『ストリートファイター6』と『CRカップ』が生んだ熱狂 プロ、ストリーマー、VTuber業界の行く末を変える重要タイトルとなるか

さまざまなイベント・大会は“格闘ゲーム”の魅力をアピールする場所に

 ここまで『ストリートファイター6』の盛り上がりをアツく語ってきたが、いちど俯瞰視点でみてみれば、これらがストリーマーを使った「格ゲー業界」のPR戦略に端を発したものであることに気が付くだろう。仕掛け人こそイベントごとに異なるが、CAPCOMやゲーミングチームらが中心となり、『ストリートファイター6』を使って格ゲー界隈が大々的に盛り上がった結果といえる。

 まず各種大会・イベントに際して、30年以上に渡って折り重なった格闘ゲームのコミュニティから多数の有力選手がコーチ役を買ってでた。

 サラっとコーチングを引き受けて配信に現れたプレイヤーが、じつは過去に世界大会で優勝していた猛者であったり、今後世界大会で活躍が見込める有力な若手選手ということが多く、世界有数ともいえる格ゲー大国・日本の層の厚さに驚いた方は多いだろう。

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 それに応えるように、参加した面々が1人のゲーマーとして熱を上げてプレイしたのももちろん重要だ。

 個々人によって格ゲーとの距離感・触れ方は変わってくるが、参加した配信者らのほとんどに言えるのは「それまで興味はあったけどもそこまでガッツリと触れるチャンスが無かった」という点。とくにホロライブの2人は「タイミングさえ合えばプレイしてみようかな?」と考えていたレベルの初心者で、いわば新規層であった。

 同様に、これまで格ゲーに積極的に触れてこなかったにじさんじ・叶は、「モダンになってからコンボだけじゃない部分の楽しさを知れた」「『スト5』は苦しかった。モダンモード神です」と配信中に話しており、『ストリートファイター6』の新要素がバッチリと刺さった、ロールモデルのようなプレイヤーだ。応援するファンの立場としても、参加した配信者らが笑顔で楽しみつつ、急激に実力を伸ばしていく姿をみれば、その魅力は十二分に伝わるだろう。

 さらに、叶が話したように、格闘ゲームの「1対1」という緊張感やコンボ技の華々しさも、さまざまな配信や大会中にも大きなアピールポイントとなった。

 以前の作品よりもガードが有効ではなくなった仕様で、より読み合いが重要となりスピーディに試合が終わる傾向にある本作。一発貰ってしまえばすぐに逆転されてしまう危うさのなかで、ドライブゲージ・パリィ・必殺技などを駆使して戦い、コンボが決まれば華やかな画面演出でバチっと決まる。強烈に惹きつける爽快感があり、興奮させていくのはいうまでもない。

 『ストリートファイター6』を使ったここまでの各種イベント・大会は、メーカー・チーム・プレイヤー・コミュニティそれぞれが楽しみ、盛り上げようという方向性を共にしていた。そしてその相乗効果が、『ストリートファイター6』ひいては格闘ゲームの魅力を存分に示したといえよう。

『ストリートファイター6』は配信者シーンやゲーミングチームに変化を与えるのか?

 最後に、これらの施策はストリーマーやバーチャルタレントを中心にした配信者シーンにも大きな波を起こしそうな予感を漂わせていることに触れよう。

 格ゲーコミュニティの面々とFPSを出自とする人気ストリーマーの一部は、2010年代中ごろのニコニコ生放送に始まり、OPENREC.tvやTwitchがスタートしたばかりだった2010年代後半にも同じく配信をしていた。それもあり、「同じシーンで戦う者同士」という意識が少なからずあったように見える。

 しかし、これは長く活動している配信者に限った話であり、ここ数年でデビューした者にとっては、お互いに存在を認知してはいるものの、主戦場としているゲームジャンルが違うためなかなか交流を深める機会がなかった。

 そしてここ数年のコロナ禍において、Crazy Raccoonが中心となりVTuber・FPS出身ストリーマーを巻き込んだ盛り上がりが生まれた。今回の盛り上がりをみていると、『ストリートファイター6』を切り口にして「次は格ゲーコミュニティが接続していく」、そのような見取り図が見えてくる。

 実際この数ヶ月の盛り上がりを通じて、「格ゲーコミュニティにも面白い配信者がいる!」とVTuber・FPS出身ストリーマーの視聴者が新たな発見をするだけでなく、格ゲーコミュニティの面々もにじさんじ・ホロライブといった有名VTuberに密接に触れることにもなった。参加するゲーマーやストリーマーだけでなく、彼らを応援する視聴者も同様にだ。

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 Crazy Raccoonに所属することになったどぐらが、ホロライブ・獅白ぼたんとした会話のなかで、「隣国のお姫様をもてなすように」と表現していたが、これは笑いを狙いつつもかなり的を射た表現であろう。

 その後どぐらは獅白との会話のなかで、格ゲーコミュニティの過去を切々と語っている。「ウメハラ人気を格ゲー人気と勘違いして、格ゲー村が縮小してしまった」と。格闘ゲームのコミュニティをいま以上に拡大していくため、新規のプレイヤーには優しく接したいという彼の言葉は、シーンの誰もが同意する意見ではないだろうか。

 また、プロゲーミングチームの視点からみても、格ゲーコミュニティへの参加は大きな利点とみているようだ。REJECTとCrazyRaccoon、両チームともに格闘ゲーム部門を新設する2チームが大会を開催したことは、その重み・方向性を感じるには十分だ。

 リアルサウンドテックでは、関優太、釈迦の盟友にして現在はREJECTのCEOを務めるYamatoNとこく兄へのインタビューを実施している。彼らの言葉をぜひ読んでほしい。

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 世界的に見ても有数な選手層を誇りながら、どこか閉鎖的であったようにも感じられるこれまでの日本の格闘ゲームコミュニティ。しかし、『ストリートファイター6』をめぐる関係者の発言の数々、動きを見ていくと、その門戸はすでに開かれたといっていいだろう。

 今後は、それぞれの人脈がどのように接続し、リスナーなどに受け入れられて広まっていくのか、なにより『ストリートファイター6』がどこまでゲーマーやストリーマーに刺さっていくのかが注目される。『ストリートファイター6』は、今後のストリーマーシーンの盛り上がりやゲーミングチームの浮沈にも関わってくる、重要なゲームタイトルとなりそうだ。

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