10代にして1,000以上のゲームを生み出した若き才能 現役高校生クリエイター・杉山悠真氏が語る「つくる人を増やす」執念

9歳でプログラミングツール・Scratchに出会い、本能的に“つくる側”の道を選んだというクリエイター・杉山悠真氏。現役高校生である彼が、これまでに制作したゲームは1,000作品以上。圧倒的なアウトプットを誇り、近年ではSteamで商業パズルゲームのリリースを行うなど、その活動は“趣味”の枠を大きく飛び越えている。
現在は460人が在籍する創作コミュニティを運営し、起業も見据える杉山氏。著書『ゆるっとはじめるRobloxゲームプログラミング』(日経BP)の出版を機に、ゲーム開発をはじめとしたものづくりへの情熱、若き才能が集う創作の場の現在について聞いた。(編集部)
9歳で出会ったScratchからゲーム開発の道へ
――杉山さんがゲーム開発に興味を持った最初のきっかけを教えてください。
杉山悠真氏(以下、杉山):きっかけは、初心者向けのプログラミングツール・Scratch(※1)を知ったことです。友達から紹介されて、そこからゲーム制作に興味を持ちました。Scratchでは他の人が作った作品を遊ぶこともできるのですが、僕の場合は、最初から本能的に「つくる側」を選んでいました。Scratchに出会ってからは、遊ぶよりもつくる時間の方が多くなっていきました。
――ちなみに、当時はどのようなゲームで遊んでいたのですか?
杉山:初期の頃のスマートフォン向けゲームでよく遊んでいました。あの頃は美しいゲームがたくさんあったんです。例えば『JellyCar 3』『Icycle: On Thin Ice』(※2)、有名なものだと『グルーヴコースター』『Monument Valley』『BADLAND』などです。他にも家庭用ゲームだと『Portal』や『スプラトゥーン』『UNDERTALE』『パワプロクンポケット』9~14などです。これらのような芸術的で美しい作品が大好きで、幼稚園児の頃からよくプレイしていました。この「美しい」というのは、作品を通して一貫したルールや法則があるという意味です。自分でゲームをつくる時も、自然とそういった美しさのある作品を目指すことが多いです。

――Scratchを触り始めたのは何歳頃ですか?
杉山:小学3年生(9歳)です。当時から家にパソコンがあり、それを使って作曲や動画編集をして遊んでいました。そのパソコンでScratchを始めました。その後はScratchを通じて、同じように開発をしている小学生たちとも交流するようになりました。
――その後Roblox(※3)をやり始めたのはいつ頃でしょうか?
杉山:中学生の頃です。世間で流行り始める少し前、コロナ禍の直前くらいから遊んでいました。「これほど簡単にオンラインゲームが作れるのか」と気づいて、感動しましたね。
――これまで多くのゲーム制作をされてきて、ハードルを感じることはありましたか?
杉山:ハードルを感じたことはありません。楽しみながら作ってきたからです。強いて言えば、最近Steamで公開した商業用ゲーム『REBADGE』をつくるときに、みんなの心に残る作品にするための工夫を考えたことでしょうか。あまり、つくること自体にハードルを感じたことはないです。

――開発中に分からないことがあった時は、どのように解決しているのですか?
杉山:幼稚園に入る前から英語に親しんでいたので、海外のサイトの情報を読んで解決しています。Robloxの開発も、大体は海外の公式サイトなどを読んで進めました。Robloxは日本語の情報がまだ少なく、ゲームをきちんと完成させるまでの道筋が示されているものがほとんどありません。今回の書籍を執筆したのも、「Robloxで自作してみたい日本の小中学生が、一人でも多くゲームを完成させてほしい!」という想いがあったからです。
これまでに制作したゲームは1,000作品以上 “とびきり変な展開”にこだわり

