ベテラン・若手ラッパーの垣根を越えたバトル『フリースタイル日本統一』 見どころを整理
手札の増加=勝利パターンの増加 ベテランラッパーを“温存”される恐ろしさとは?
具体的に、ふたつの視点で記していこう。まずは、チーム全体の視点で考えれば、他チームから引き抜いてきたラッパーにバトルを任せ、バトル経験豊富な自軍の重鎮を決勝戦近くまで“温存”するのか。あるいは、ベテラン自ら先陣を切り、相手チームの同格的な存在を早々に倒すのか。このタイミングを見極めるのが、各チームとも重要になりそうだ。
実際に、1回戦(壱万石の戦い)は3名編成でのバトルとなるため、戦況がどうもつれ込んでも最大5ラウンドまでとなる。2回戦(十万石の戦い)に進んだ全8チームのうち、3ラウンドで終えた(1名で“ストレート勝ち”した)のは、TEAM東北、TEAM埼玉、TEAM九州の3チーム。4ラウンドにて終了が3チームで、最終ラウンドまで続いたのは2チームのみ。少なくとも6チームは、自軍の重鎮をまだ引き出されていない状況だ。ざっと見ただけでも、呂布カルマ(TEAM東海)やDOTAMA(TEAM北関東)など、錚々たる面々である。
相手チームからしてみれば、ベテラン勢の温存が続けば続くほど、会場の期待感も膨らみ、初陣のステージに足を踏み入れた際のフレッシュさ、もとい“満を持して感”も大きく跳ね上がってしまう。バトルの空気を掌握されたら、そこでもう終わりだ。また当たり前だが、強者が強者を倒すほど、“助っ人”として吸収されるラッパーも強くなる。現に、FORKはTEAM埼玉との対戦前、旧知の仲である輪入道をTEAM千葉から引き抜けたことに「とんでもなくいい保険に入った」と安堵を滲ませていたくらいだ。
楓、裂固の後を継げるか? 若手ラッパーの“勢い”に注目
もうひとつ、若手ラッパーの視点から見ても、この番組でのバトルはなににも代え難い経験となる。思い出されるのは、泰斗 a.k.a.裂固(TEAM東海/当時の名義は裂固)がかつて、『フリースタイルダンジョン』に“ブラックモンスター”として襲来したNovel Core、じょう、ミステリオ、BASEを、軒並み“料理”した4人抜きの歴史。今回でいえば、同じくTEAM東海の楓が、そのポジションにあたるだろうか。
トーナメントを勝ち上がっていくほど、対戦相手も強者揃いとなるし、単純に人数も多くなる。そんな魔窟に、“いちばん若いから”という理由で自ら飛び込み、まるでRPGのように短期間でレベルアップを狙えるだろうか。このあたりも『フリースタイル日本統一』ならではの新しい面白さと捉えられそうだ。
最後に、現状のオンエアタイミングを踏まえて語るならば、本項冒頭に記したFORKの対戦相手が、先日の『UMB 2023』で惜しくも準優勝となったK-rush(TEAM埼玉)であるというのも大きな見どころ。
同大会ではNAIKA MCと楓も、ともにベスト8に。TEAM埼玉が勝利し、すでに3回戦進出を決めているTEAM北関東と対戦する場合、K-rush v.s. NAIKA MCという『UMB 2023』準決勝と同一カードが観られるほか、TEAM北関東とTEAM東海が決勝で当たると、今度はNAIKA MC v.s. 楓による準々決勝の模様が再現されることとなる(が、番組収録は『UMB 2023』開催前のため、正確には“再現”とは記しておきたいが……)。
即興で生み出されるフロウ、ライムにパンチライン。若手やベテランという各々のポジションと、『UMB 2023』などの関連大会の結果。本稿で記した、チームメンバーが増えることでの“勝利パターン”の複雑化など、あらゆる角度から楽しみ方を見つけられる『フリースタイル日本統一』。FORK v.s. K-rushの一戦は新年早々、同番組によってさらなる盛り上がりを見せる、ラップバトルシーンの景気の良さを象徴する名バトルとなるはずだ。
『フリースタイル日本統一』#12ーー事実上の決勝戦は“かわいい担当”が鍵を握る?
2023年10月より放送中の『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日/ABEMA)。同番組では、全国16地区で活躍するラッパーが3…