『Weekly Virtual News』(2023年1月9日号)
CES2024、刀ピー、バーチャルファッション おだやかながらも盛り上がる年末年始のバーチャル業界
今年も「刀ピークリスマス」が駆け抜ける Brave groupは海外展開へさらなる一手
バーチャルタレント業界はさらにおだやかな印象だ。大きなトピックで言えば、『にじさんじ』の星川サラが、同グループ5人目の100万登録達成者となった。次にこのラインを見据えているのは、約96万登録の剣持刀也、約90万登録の不破湊あたりだ。一方、『にじさんじEN』1期生のPomu Rainpuffが1月20日付で活動終了を告知し、ファンの間には大きな動揺が見られる。
12月25日には、毎年恒例行事「刀ピークリスマス」が実施され、「刀ピークリスマスのテーマソング2023」がピーナッツくんの手により世に放たれた。「ROF-MAO」の始動により飛躍する剣持刀也への情念を、ねっとりとドープに伝えた2022年と異なり、今年はより鋭く、直接的に愛を伝えてきた印象だ。TikTokでのバズにより、シーンの外へと異様な広まりを見せた「刀ピークリスマス」だが、「興味ないよバズ 欲しいラブ 刀也専用でござる」というリリックから、この曲が「たった一人へ捧ぐ歌」という思いがあらためて伝わる。あくまでもエンタメとしての茶番といえばそれまでだが。
業界動向としては、急拡大を続けるBrave groupが、アメリカのVTuberグループ「idol」運営のIDOL VIRTUAL TALENTSとの業務提携契約を締結した。海外発事務所のなかでは急成長を見せている企業であり、2023年から国外展開にも踏み出したBrave groupが提携を持ちかけたのも不思議でない選出だ。国内外ともに前代未聞の拡大を続けるBrave groupがどこを目指しているのかは、手前味噌だが先日公開されたインタビューをぜひご参照いただきたい。
海外と日本で異なる“VTuber文化”に対応し、世界で成功するために Brave group代表取締役・野口圭登に聞く「これまでとこれから」
2023年、空前絶後の規模で拡大を続けたBrave groupは、どこへ向かおうとしているのか。成長を続ける同社のこれまでと、2…
バーチャルファッション、有料イベント開催――ソーシャルVRの世界で新たな一歩
ソーシャルVR/メタバース方面では、「新たな一歩」と言える動きがチラホラ見受けられた。
まず、無料で使える3Dキャラクター制作ソフト『VRoid Studio』に、「フルスクラッチの3Dアバターへ3D衣装を着用できる機能」が実装されることが告知された。『VRChat』などでの使用が想定される3Dアバターに、同じくアバター向けに作られた衣服の3Dモデルを、簡単に着付けることができる機能だ。
これまで、こうしたアバターへの衣装着用は『Unity』や『blender』といった、ハードルの高いツールの運用が求められた。特に、3D衣装は特定のアバター向けに構造を最適化されていることがほとんどであり、対象外のアバターへ着せる場合は、かなり複雑な作業が要求される。
これが、『VRoid Studio』上で簡潔な操作でできるようにするかもしれない。現在提供中のベータ版を筆者も触ってみたが、まだ完璧ではないものの、自動フィッティングなどの機能はとても便利だと感じた。機能向上が進めば、アバターの着せ替えがより簡単な営みになり、めぐりめぐって新たな参入者の増加も見込まれるだろう。
そして、アバターの着せ替えにより実現する「バーチャルファッション」の世界は、さらなる熱気を帯びている。12月23日に開催されたファッションショー『Virtual Fashion Collection “Voyage” 2023 Winter.』は、まさにその最前線だ。
ソーシャルVRの世界で芽生えた気鋭のクリエイターだけでなく、現実のセレクトショップ・BEAMSまで、それぞれが渾身の新作バーチャルアイテムを出展し、アクターによってランウェイの上を歩いた。いまや、BEAMSの担当者も「ファッションのフロンティア」と賞賛するバーチャルファッションの世界を、華やかに伝えるイベントの様子は、現在もアーカイブが公開されているのでぜひチェックしてほしい。
ファッションのフロンティアは“バーチャル”で花開く――『Virtual Fashion Collection “Voyage” 2023 Winter.』レポート
『VRChat』などのソーシャルVR/メタバースを中心に、「バーチャルファッション」というカルチャーが隆盛を見せている。リアルの…
神奈川県横須賀市のメタバースプロジェクト「メタバースヨコスカ」は、年の瀬に第2弾ワールド「SARUSHIMA WORLD」を公開した。第1弾ではドブ板通り商店街と三笠公園をモチーフにしたワールドを制作したが、今回は自然島・猿島が舞台だ。
『仮面ライダー』の舞台にもなった、豊かな自然と旧日本軍の遺構が混ざり合うロケーションで楽しめるのは、この地に伝わる猿伝説にちなんだシューターゲームだ。光弾を放つ猿を銃代わりに持ち、最大5vs5の戦いを楽しめる。遊び心あふれた空間だ。
また、今回は大丸松坂屋百貨店ともコラボし、同社が発売中の5体のアバター向けに、「メタバースヨコスカ」発の3Dスカジャンが新たに着用可能となった。聞けば、もともと大丸松坂屋百貨店のアバターチームと「メタバースヨコスカ」チームは過去の案件でつながりがあり、アバター発売時に「メタバースヨコスカ」側へ連絡があったことをきっかけに、相当な速さでこの企画が立ち上がったとのことだ。担当者間同士のつながりに端を発する迅速な展開は、この業界ではよくある話だ。
【Gugenka公式ワールド”Project_Babell”公開!!】
"Project_Babell"は、一般ユーザーの方でもGugenkaのチケットシステムを利用した有料イベントを開催することができる #VRChat 上のワールドです🙌
サイバーパンクをテーマとした内装で、様々なイベントを開催予定!!
第1弾コラボは『サキュバス酒場… pic.twitter.com/xMtXZ0DCaG
— Gugenka公式 (@Gugenka_info) December 27, 2023
そして、国内の『VRChat』事業の先駆者のひとつ・Gugenkaでは、一般ユーザーへ向けて有料イベントの門戸を開いた。「Project Babel」と題されたプロジェクトにて、Gugenkaは国内の『VRChat』パートナーとして、一般ユーザー向けに有料イベントの会場とチケットシステムの提供をスタートさせたのだ。
もともと、『VRChat』の商用利用は公式パートナー契約が必要だが、一個人ではなかなか厳しいものがある。Gugenkaはまさに代理店のような立場で、商用利用のハードルを大きく下げてきた形だ。隣接する『cluster』のように、「イベントを通して収益を上げる」という道が、『VRChat』でも生まれるかもしれない。有償サブスクリプション機能と合わせて、世界最大規模のソーシャルVRに、着実に経済圏が開拓されている。