トレンド化するリメイク/リマスター作品、成功の必要条件は? 『SO2R』の高評価から考える
成功するリメイク/リマスター作品に求められる条件は
このように逆風が小さくなく、失敗とされる例も少なくないリメイク/リマスターのトレンド。そのなかにあって、『SO2R』は揺るぎない評価を手に入れつつある。著名なレビューサイト・Metacriticでは、高得点に分類される86点のメタスコアを獲得。PC向けのゲーム販売プラットフォーム・Steamでは2023年11月9日現在、97%のユーザーが「おすすめ」と評価し、最上位のランクである「圧倒的に好評」へと分類されている。
前者におけるスコアは、近年のRPGジャンルでのリメイクでは成功作品とされている『ゼルダの伝説 夢をみる島』『FINAL FANTASY VII REMAKE』の数字に匹敵するもの。後者におけるランクは、『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』のそれを凌駕する。『SO2R』はここ数年でも最高レベルと言えるスタートを見せているのだ。
なぜ同タイトルは、これほどの評価を獲得できたのか。その答えは、丁寧に制作に取り組んだことがうかがえる手触りにあると考える。
先に述べたとおり、『SO2R』にはさまざまな変更点が盛り込まれている。紹介したグラフィックやシステム、UIのほか、キャラクターイラストやボイス、楽曲など、その例は枚挙にいとまがない。個々のポイントを掘り下げれば、人によって賛否が分かれるものもあるだろう。しかしながら、ほとんどの変更点には、制作側の意図が明確に感じられたように思う。もし施された変更に意図が見えなかったとしたら、(制作側にとってはそうでなかったとしても)ユーザーには手抜きのように映ってしまうだろう。その意味において、『SO2R』に盛り込まれた変更には“温度”があった。
そもそもリメイク/リマスターは、好評・不評が紙一重の領域だ。メインターゲットであろう原作を知るプレイヤーたちは「懐かしさ」を求め、初めて手に取るプレイヤーは「現代的な面白さ」を求める。かつて評価され、名作に数えられる作品であったとしても、そこから得られる体験が現代に通用するかは、まったくもって不透明だ。だからこそ、少なくないリメイク/リマスターが、オリジナル版の魅力となっていた体験に影響するほどの新たな要素を盛り込み、その部分の不出来や雑さによって評価を落としてしまう。つまるところ、成功する復刻作品の条件は、「オリジナル版が支持される理由を制作側が正確に捉えていること」「必要、かつオリジナル版の魅力に影響し過ぎない範囲で、“現代っぽさ”を盛り込めること」「ユーザーの目線に立ち、丁寧に復刻に臨めること」の3点にあるのではないか。
発売前は、2Dと3Dを融合した斬新なグラフィックに賛否が分かれていた『SO2R』。そこからの“ある意味での逆転劇”は、誰も予想し得なかったのではないだろうか。今後は、現在獲得している評価から、さらに新たな層へとリーチしていくことが考えられる。リメイク/リマスター史に新たな成功例が誕生した。
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