「ドン勝生活」「Vtuber甲子園」「神域リーグ」……ヒットコンテンツを生み出し続ける天開司が積み上げた5年間とこれから
「何にもできなかった自分が、初めて褒められたのが歌」 音楽活動に込められた天開の“原点”
ーー音楽活動についてもお聞かせください、天開さんの最初のオリジナル曲「HOWL」はどういうきっかけで作られましたか?
天開:2019年に池袋の「harevutai」というライブハウスで、こけら落とし的なイベントに出させていただいたことがあって。そこでいただいた出演料で自分もオリジナル曲を作ろうと思い立ったんです。
作詞作曲は、自分が昔から本当に大好きなアーティストの塚田貴大さんに依頼させていただきました。ニコニコ動画の時報を歌にしたやつとかで有名な方なんですけれども、その当時から好きでした。
いまはなくなっちゃってるんですけど、作っておられた曲はホームページで全部無料で聴けたんですよ。ダウンロードして、この人の曲も声もめっちゃ好きだわーって、ずっと昔から聴いていました。それこそガキのころから「オリジナル曲を作るならこの人に頼もう」って思っていました。
ーーこの後、ファーストアルバムのためのクラウドファンディングが実施されましたね。目標金額の3倍以上という多くの支援が集まり、大きな話題になりました。
天開:昔からやりたい夢だったので、このタイミングしかないなっていう感じでしたね。2020年末の『VTuber紅白歌合戦』で発表して、約一ヶ月後の1月30日まで募集したんですが、ここまでの金額が集まるとは我ながら意味がわからなかったですね……本当に、想像だにしていませんでした。
ーー天開さんはファンブックのなかで「原点にあるものに焦点を当てたい」と話されていました。天開さんの歌うことに対する「原点」とは?
天開:昔、何にもできなかったんですよ。勉強もできないし、運動もできない。けど、初めて褒められたのが歌だったんです。そのとき、「じゃあ俺は歌で頑張るしかないのかな」と感じて。いまもずっと、心の底にその考え方がありますね。
ーー天開さんの歌を聴いていると、ご自身のことを歌っているものが多いイメージです。ですが、実際には作詞も含めて作ってもらっていますよね。曲を作ってもらう時にイメージを伝えておられるのでしょうか?
天開:じつは、曲も詞も、自分から注文をすることはなくて、すべて塚田さんにお任せしたんです。それでもあの内容の詞と曲が来るので、本当にすごいですよね。俺のことをちゃんと調べて、本質を捉えて反映してくださっているんだなって思います。そうじゃないと出てこない言葉があるので。「ああ、この人にお願いして良かった」って毎回思いますね。
ーー歌詞に対して修正要望を出すことも無いんですか?
天開:それが、何も出していないんですよ。自分のイメージと違うな、と感じたことは一度もないですね。
ーーまた、「2D」は実写のMVが話題になりました。どういった意図で演出されたんでしょうか?
天開:「2D」は、アルバムのバランスを取りたくて、すごい明るい「TENPAI」みたいな楽曲に対して、「2D」は「一番暗くしてください」ってお願いしたんですよ。塚田さんのめちゃくちゃアップテンポな明るい曲はもちろん大好きなんですけど、ドロドロしたような、人間の感情が描かれている曲も昔から好きなんです。そういう思いもあってお願いしたのが「2D」なんですよね。結構、挑戦的な内容になったと思います。
ーー歌詞がかなり攻めていて、初めて聴いたときすごくびっくりしました。
天開:「VTuberがこれ歌っちゃうんだ!?」みたいな(笑)、結構深くまでいっちゃってる内容ですよね。でも、塚田さんからこれが来た時「天開さんなら歌えるはずです」みたいな言葉をいただいたんですよ。そこまで言われたらやるしかないと思って、全力で歌いましたね。
逆に、MVの方は「こうしてほしい」というのは細かく要望を出しました。「この曲なら、実写で行くしかねえな」って思って。映像ディレクションのヲタきちに相談して、「こういう曲だから、皮肉めいた暗い雰囲気でやりたい」とお願いして撮ってもらいました。
ーー「2D」もそうですが、天開さんの歌はご自身のことを表現する曲が多いので、歌うたびに体力を消耗していそうなイメージがあります。
天開:めちゃめちゃ持っていかれますよ。「TENPAI」なんて、もうどうやって歌えばいいんだか(笑)。
ーー2022年1月16日にはオンラインライブを実施されました。その時の感想はいかがでしたか?
天開:「夢が叶った」と思いましたね。「harevutai」でやらせてもらったときはまだオリジナル曲もなくて、バラエティパートとかも入れたりしてたので。ガチガチの音楽ライブができるようになったのは、本当にファンのみんなのおかげです。
ーーもし次にライブをやるとしたら、どのようなものにしたいですか?
天開:次は一人ではやらないと思います(笑)。大変さが分かってしまったし、もう一度やるとしたらいろんなものを犠牲にしなきゃいけないんですよ。いまは「神域リーグ」もやっているし、配信も頑張らないといけないし……また同じ熱量でライブをやるのは厳しいですね。それこそ、この前のMonsterZ MATEのライブ(『5th Anniversary LIVE“大騒動”』)に出させていただいた時のように1、2曲披露するくらいなら全然できると思うんですけど……。音楽活動をちょっと舐めてたので、本気でやるとなると「全部かなぐり捨ててやんないとダメだ」っていうのが理解できたという意味でも、経験としてでかかったですね。
「天開司というよりは、自分が作ってきたコンテンツが残る方がいい」
ーー2023年以降、変化していくVTuberシーンの中で、どういう活動をしていきたいですか?
天開:まずは、動画をしっかりとやっていきたいですね。いま、「理外の実写」って言って、ポケモンカード開けたりとか街ブラしたりする実写動画を上げているんですよ。これはもっとやっていきたいと思っています。
ーー5年間活動してきて、ご自身やVTuberシーンのここが変わったと感じるところはありますか?
天開:自分自身でいえば、変化したことはあんまりないんじゃないかな。
逆に、VTuber界はめちゃめちゃ変わりましたよね。まだ流行り始めてから5年しか経っていないのに、本当にずっと変化し続けている。いまでいうと、VTuberのアイドル化が進んできたんじゃないかなと思います。それは如実に感じますね。
ーー今後の活動の中で、「天開司」として残していきたいものはありますか?
天開:「天開司」というよりかは、「にじさんじ甲子園」とか「神域リーグ」のような、自分が作ってきたコンテンツが残る方がいいのかなと思ってますね。
ーー自分がトップに立ってリードしていくのがメインではない感じなのでしょうか?
天開:それが理想ではありますけど、なかなか難しいですよね。そうなりたいなってめっちゃ思ってはいたんですよ。でも、5年目を迎えて、あらためてこうして自分の実績を振り返ってみると、自分はコンテンツを残す側なのかなと感じていますね。
■天開司Official
天開司🎲バーチャル債務者Youtuber(Twitter)
バーチャル債務者Youtuber天開司(YouTube)
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