『ドラクエ』の世界は“見る”から“入る”へ 堀井雄二も驚いた「the DIVE」体験レポ

キラーパンサーに乗り、草原を駆け抜ける。これまで画面の向こうにあった『ドラゴンクエスト』の世界が、視界いっぱいに広がっていく。
2026年7月17日から9月6日まで、東急プラザ原宿「ハラカド」で開催される、ドラゴンクエスト40周年記念展『ドラゴンクエスト the DIVE -まだ見ぬ冒険の舞台へ-』。開幕前日の7月16日に行われたメディア体験会では、ステージイベントに加え、メインコンテンツとなる「ドラゴンクエストVR RIDE」を一足早く体験することができた。
筆者は『ドラゴンクエスト』シリーズをすべてプレイしてきた。見慣れたモンスターも、何度も歩いたフィールドも、頭の中にはすでに自分なりの大きさや距離感がある。だが、VRの中へ入ってみると、その「知っているはずの世界」は、まだ見たことのない場所に変わっていた。
40周年のテーマは「世界への没入体験」
ステージイベントには、ゲームデザイナーの堀井雄二氏、イベントナビゲーター「ホミータ」の声を担当する小倉唯、特別ゲストのEXIT・兼近大樹、スクウェア・エニックスの村上洋平氏が登壇。MCは倉持由香が務めた。

最初に村上氏が、今回のイベントの企画意図を説明した。
「『ドラゴンクエスト』の世界への没入体験をテーマに、VR RIDEだけではなく、さまざまな体験型コンテンツを用意しました。長年愛してくださっているファンはもちろん、ここから『ドラゴンクエスト』に入門する方にも体験していただける内容になっています」
中心となる「ドラゴンクエストVR RIDE」は、Meta Quest 3とモーションシートを組み合わせ、360度に広がる『ドラゴンクエスト』の世界を進むアトラクションだ。
モンスターの動きや空間の雰囲気を映像だけでなくシートの動きでも表現しているほか、VR酔いにも配慮。開発時にはモーションシートの角度を細かく調整し、なるべく酔いにくい構造を目指したという。
続いて、開発の過程からVR RIDEを見てきた堀井氏が、シリーズ40年間の変化について語った。
「40年前は、ファミコンの小さな画面で、2Dで、キャラクターも前しか向けなかった。それが今では、その世界に入っている。すごくリアルで、没入感がとんでもない。こんな進化になったんだとびっくりしました」

1986年に発売されたシリーズ第1作では、限られたドットやテキストによって冒険が描かれていた。それから40年を経て、今回はプレイヤーの身体を取り囲む空間として『ドラゴンクエスト』の世界が表現されることになった。
小倉唯が込めた「ホミータ」の臨場感、兼近大樹がVRを実演
「ドラゴンクエストVR RIDE」では、小倉が演じるナビゲーターのホイミスライム「ホミータ」がプレイヤーを案内する。
小倉は、ホミータの少年らしさと、プレイヤーを冒険へ導く役割の両方を意識して収録したと明かす。
「少年らしさを大切にしつつ、今回のVRでみなさんを引っ張っていく重要な役どころだったので、臨場感やアドリブまで、時間をかけて細かくこだわって収録しました。ホミータのかわいらしさや明るさも伝わって、楽しい気持ちになっていただけたらと思います」

小倉はステージ前に完成版も体験。映像と音声だけでなく、風やシートの動きが加わることによる変化を説明した。
「風もたくさん出て、本当に臨場感があって、椅子も動くんです。没入感がすごくて、愛を持ってホミータを演じさせていただいたので、その完成形を見ることができて、とても感動しました」
ステージ上では、兼近が実際にVR RIDEを体験した。ヘッドセットを装着し、モーションシートに座った兼近は、キラーパンサーや周囲に現れるモンスターに反応。風が吹く場面では、特殊効果についてもリアルタイムで伝えていた。
体験終了後、兼近は正面の映像だけでは伝わらない、VRならではの見回しの自由について言及した。
「上を向いても下を向いても、全部が細かく作られている。どこを見るかも自由なので、正直、何回乗ってもいいんじゃないかな。1回目は前だけ向いて、2回目は後ろだけ見てもいい」
正面を向いているだけでは見つけられないキャラクターやモンスターも配置されており、視線を向ける方向によって異なる発見があるという。

