ゲーム業界で過去の人気シリーズ“セットパッケージ販売”増加の理由は? 直近の復刻ラッシュから考える
なぜ人気シリーズ・過去作品のセットパッケージ化が増えているのか
ゲーム市場では昨今、シリーズの往時の作品から複数をセットパッケージとして販売するケースが増えてきている。直近に限っても、4月に『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』が、6月に『世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER』が発売されたことにくわえ、9月には『バテン・カイトス I & II HD Remaster』と『ピクミン1+2』(ダウンロード版は6月に配信済み)が、2023年内には『幻想水滸伝 1&2 HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争』が、2024年初頭には『逆転裁判456 王泥喜セレクション』が発売される予定となっている。また少し角度は違うが、話題性という意味では『ダンガンロンパ トリロジーパック + ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿』や、『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』なども関心を集めた。
なぜ近年になり、こうしたセット販売が増えているのだろうか。その理由のひとつには、ユーザー側のニーズとメーカー側の思惑が合致していることが挙げられる。
セット販売の増加とは別に、近年のゲーム市場では、リメイクやリマスターもトレンド化の兆しを見せている。こうした販売手法はメーカーにとって、いわば“コンテンツの再生産”。少なくとも新規タイトルを1から制作することにくらべれば、時間的にも金銭的にも低コストで、一定の商業的成果が約束されたタイトルを生み出すことができるというわけだ。
一方、ユーザーにとっては、自身のゲーム人生を彩った作品を現行機で遊べるという大きなメリットがある。本来ならば、刻一刻と風化しつつある実機(場合によっては、ファミリーコンピュータやスーパーファミコンといった30年以上も前のハード)で遊ばなければならなかった作品なのだから、得られる実益は決して小さくない。
また、ゲームカルチャーの歴史を振り返ると、個々のシリーズのなかで良作とされるタイトルは、連続して発表されるケースが多い傾向もある。たとえば、「ドラゴンクエスト」であれば、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』、「FINAL FANTASY」であれば、『FINAL FANTASY IV』『FINAL FANTASY V』『FINAL FANTASY VI』は、各シリーズのなかでも特に名作として扱われやすいナンバリングだ。おそらくここには、スタッフの継続性や、それにともなう感性の類似、システムの共通性などが関与しているのだろう。ユーザー体験に目を向けると、(ある程度完成されたシステムを持った)前作での反省を踏まえ、次作でより隙のない作品となる事例も珍しくない。
先に述べたリメイク・リマスターにおけるメーカーとユーザーのメリットと、各シリーズにおける良作ナンバリングの連続性。この2つが複合的に作用した結果が、セット販売の増加につながっているのではないだろうか。単作のみを復刻するよりも、評価を獲得している作品をまとめて復刻するほうがプロジェクトとして取り組みやすいという制作側の社内的な事情も、もしかすると影響しているのかもしれない。
そして、こうした潮流は今後も止まらないだろう。ゲームカルチャーには、ハードやプレイヤーの世代交代によってプレイしづらい、もしくは触れられにくい“古典”が山ほどある。それぞれのメリットが合致しているリメイク・リマスターのトレンドは、この先もしばらく続いていくはずだ。セット販売の増加はその延長上にあるため、再生産主義にユーザーが食傷し売上がともなわなくなったり、ほとんどの人気作が掘り起こし尽くされたりするまでは、継続していくのだろう。
あなたが次に望むのは、どのシリーズ作品のセットパッケージ化だろうか。私は、「MOTHER」シリーズ・1~3作の復刻に期待したい。
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