――これまでのゲーム制作の中で、特に印象に残っている作品や、ターニングポイントになったと感じる作品はありますか?
杉山:中学2年生の頃に出会った『Friday Night Funkin'』(※4)というラップバトルのゲームのMODをつくったことです。このゲームはMODの文化がすごく盛んで、二次創作がたくさん作られていました。僕も自分で楽曲を作り、初めてみんなに向けて二次創作のゲーム作品を公開したんです。この時初めて10曲以上の作曲に挑戦したのですが、今では30分から2時間ほどで1曲作れるようになりました。その後も、『Friday Night Funkin'』の楽曲を読み込んで遊べる独自のエンジン(アダムエンジン)を自分で開発するなど、最初の作品公開がその後の色々な挑戦に繋がっています。最近で言えば、先ほどもお話しした、Steamで公開したパズルゲーム『REBADGE』です。商業作品を出すことは、自分の中でとても大きな経験となりました。
――これまでに、そもそも何作品くらい作られているのでしょうか?
杉山:Scratchでは1,000作品以上、Robloxでは10作品以上です。楽曲で言えばこれまでに1,500曲以上をつくってきました。
――それだけの数をこなしてきた中で、初めてSteamに挑戦してみていかがでしたか?
杉山:Steamでの公開は、今までと比べて少し壁を感じました。商業用として作品を公開するためには、試作品をつくるときの「これは本質的じゃないから、後でいいや」と後回しにしてきた要素に向き合って、退屈な作業も含めて全部やらないといけないんです。Steamのストアページのイラストだけは、今回の書籍でもお世話になっているyaigiさん(※4)にお願いして描いていただきましたが、ストアページの文章作成、その他のゲーム制作の工程すべては僕がやりました。退屈な作業もいっぱいなので、それをやり遂げることができたのは、完成させるための実力に繋がっています。
――作品を作っていく中で、特に工夫している点や、やって良かったと思うことはありますか?
杉山:工夫している点は、ゲームを「とびっきり変な展開にする」ということですね。遊んでいる人に次の展開を読ませないように常に意識しています。例えば先ほどの『Friday Night Funkin'』のMODであれば、「普通に始まるのかな」と思わせておいて、いきなり大量のノーツ(譜面)が降ってくるような仕掛けを作りました。『REBADGE』にもそうした要素を取り入れています。このゲームには、自分の移動可能バッジを投げてゴールにくっつけて、ゴール自身を動かしてクリアするような驚きも入れてあります。でも、それだけじゃなく、ネタバレになるので詳しくは言えませんが、最後にみんながビックリする要素が仕込んであったりします。
――実際に作ってみて、発見があったり面白いと感じるジャンルはありますか?
杉山:パズルゲームですね。僕は毎回、新しいルールのパズルゲームを作っているのですが、つくるたびに新しい発見があって面白いし、アイデアで勝負できるので自分に一番向いているジャンルだと思っています。
「Robloxで遊ぶだけじゃなくて、つくる側の人を増やしたい」

――では、今回の著書である『ゆるっとはじめるRobloxゲームプログラミング』について伺います。この本を出版された意図や狙いを改めて教えてください。
杉山:先ほどもお話しした通り、Robloxは日本語の情報が少なくて、作品を完成させるのが難しい現状があります。「実はRobloxで作品をつくるのはこんなに簡単なんだよ」ということを伝えて、Robloxで遊ぶだけじゃなくて、つくる側の人を増やしたい。そして、たくさんの作品を生み出すきっかけになりたい、という狙いがありました。最近では独自の通貨があったり、自分で作ったものを売ることができたり、プログラミングで自分だけの世界を無料で作れる環境が色々あります。その中でも特にRobloxは、小中学生が大好きですし、オンラインで遊べる作品を楽しみながらつくっているうちにプログラミングも学べてしまいます。作品をつくりはじめる入門にはとても良いと考えたので、この本を書きました。
――この本は、やはり小さな子どもから大人まで、幅広い層に読んでほしいですか?
杉山:そうですね。例えば、PCの使い方に慣れていない人のためにインストールの方法から丁寧に解説しています。第2章からは本格的なオンライン対戦ゲームをつくるので、内容もすこし難しくなるのですが、プログラミングが初めての人でも作れるような説明になるように沢山の工夫を入れました。読んだ人に、「自作のオンラインゲームができた!」といううれしさとワクワクを届けたいです。

――説明の工夫というと、この本の序盤では、いきなり「チート」の話から入る構成になっていますね。やはり「ゲームを意図的に壊す楽しさ」のような、読者が惹かれる要素を意識されたのですか?
杉山:はい。僕自身、昔からチートでゲームをぶっ壊して遊ぶのも大好きでした(笑)。チートははじめてプログラミングを体験するときの勉強にはなかなかいいなと思っています。プログラムを改造して、足が爆速になったり、キャラクターが超デカくなったり…そういうヤバい変化が起きることで、「あ、ここを変えるとこうなるんだ」と分かっていくんですよね。元々、チートの話はもっと後ろの章に登場していたのですが、一度全部ボツにして構成を見直し、「絶対に最初に入れた方が楽しいな」と思って一番前に持ってきました。
――その他に工夫した点があれば教えてください。
杉山:Robloxのあまり知られていない魅力の一つは、共同編集ができる点です。『マインクラフト』のように、みんなで集まって一緒に一つの世界を作り上げたり、自分で作った世界に友達をさそって一緒に対戦したりして遊ぶことができます。この「みんなでワイワイつくる」というRobloxの楽しさは、まだ日本では十分に広まっていません。この本をきっかけに、一人でも多くの人に「みんなと繋がってモノをつくる楽しさ」を体験してほしいです。



















