱が高いようだ。
とはいえ、彼女が名前を挙げた2人はホロライブのなかでも屈指の長時間配信者ということもあり、ファンからは「その2人を真似したら体調を壊してしまうのでは」と心配の声があがっていた。
また一条はホロライブの様々なミームに明るいだけでなく、古のネットミームやネットカルチャーにも精通していることが最近の配信で発覚した。
1月23日に企画されたネットミームクイズ大会に、宝鐘マリン、さくらみこ、獅白ぼたんらとともに参加した際には、長いネット歴を持つ先輩3人にも負けず劣らずの勢いで、次々と古のネットミーム問題を答えていったのだ。
ともすれば若いリスナーを置いていってしまいそうな独特な言葉使いやネットミームも意図を理解して笑っていたり、的確な返しを見せていたのが印象的だった。
女性人気の強い『テニスの王子様』が好きで「不二周助と付き合ってました。一緒に写真を取りに行ったり、応援して送り出したりしていた。記念日には毎回ケーキで祝ってた」「(好きなところは?という質問に対し)笑顔で痛めつけてくれそうなところ」と語るなど、かなり“強火なオタク”であったことがわかる。
また彼女自身の嗜好として“ボーイズラブ”好きを公言しており、学生時代には何百・何千冊と購入していたことを公言している。「中学生ぐらいのときから好きでした」「アニメイトにいって新刊のBLマンガを棚の端から端まで選んで買ってた」とも語っている。
少年誌の作品をキッカケにし、夢女子または腐女子へと続いていくルートは珍しくない道筋だが、彼女もまた同じような順路を辿っていったようだ。
別の配信では「もともとVIPPERだし、いろんなBBSとかで強く生きてきた」と話すこともあった。なるほど彼女が“インドアなオタク”を自称するのも理解できる。
明るいキャラクターでネットカルチャーのディープな話題やフィーリングにもついていける高いコミュニケーション力を持った彼女だが、他方でその食生活が話題を呼んだこともあった。
話題になったのは一条がふだん食べているという超簡単なお手軽料理、通称“限界飯”を称した料理のことで、レンジでチンする、焼くだけ、トッピングをかけるだけといったレベルの調理工程で作られる代物だ。
独り暮らしをしていると、たしかこのような食事をつくることはある。しかし、VTuberやバーチャルタレントシーンでも飛び抜けて期待を向けられている大型事務所の新人が「苦学生のような節約料理」を作って食べているとは、誰もが思わなかっただろう。
その衝撃はかなり大きかったようで、バーチャルタレントの専門メディアのみならず、いくつかのネットニュースメディアでも取り上げられ、Yahooニュースにまで至ったほど。
まったく関係のない配信で「ニュースで知りました。スパチャをします」というリスナー(支援者?)が現れたり、このニュースで娘のことを知った実母から心配の連絡が届くなど、さまざまな波及をみせることとなった。
ひとつ断りをいれておくと、こういった味は美味しく、それでいて低価格におさえようとする料理レシピは数多く存在するし、筆者もこういった食事を作って食べたことがある。彼女自身、一種の面白ネタとして配信で取り上げたのだろうと思われる。
それはそれとして彼女は身体が資本となる配信者。「しっかりとした食事を取ってほしい」とファンならずとも思ってしまうところだ。
さきに取り上げた火威のエピソードでも触れたが、彼女もまた『VCR GTA2』に参加し、ワイワイと賑やかなピザ屋のメンバーとして同企画を楽しんだ。
VTuberやストリーマーらを中心に様々なメンバーが参加する『VCR』企画において、一条が所属するホロライブから参加するタレントはそれまで多くはなかった。
だが、『VCR GTA2』には彼女含めて複数人のタレントが参加し、同じ企業に所属するホロスターズのメンバーも参加するなど、ホロライブ/ホロスターズを中心に見ているファンからすれば非常に新鮮な光景として受け取られたはずだ。
筆者から見ていて、以前までのホロライブでは、新人がデビューした直後は同期同士と、徐々に先輩後輩らと交流を深めていく流れのようなものがあった。しかし、その一方でホロライブの外へと広がっていくチャンスが少なかったように思える。
そんななか、デビューしてすぐに一条・火威はホロライブの外側へと飛び出し、さまざまな繋がりを結び、その経験を糧に成長している。その様子をみていると、彼女ら2人はしっかりと自身の魅力を見定め、“配信をする”ことへの理解がそもそも長けていることも分かってくる。
前回・今回と合わせてReGLOSSの5人を記していったが、目に見えてわかるのは5人の仲の良さである。5人全員が揃う機会は限られているが、2人・3人でも集まってしまえば、茶目っ気あるメンバーが多いこともあって活気ある場面となることが多い。
「距離感が測れない」「どうやって声をかけようか難しい」という人見知りなタイプがおらず、全員が場のまとめ役となってトークを回してしまいそうなほどコミュニケーション力に長けた人物が多いのも、彼女らの強みだろう。
実際、デビューしてからすぐにReGLOSS公式YouTubeチャンネルでラジオ番組『ReGLOSS ROOM』をスタートしており、ひと月で2人ずつメンバーがMC役としてトークを繰り広げるなどしている。
気さくに話しかけたりかけられたりと、5人の仲は非常に良好なようで、お互いの家に遊びにいくこともままあるようだ。こうした温度感・連帯感は、“仲良し5人組グループ”と評しても頷けるだろう。
今後、彼女のフレンドリーな関係性がどのような形で表現され、リスナーを楽しませるのか、ReGLOSSらしい「成長」や「挑戦」を続ける姿に注目していきたいところだ。
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