トレンド化するリメイク/リマスター作品、成功の必要条件は? 『SO2R』の高評価から考える

トレンド化するリメイク/リマスター作品、成功の必要条件は?

 11月2日、『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』(以下、『SO2R』)が発売となった。

 PlayStation時代の名作RPGとして、いまなおファンの多い『STAR OCEAN THE SECOND STORY』(以下、『SO2』)。15年ぶり、2度目のリメイクとしてリリースに至った『SO2R』には、多くのユーザーから称賛の声が上がっている。

 なぜ同タイトルは、これほどの評価を獲得できたのか。その理由を入り口に、リメイク/リマスターの成功条件を考える。

「愛と勇気のRPG、再び。」RPGの金字塔を15年ぶりに再リメイクした『SO2R』

『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』アナウンストレーラー

 『SO2R』は、1998年にPlayStationで発売された「STAR OCEAN」シリーズの第2作『SO2』を現代によみがえらせたリメイクタイトルだ。プレイヤーは未開惑星エクスペルを舞台に、魔物が増加した原因とされる隕石「ソーサリーグローブ」の謎へと迫っていく。

 物語は、王道のスペースオペラと呼べるもの。魅力的なキャラクターたちの存在や、アクション性の高いバトル、多彩なフィールドスキルといった要素が、オリジナル版の発売当時から支持を集めた。クロードとレナの2人のキャラクターから主人公を選べる「ダブルヒーローシステム」も特徴。それぞれの視点で物語が展開されていくため、一方でしか見られないシーン/演出も少なからず存在している。また、10人以上登場する仲間キャラクターのなかには、“二者択一式”となっている組み合わせもある。仲間の選択、さらにはパーティーの編成にプレイヤーのオリジナリティを出せる点も、『SO2』の魅力のひとつだ。

 『SO2』がリメイクされるのは、今回で2度目。最初のリメイク作品である『STAR OCEAN2 Second Evolution』は、2008年にPlayStation Portableでリリースされた。『SO2R』では、好評だったオリジナル版のゲームデザインを維持しつつ、グラフィックを一新。UIを改良し、バトルシステムやフィールドシステムなどに変更や新たな要素を盛り込んだ。

 対応プラットフォームは、PlayStation 5、PlayStation 4、Nintendo Switch、PC(Steam)。価格は、6,578円(税込)となっている。オリジナル版の登場から25年、1度目のリメイクから15年を経て、シリーズの出世作が現代に生まれ変わった。

リメイク/リマスター作品のリリースがトレンド化。広がる是非をめぐる議論

『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』 公式サイト用映像_バトル

 昨今のゲーム市場では、往年の人気作や、知る人ぞ知る隠れた名作をリメイク/リマスターし、復刻する事例が相次いでいる。この傾向は特にRPGジャンルにおいて顕著で、ここ数年でも『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』『LIVE A LIVE』『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』などがリメイク作品として、『Xenoblade Definitive Edition』『真・女神転生Ⅲ NOCTURNE HD REMASTER』『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』などがリマスター作品として発表・リリースされ、話題を呼んだ。今後は『スーパーマリオRPG』や『ペルソナ3 Reload』、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』といったタイトルの発売も控えている。リメイク/リマスターは、ゲームカルチャーを代表する一大トレンドとなりつつある現状だ。

 こうした業界動向は、一部のフリークに好意的に受け入れられている一方で、なかには乱発に食傷する声も出始めている。制作側にしてみれば、1から新作を生み出すよりコストを削減できることにくわえ、支持層が顕在化されているため、販売数を見込みやすく、結果として利益が計算しやすいという事情もあるのだろう。いちプレイヤーとしては、食指の動くリメイク/リマスターが発売されることは喜ばしい反面、再生産主義への極端な傾倒が文化を先細りさせかねない点は、憂慮すべき問題であると認識している。

 また、復刻にあたってテコ入れされた部分と、支持層の求める変化のあいだにギャップがあり、評価される作品となっていないケースも散見される。リメイク/リマスターには、「時間経過のなかで風化しつつある、後世に残すべき作品」を次代につなぐ役割もあるはず。その意味において、評価がともなわない復刻は、制作側、ユーザー、作品の三方にとって、不本意なものであると言わざるを得ない。

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