著作権切れのミッキーマウスと戦うホラーゲームが話題 なぜ人気キャラは“敵役”にされがち?
誰もが知る人気キャラクターが敵役としてキャスティングされる理由
紹介した初代ミッキーマウス、プーさんの二次利用には、ほかの共通項も存在する。両作とも誰もが知る人気キャラクターを敵役として作中に登場させている点だ。この点は、主人公に対し脅威を与える側として物語に登場する映画『プー あくまのくまさん』のプーにも共通する。なぜパブリックドメインとなった人気キャラクターは敵役としてキャスティングされやすいのだろうか。その理由は、これまで当該キャラクターが活躍してきたフィールドとのギャップにあると考える。
初代ミッキーマウスやプーさんはその愛くるしい姿などから、子ども向けのアニメキャラクターとして広く認知されてきた。どちらかと言えば、その佇まいは平和の象徴であり、だからこそ「子どもにも安心して見せられる存在」として大衆化した実態がある。
そうしたキャラクターが浸透したイメージに縛られず利用できるようになったいま、より彼らが存在し得ない世界、しそうにない行動といった点が作品制作のコンセプトとなっているのではないか。そこに大きなギャップがあるからこそ、受け手にとっては新鮮かつセンセーショナルで、そのことが売上や話題性につながっている側面がある。上述した『Lies of P』の例もまた、(少なくとも有名なディズニー映画のなかでは、平和的なキャラクターとして描かれている)ピノッキオが存在しないであろうダークで暴力的な世界を舞台としている点で同じコンセプトを持っていると言える。
今後も定期的に、初代ミッキーマウスやプーさん、ピノッキオは他のカルチャーで二次利用されていくだろう。10年、20年という長いスパンではひとつのカルチャートレンドとして、往年の名作をモチーフとした作品群が語られていく可能性もある。きっとそれらの作品が分類されるジャンルは、ホラーなど、彼らが持つイメージとは真逆のものとなるはずだ。
しかしながら、“色物”であることを最大の特長としているうちは、名作は生まれないような気がしている。『Infestation: Origins』がひとつのゲーム作品として認められていくためには、『Lies of P』のようにそれ以外の部分で目の肥えたユーザーに訴求できるタイトルとなる必要があるのではないか。『Infestation: Origins』が話題性に勝る成功を収められるかに注目したい。
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