ステージではこのほか、2メートルを超える「ぽよよんキングスライム」や「ドキドキ宝箱」、「ふれあいモンスター研究所」、「ラーの鏡」、歴代作品を振り返るエリアなども紹介された。
キラーパンサーに乗り、360度に広がる世界へ

実際に「ドラゴンクエストVR RIDE」を体験してみた。
Meta Quest 3を装着し、モーションシートに腰を下ろす。視界が切り替わると、目の前だけでなく、左右にも、背後にも『ドラゴンクエスト』の世界が広がっている。
キラーパンサーが走り出すと、その動きに合わせてシートが大きく揺れる。草原を駆け抜ける疾走感、次々に現れるモンスターをかいくぐる緊張感、そして風を受けながら広い空間を進んでいく感覚。視覚、シートの動き、風という複数の刺激が重なることで、映像の中を移動している感覚が生まれていく。

VRアトラクションでは、映像の迫力やシートの激しさに目が向きがちだ。しかし今回、もっとも印象に残ったのは、自分の意思で周囲を見渡せることだった。
正面で何かが起きていても、横を向けば別の風景があり、振り返ればそれまで見えていなかった世界がある。ゲームではカメラや画面の枠に収められていた空間が、ここでは自分の周囲に存在している。
「ドラゴンクエストVR RIDE」は、ただ『ドラクエ』の映像を360度に広げたものではない。プレイヤーが自分の視線で世界を探し、その中に自分の居場所を見つけるアトラクションになっていた。
全作を遊んできたからこそ変わる、モンスターとの距離
シリーズをすべて遊んできた筆者にとって、登場するモンスターや風景は、もちろん知っているものばかりだ。
だが、画面の中で何度も見てきたモンスターが、自分と同じ空間に現れると印象は大きく変わる。どれほどの大きさなのか。どのくらいの距離まで近づいてくるのか。自分の視界の外側には、何がいるのか。
これまで知識として持っていた『ドラゴンクエスト』の世界に、身体的な距離と大きさが加わっていく。

ゲームの中でキラーパンサーに乗るとき、プレイヤーが行うのはコントローラーの操作だ。しかしVR RIDEでは、走り出した瞬間の揺れを身体で受ける。空間が大きく動けばシートも動き、風が必要な場面では実際に風が吹く。
こうした仕組みは、ゲーム内の移動を、操作から体験へと変えている。
『ドラゴンクエスト』をよく知っているから新鮮さが薄れるのではない。むしろ、長年の記憶があるからこそ、頭の中にあった世界との違いを一つずつ発見できる。その時間は、率直に言ってかなり楽しかった。
触れて、映して、40年を思い出す

VR RIDEを終えた後も、会場内にはさまざまな体験が用意されている。
2メートルを超えるキングスライムに抱きつける「ぽよよんキングスライム」、スライムの質感やモーモンの毛並みなどを再現した「ふれあいモンスター研究所」、フェイストラッキングを活用して自分の姿をモンスターとして映し出す「ラーの鏡」など、ゲームの中にあったものを現実側へ引き出す展示が続く。


とりわけ「ふれあいモンスター研究所」は面白い。モンスターの触り心地は、ゲーム本編で明確に描かれてきたものではない。それでも、触れてみると「確かにこうかもしれない」と思えてしまう。

一方で、歴代作品を振り返るメモリアルゾーンや、シリーズ誕生の過程をたどる特別展示も用意されている。VRによって未来の『ドラゴンクエスト』を体験したあとに、シリーズが生まれた場所へ戻っていく。この順路によって、40年間の技術と表現の変化がより鮮明に見えてくる。

40周年記念展というと、過去の資料や思い出を並べる場を想像する。しかし『ドラゴンクエスト the DIVE』は、40年間に蓄積されたプレイヤーの記憶を、現在の技術でもう一度体験し直す場所になっていた。























