メタルギアの原点『MGS3』はなぜ今リメイクされるのか 「Δ」が示唆する文化的遺伝子の伝承

『MGS3』はなぜ今リメイクされるのか

人の人生は 子供たちに遺伝情報を伝えるだけじゃない
人は遺伝子では伝達できないものを伝えることができる
言葉や文字や音楽や映像を通して
見たもの 聞いたもの 感じたこと…
怒り 哀しみ 喜び
…俺はそれを伝える
伝えるために生きる
『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』より

 結論から述べると、本稿の主題である「『メタルギアソリッド3 スネークイーター』はなぜ今リメイクされるのか」は、『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』をプレイすればおのずと理解できるだろう。

『メタルギア ソリッド HD エディション』より
『メタルギア ソリッド HD エディション』より

 スネークが諭すように、人生とは最適の遺伝子を後世に伝えるための猶予期間だ。遺伝子を残すということは、直接的な遺伝情報だけでなく、我々が生きるなかで感じたこと、信じたことを伝えていくことも意味する。

『メタルギア』への新たな入り口

 『メタルギアソリッド3 スネークイーター(以下、MGS3)』は、2004年にプレイステーション2で発売されたタクティカル・エスピオナージ・アクション(戦略諜報アクション)だ。“戦いを避けて進む”というステルスアクションを確立した『メタルギア』シリーズの5作品目である。

 5作品目とはいえ、本作は後にビッグ・ボスと呼ばれるネイキッド・スネークを主人公とした初の作品であり、これまでリリースされた『メタルギア』シリーズのなかで最も古い1964年が舞台だ。発売された順序は違えど、時系列で言えば『MGS3』を原点に後の壮大な物語が始まっていく。

 つまるところ、シリーズを知らずして『MGS3』をプレイしても何ら問題はない。

 そして、『メタルギア ソリッド Δ(デルタ): スネークイーター』(PS5/Xbox Series X|S/Steam:発売日未定)は、『MGS3』におけるストーリーやキャラクター、ゲームデザインを忠実に再現したリメイク作品になるという。

 『MGS3』の発売から来年で20年を迎える。コナミの狙いは、シリーズ生誕から長い時を経た作品に、構造を変えずに量を変化させる意味を持つ「Δ」を冠し、小島秀夫氏(現・コジマプロダクション代表)が残した文化的遺伝子を後世に保存することにあるだろう。

 なお、『MGS3』はオリジナル版の発売後、完全版『メタルギアソリッド3 サブシスタンス(2005年・PS2)』や、『メタルギア ソリッド HD エディション(2011年・PS3/Xbox 360/PSVita)』といったリマスターも登場しているが、現在のハードで遊ぶにはややハードルが高い。過去ハードを引っ張り出すほかに最も現実的なのは、下位互換に対応したXbox Series X|Sでプレイすることだ。

『MGSΔ』のスクリーンショット。美麗なグラフィックで再び描かれることが想像できる
『MGSΔ』のスクリーンショット。美麗なグラフィックで再び描かれることが想像できる

『メタルギア』シリーズの土台ともなる作品

 『MGS3』は素晴らしい物語が高く評価されているが、『MGSΔ』で邂逅するプレイヤーのために詳しく述べることは避ける。ただ、「サバイバルアクション」としての魅力と、それを彩るキャラクターたちの魅力はお伝えしたい。

 スネークは単身、ジャングルや山岳地帯などの大自然に潜入し、敵対勢力だけでなく自然との戦いにも身を投じる。長時間食事を摂らなければスタミナが減り、武器を構える際に手ぶれも大きくなる。そのためにスネークは食料として野生生物をキャプチャーして食すなどのアクションが必要となる。そのほか、スネークが攻撃を受け負傷した際、サバイバルビュアーから銃弾を摘出したり、ヒルなどの害をなす生物を取り除いたりと、敵だけでなくスネーク自身を気遣う必要がある。

『メタルギア ソリッド HD エディション』より
『メタルギア ソリッド HD エディション』より

 それらを彩る「無線」も魅力的だ。故・藤原啓治氏演じる戦術アドバイザー“シギント”をはじめ、単身で潜入するスネーク(=プレイヤー)をサポートするキャラクターとのコミュニケーションは頻繁に行われる。メインとなるストーリーだけでなく、細かなスネークの動きに対しても無線を通じた会話が用意されているため、プレイを進める間に愛着が湧くだろう。まるで『ダイ・ハード』で単身テロリストに向かうジョン・マクレーンと、パウエル巡査のようだ。

 また、森林の緑や、建造物のコンクリートの色などにあわせ、フェイスペイントやユニフォームを替えることで周りと溶け込む様子を数値にした「カモフラ率」も実装されたほか、カメラ操作が過去作に比べ、より広い範囲を視認できるようになったなど、後のシリーズにも生かされる要素が本作で多く登場している(もちろん、消えていった要素もある)。物語としての原点でもあり、『メタルギア』シリーズの土台を完成させた作品とも言えるだろう。

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