「『異議あり!』の使い方が違う」 芸人・こたけ正義感が『逆転裁判』に弁護士による容赦ないツッコミで応戦

 弁護士芸人・こたけ正義感が自身のYouTubeチャンネル「こたけ正義感のギルティーチャンネル」でスタートしたゲーム実況が本当に面白い。扱うタイトルは、法廷を舞台にしたアドベンチャーゲーム『逆転裁判』。スポーツ選手がスポーツゲームをする、格闘家が格闘ゲームをする、本職の人間がそれをテーマとしたゲームをプレイする様子は面白さが保証されている傾向にある。“弁護士が裁判ゲームをする”、面白くないわけがない。

 第1回目の配信からフルスロットル。『逆転裁判~蘇る逆転~』の第1話「はじめての逆転」がスタートするやいなや、いきなり「被告人控室なんてない」と、すべての逆転裁判ファンに衝撃の事実を告げる。動揺が収まらないなか、続けざまに裁判官の「依頼人が有罪になるかどうかは弁護士にかかっています」という主張に対しても「なんてこと言うねん、違うやろ! すごいこと言うなこの裁判官! いやいや、有罪立証を検察官がするんでしょ? なんでこっちのせいにされようとしてんねん?!︎」と弁護士芸人にしかできない、あまりにも容赦がないツッコミを逆転裁判の世界に叩きつける。

 その後も「もう証拠処理始まってる、こっちの意見も聞かずに受理してる! なんやこの裁判?」「日本の裁判所にカッ!(木槌)ないですよ」「傍聴人の席、『さんま御殿』みたいになってない?」「異議ありの使い方が違う」と、お笑い芸人の抜群のワードセンスと弁護士の専門性を駆使して、『逆転裁判』というゲームそのものに怒涛のオーバーキル。その上で、弁護士として「どう弁護すれば検察側に勝つことができるか」を最優先に考え、物事の矛盾を追求し、最短のスピードでゲームをクリアする。

 しかも、ただ意地悪くケチをつけるのではなく、一人のプレイヤーとして心からゲームを楽しみながらツッコミを入れるので、まったく嫌な気分にならない。それどころか、ときには主人公・成歩堂龍一本人として、また時には『こたけ正義感』という先輩弁護士として目まぐるしく視点を変化させながら発せられるコメントが、圧倒的な爽快感を生み出している。リアルとファンタジーが交差するこの不思議な感覚は、ほかのゲーム実況動画では味わえない唯一無二の中毒性がある。そして、ただ面白いだけでなく「知識になる」というのも大きな魅力で、普段なかなか実感することができない憲法の大切さや裁判のリアルをゲームを楽しみながら共有することができるのだ。

弁護士芸人が名作ゲーム『逆転裁判〜蘇る逆転〜』を実況プレイ#4

 個人的な一番の見どころは#4で、「序審法廷制度」という逆転裁判シリーズにおける架空の裁判制度を目の当たりにし、こたけ正義感が絶望してしまう場面だ。序審法廷制度とは、増加を続けている凶悪事件に迅速に対応するため、最長3日の審理(たいていは1日)で有罪か無罪を判断するというものなのだが、この実際では絶対にあり得ない制度に対し、

「そんな法律つくったらアカンて! おいおいおいおい……それ憲法どうなってんの!? 違憲やろこんなん!? そんな被告人の人権がこんな蔑ろにされる法律誰がつくったん!? ヤバいヤバいヤバいヤバい。これが一番ヤバい、いままで見てきて……おいおい政治家? 国民はどうした? これ意見訴訟せんかったんか誰も? これできたとして仮にな? こういうのができへんために日本国憲法があるんちゃうんか? おいおいおいおい…日本国憲法なくなってる可能性あるわこれもう……すごい世界やったんやな……地獄みたいな法律になったんや……もう……日本国憲法も恐らくないわこれは……こんな法律できるわけないもん今の憲法があれば……うわぁ……今まで突っ込んできたのが全部分かってきたわこれで……なんかおかしいと思ってたもんな……明日裁判です~とか……なんか裁判の進行もおかしかったし……もう圧倒的に早く処理したいんや……(略)そういうことなんや……じゃあわけ分からん法律使われてたってことやろ!? 日本国憲法無視して! なんやねんこの国!? でも全部辻褄が合ってきたってことやなこれで? わけ分からん世界やったっていうことやろ……ホンマ世紀末やで……世紀末や……もう北斗の拳の世界ちゃうかこれ……? どういうこと……?」

と、2分以上にもわたって激昂するこたけ正義感。こたけ正義感が逆転裁判のことをなにも知らずにプレイしてきたからこそ、この衝撃のシーンが生まれたのだが、もはやただのゲーム実況ではなく異世界に迷い込んだ一人の弁護士の冒険活劇を見ているようだった。

 2023年8月23日、シリーズ一作目にあたる『逆転裁判~蘇る逆転~』(『逆転裁判(無印)』の移植として制作された)の実況が幕を閉じた。こたけ正義感が『逆転裁判2』『逆転裁判3』と続く、残りの逆転裁判シリーズをクリアしたときにどう思うのか、この物語の結末が楽しみでならない。

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