この冬、『進撃の巨人』のアクションVRゲームが爆誕 気鋭の開発者が語った「バーチャル世界への“無垢な憧憬と狂気的な情熱”の根源」とは?

「人がそれぞれ『己の理想像』を持ち合わせているからこそ、IPものには可能性を感じる」

ーーUNIVRSの一作目は『BE THE HERO』でしたが、こちらは完全オリジナル作品で、そこから二作目の『リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを』へとつながるわけですが、ここにひとつ御社の転換点を感じられる気がします。IPものの制作に舵を切った理由は何かあったのでしょうか?

小路:会社の設立背景のとおり、我々は最初からIPものを作りたかったんです。ただ、当然ながら1作目から他所様のIPを使わせてもらうのって不可能じゃないですか。そこで「こういうことをやりたいです」と言えるだけの実績をまずは自分たちで作ろう、と始まったのが、『BE THE HERO』でした。

 VRゲームの開発って、なにが正解なのか今でも分からないことだらけで、当時の我々には“なにが必要なのか”も把握できていませんでした。ですから、チームのスキルアップを考える上でも『BE THE HERO』の制作は重要なステップだったと思っています。

 先ほどもお話した通り、我々は「漫画やゲームの世界に入りたい」という思いからスタートしている会社です。すでに自分たちが大好きな世界が存在していて、どうにかしてそこに辿り着きたい。そういった夢を実現したいと。だから『BE THE HERO』もオリジナルの作品ではあるんですけど、アメコミっぽい漫画の中に飛び込んでいくキャラクターが主人公なんです。

BE THE HERO -Ancient Era ver. 2.1- Official Trailer

 弊社のビジョンのひとつに「すべての人をHEROに」というのがあるのですが、基本的にヒーローってポジティブな存在だと思うんです。“HERO”の形はさまざまあると思いますが、おおむね人々を前向きな気持ちにさせてくれる存在というか。そのうえで、VRの素晴らしさはどんな自分にでもなれることにあると思ってまして、そうしたときに人が想像する「己の理想像」って、それぞれが沢山のコンテンツから要素を摂取することで、すでに持ち合わせているような気がするんです。だからこそ、IPものの制作には可能性を感じます。

ーー日本は特に優れたIPをたくさん持っていますし、海外でも非常に人気が高いですよね。UNIVRSは『リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを』を作られたころにはすでに英語対応をされていました。マーケティング目線で考えたときにも、日本のアニメや漫画の優位性を感じます。

小路:その通りですね。VRビジネスを始めた段階で、グローバルに展開することははじめから決めていました。“オタク人口”って今後もしばらくは右肩上がりだと思うんですよ。卒業する人よりも、入学する人の方が絶対に多い。私自身、30代になってもオタクを卒業する気配すら感じませんから(笑)。「一生このまま好きなものを追って生きていくんだろうなぁ」と思っています。

 VRの領域って「VR元年」と言われ続けている状況がありますが、逆説的に考えるとまだまだ先駆者になれるチャンスはあるということです。そういった現状を俯瞰した時に、日本のコンテンツがグローバルで主役になれる可能性は大いにあるなと。ただ、現在のVRマーケットを先導しているのはアメリカなので、日本の開発者としてはまずそこに追いつきたいです。

ーー『Meta Quest 2』の売れ行きはVR領域にとって明るい兆しになりましたよね。スタンドアローンになったこともそうですし、やっと手が届く価格帯になるというか。

小路:我々も『Meta Quest 2』の発売前はすごく苦労していました。VRを始めるといっても、イニシャルコスト+デバイス費用で敷居が非常に高かったですからね……。

 開発目線からしてもスタンドアローンになったことでさまざまな問題が解決しましたね。一番はコードがないこと。弊社のコンテンツはユーザーに激しい動きを要求するので、それを妨げる物は極力少ないほうがいいんです。それから、「体験までの短さ」もスタンドアローンになったことでもたらされた利点ですね。

 それまでのVR体験って、まずPCを立ち上げ、複数のコードを繋いで、センサーを立ち上げて、そこからまた色々設定して……と、ものすごく手間がかかっていたのを、今はインサイドアウト・トラッキングでデバイスを被ればすぐにプレイできるわけですから。

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