Brave group、ななしいんくの現状から紐解く、“VTuberシーンの現況と趨勢”
“にじさんじの妹分”、有閑喫茶あにまーれの活動から垣間見えていた窮状
次に記していくのは、ななしいんく(旧:774 inc.)について。ななしいんくについては、今年に入ってかなり激しく揺れ動いている状況にもフォーカスしていきたい。
2018年6月1日に「有閑喫茶あにまーれ」が活動開始、にじさんじを運営していた当時のいちから株式会社が制作に協力し、「にじさんじの妹分」と呼んだことでも話題を集めた。彼女らの活動を皮切りに、「ハニーストラップ」「ブイアパ」「シュガーリリック」「緋翼のクロスピース」と1年に1グループがデビューしてきた。
以来、それぞれのグループを運営してきたのは774 inc.であったが、2023年1月7日に「ブイアパ」の解散を発表すると、2か月後の3月21日から全5グループ・全所属タレントを統合し、現在の「ななしいんく」とすることが発表された。
活動5年目を迎えたなかでの突然の変化に、長きに渡ってシーンを知っているファンにとっては寝耳に水だったかもしれない。だが過去の配信を通じて、ななしいんくの窮状は公になってはいたのだ。
筆者が「まずいかもしれない」と感じたのは、ちょうど1年前となる2022年5月10日に因幡はねるがあにまーれのメンバーを集めておこなった配信を見たときだ。
この配信で話されたのは、2022年6月18日に開催予定であった『AniMare 4th Anniversary あにまーれ学園祭!』にまつわることだった。なんと、この4周年イベントのチケットが「全然売れていない」ことが明らかになったのだ。
因幡はねるによれば、5月2日の告知から10日ほど経った時点での販売数が、3周年イベントの告知初日に売れた販売数を大きく下回り、この配信の前日の販売枚数は5枚。なんと、配信時点でのチケット総販売枚数は全部で243枚と、危機的な状況。
これは赤字どころの騒ぎでなく、因幡はねるが「はねるがデビューした時のイベントよりも少ないです」とはっきり口にするレベルだった。
配信序盤こそ、リーダーでもある因幡はねるが「笑いごとじゃないよ!」と牽制し、それがお笑いのフリのようになっているが、配信時点のチケット販売数が発表され、改めてその窮状を知ると、リスナーどころか集まったメンバーすらも真っ青になった。
この後、配信に集まったリスナーからもアイデアを拾いながら、集まった7人から改善案が次々と提案されていった。そもそも「イベントが開催されること自体を知らなかった」というコメントが多くあがったのをきっかけに、「何日にやるか」「チケット発売はいつか」「値段はいくらか」という基本情報が周知されてなかったことが判明。「いったい何をするのかわからないのにチケットは買えない」という声もあがるなど、二重・三重での障壁があったことがわかる。
「イベントチケットをどうやって売っていこうか?」と頭を悩ませる7人のメンバーだが、結果的に“この配信自体がひとつの宣伝”ともみれるようなドキュメンタリータッチな内容となったことで、この配信中・配信後にチケットが販売されていったようだ。
また、半年後となる2022年12月3日には立川ステージガーデンで『ななしふぇす2022"JUMP!"』開催されたが、この際も「チケットの売り上げが厳しい状況」であることが因幡はねるの口から明らかになった。
もちろん、新型コロナウイルスの流行による影響も大きく、2020年から2022年の間でリアル会場でのイベント開催どころか、業界全体として小規模な3Dイベントすらも開催中止・断念していたことは無視できない。
しかも、11月11日から数日のうちに宗谷いちか、瀬島るい、季咲あんこ、不磨わっと、紫水キキ、涼海ネモ、大浦るかこ、日ノ隈らんと、所属タレントが次々にコロナウイルスに罹患してしまった発表され、これがチケット販売に大きな影響を与えたのだろう。
そこから年が明け2023年にはいると、高い人気を誇っていた小森めとがぶいすぽっ!へと移籍、彼女が所属していたブイアパは解散。先述したように、その2か月後には残った全グループ・全所属タレントが統合され、大きな再編を迎えることになったのだ。