ガイドライン違反のYouTube投稿者に有罪判決 狭まる“グレーゾーン”と、問われるユーザーの規範意識

YouTube投稿者への有罪判決で問われる規範意識

「禁止されていない=認められている」という判断に感じる規範意識の低さ

『STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん』オープニングムービー

 YouTubeなどの動画投稿サイトにおいては、コンテンツを利用するにあたり、原則的に権利者の許諾を得る必要がある。昨今のゲーム業界では、新作がリリースされるタイミングで、メーカーが配信ガイドラインをアナウンスするケースも増えてきた。人気作品に関しては、過去にさかのぼってルールが明示される例も少なからず存在する。

 問題となった『STEINS;GATE』を含む、「科学アドベンチャーシリーズ」の各作品では、そこに描かれるストーリーがコンテンツの中心的魅力であることから、ルールを明確化し、違反者には厳正に対処してきた経緯がある。本題の方向性とは異なるが、最新作『ANONYMOUS;CODE』の二次利用をめぐっては、権利者と配信者のあいだで齟齬があり、誤って実況動画を削除してしまった出来事も、界隈では話題となった。

Nintendo Switch™/PlayStation®4『ANONYMOUS;CODE(アノニマス・コード)』ローンチトレーラー

 一方で、今回の事案が逮捕から起訴、そして有罪判決に至ったのは、被告が当該動画から広告収入を得ていたことも影響しただろう。事態が動いた裏に、“悪質”と判断された本件の特性があったのは、火を見るよりも明らかだ。ウェブ上には、権利者が泣き寝入りしているようなケースも多くあるため、このように表面化するのは、氷山の一角とも言える。

 たとえば、ゲームの分野では、収益化されていない類似の案件や、無許可での公式動画の切り抜きなどが存在する。他の分野まで広げれば、ファスト映画やテレビ番組の切り抜き、画像の転用など、その例は枚挙にいとまがない。SNS上では、それらの持つ背景に無頓着に、著作権を侵害しているコンテンツを共有・拡散する人さえいる。インターネットカルチャーの発達に反比例して、規範意識が低下、もしくは醸成されてこなかったことが、そもそもの問題となっている現状がある。

 ゲームの実況・配信文化の歴史を振り返ると、プラットフォームの草創期からルールが明確化されていなかった期間が長く、“グレーゾーン”が拡大解釈される向きもあった。「ガイドラインとして、また、権利者の対応として“ノー”を示されなければ、活用しても問題がない」という認識で文化が形成されてきた背景もある。

 しかしながら今後は、本件の動向が呼び水となり、逮捕から有罪判決へとつながる事例が増えていく可能性もある。社会が直面する現代的な問題とも言える著作権の侵害だが、クリエイターに対するリスペクトや、受け手側に自身の行動を省みる姿勢があれば、本来は存在するはずのない犯罪である。今回の事案が、ユーザーのモラルの成熟につながってほしいと願うばかりだ。

画像=Unsplashより

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