4WAYのフォルダブルPCに「最強の便利屋」まで……HPの新たな“攻めのPC”たちをレビュー
ここからは製品発表会とは別で行われたKoh氏のインタビューを引用しながら、2製品のねらいやHP社のスタンスについて書いていこうと思う。
まず、今回シドニーで発表イベントを行った経緯については、新型コロナウイルスのパンデミックによって、プロダクトに直に触れてもらう機会が減り、大々的なマーケティングができなくなってしまっていた数年間を経て、あらためてAPAC(アジア太平洋圏)向けのイベントを打つ必要があると考えたからだそう。
1987年から米テキサス州オースティンで開催されている『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』がシドニーで初開催ということもあり、世界からクリエイターが集まるSXSWシドニーでの発表を決めたということだ。
世界の動きをみていくと、パンデミック前のPC市場はグローバルで年間2億5,000万台くらいの売り上げで、最も売れた年は3億5,000万台とのこと。この特需を経て、Koh氏は「仕事、生活、娯楽にとってPCがいかに重要かを理解した」と話してくれた。そして現在は「2年前のピークから、ある程度落ち着いた状況にある」という。
とはいえパンデミック以前よりは需要が高まっており、PC市場は拡大しているが、日本市場はどうだろうか。Koh氏は「日本はゲーミングPC市場が拡大している」ことに注目しており、ほかにはデータの増加やAIの普及などで大型PCの需要が高まっていることも気になっているようだ。
ここ数年の変化としても大きい「クラウドコンピューティングの普及」について、Koh氏は「クラウドコンピューティングは今後も活躍するテクノロジーだが、ローカルな環境でPCに内蔵するAIが処理する場合、クラウドコンピューティングの5倍相当の速度があるため、共存していくことになるだろう」との見立てを提示してくれた。
Intel社はAIを搭載したチップセットの開発を進めているとアナウンスしているが、それについては「CPUの反応速度を向上させたり、ニューラルプロセスを活用したり、そうしたことを実行できるAIが入ったチップセットの需要は高まっていくし、そうなるにつれて価格も抑えられる可能性があるが、それが具体的にいつかは話せない」と含みを持たせた。
また、日本円で798,600円(税込)からとなる『HP Spectre Foldable 17』の価格について、Koh氏は「フォルダブルのため、両サイドのバッテリー重量を均一にしたり、タブレットとしても使えるように一般的な配置から利便性を重視して変更したベゼルの両脇配置など、他の会社が持っていないHP独自の技術・アイデアを使った製品のため、価格は適正だと思っている」と語った。たしかに2WAYデバイスならまだしも、先述した4WAYデバイスでハイスペックかつ前例がないとなると、これくらいの価格帯になるのは必然なのかもしれない。
先述した「パーソナルコンパニオン」は、10月上旬にアメリカで開催された『HP Imagine 2023』でも提唱されていたことから、同社が重きを置いている価値観であることが伝わってきた。そして今回発表された2製品などを通じて感じたのは、同社が“ただ性能のいいモノ”ではなく“生活を豊かにする良いモノ”を作ろうとしていることだ。次回の記事では、それをより強く感じた『SXSW Sydney 2023』のカンファレンスなどでキーパーソンたちが話したことについて触れていきたい。
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