「本当の怖さは、視聴者が再発見するもの」 放送作家・白武ときお×「フェイクドキュメンタリー「Q」』など手がける映画監督・寺内康太郎が語る"ホラーコンテンツの可能性”

白武ときおと寺内康太郎が語る ホラーの可能性

もし白武ときおが、ホラー映画をつくるとしたら?

白武:ホラーブームって再熱してますか?  最近、人からホラー系のコンテンツをすすめられることが増えた気がしています。『Q』とか『ゾゾゾ』も、人からの口コミで知りました。

寺内:僕自身もここ数年、「ホラーについて語ってほしい」という依頼が増えていますね。なにか新しいムーブメントが起きつつあるのかなと感じています。

白武:なんでこのタイミングで盛り上がってきたんですかね?

寺内:僕にも全然わからないんですが、「不景気になるとホラー人気が高まる」っていう説はありますよね。あとは清水崇史さんや中田秀夫さんといった大御所が、ハイペースで新作を発表し続けていることも、「Jホラー復興」という雰囲気につながっているのかもしれません。

白武:若手の監督はどうですか。ここ5年、10年くらいで、ヒットや世界を狙えるような新しい才能が出てくる気配とかはあるんですかね?

寺内:うーん、みんな世界を意識はしていると思うんです。そろそろひとりくらい、時代を変えるような天才が現れてもいいような気もしています。でも、この10年間で存在感があったのは、日本じゃなくてアジアのホラーなんです。もっと言えば、韓国と台湾のホラーです。Jホラーの停滞をよそに、彼らはこの10年で、自分たちの映画を飛躍的にアップデートしてみせました。決定的だったのは『呪詛』です。「あんなのJホラーのパクりじゃん」と言う人もいるけど、あれをやられちゃったら、なにを言っても負け惜しみですよ。

白武:デスゲームジャンルで、『イカゲーム』を『カイジ』や『ライアーゲーム』をわかりやすくポップにしたものと見るのではなく、どうアップデートされているから世界中でヒットしたのかみたいな。

寺内:そこに悔しさを感じているプロデューサーは、大勢いると思います。だからいまは、みんなNetflixでつくりたがりますよね。ビジネスとしてもペイしやすいし、最初から世界に向けて配信できるから。

白武:寺内さんのところにも、そういう話が来ますか?

寺内:来てますね。ただ、具体的なところまではなかなか進まなくて。そこは常に動きながらチャンスを待とうかなと思います。白武さんは、なにか温めている企画とかありますか?

白武:僕も映画をつくりたいんです。『まーごめ180キロ』というお笑い映画を一本撮ったんですけど、実はもっと本格的にやってみたくて。

寺内:そうなんですね。こんな映画を撮りたい、みたいなイメージはあるんですか?

白武:ほんとに最終的には、スティーヴン・スピルバーグやマーティン・スコセッシ、J・J・エイブラムスとか、自分が高校生のときに最高だと思っていた人たちに認めてもらえるような映画をつくりたい。海外の人にも楽しんでもらえるもの。最初はコメディも考えたんですけど、笑いって言語や文化が異なると伝わらない部分が結構あるなと。

寺内:それはたしかに、そうかもしれません。

白武:それでいま一番気になっているのが、ジョーダン・ピールや映画配給会社のA24がやっているような方向性ですね。ホラーというかスリラーというか、気持ち悪くてゾッとするし、アトラクション的にも楽しめる。そういった作品でできることがないか、考え始めていきたいなと。

寺内:白武さんみたいなお笑いの世界の人がホラーに挑戦するのって、かなり可能性があると思います。松本人志さんの『ビジュアルバム』なんかも、ただ面白いだけじゃなくて、ちょっと恐ろしいというか、変な気持ち悪さもあるじゃないですか。ああいう感覚を作品に落とし込めたら、いままでのJホラーとはひと味違った作品ができるかもしれないですね。

白武:かなり素人質問で恐縮なんですけど、ホラー業界の人たちは、みんな幽霊とか呪いとか怖くないんですか?  僕は結構苦手なんです。正直、自分はもちろん行かないし、近いスタッフさんに心霊スポットに行ってもらうのも抵抗があります。なにか不幸が起きたら嫌だし、連れてこられるのも嫌だし。寺内さんはそういうのは平気ですか?

寺内:平気というか、感覚が麻痺してますね。そういうところばっかり行っているので。たとえばなにか怪我をしたとしても、じゃあどれがどの心霊スポットの障りなんだよと思います。霊に取り憑かれるとか、だからなんだという感じですね。自分の身を案ずる、みたいな感覚はもうなくなってます。

白武:みなさん、心霊的なものをあんまり信じていないんですかね?

寺内:信じていない人が多いと思います。信じてる人はつくってないというか、作品にしても誰にも伝わらないものになっちゃうというか……。幽霊が見えるっていう人に、直接話を聞いたことはありますか?

白武:陰陽師の方に話しを聞いたことはあるんですけど、それぐらいです。

寺内:見える人の話って、聞いてみてもよくわからないというか、結構むちゃくちゃなんですよ。もちろん、すごく参考にはなるんですが、そのままではおよそ商品化できない内容のことがほとんどです。オカルト的なものに半信半疑であるか、完全に否定派の人の方が、作り手には向いていると思います。とはいえ、『シックスセンス』の脚本家は、本当にあっちの世界が見えてるんじゃないか、なんて言う人もいて。そうじゃないと、あんな風には書けないだろう、と。その辺りの考え方は、人それぞれかもしれません。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる