『Spotify』が大幅なUI刷新やAI DJなどを行った背景は? 『Stream On』の発表内容から読み解く

『Stream On』の発表から読み解けること

Spotifyが狙うのは“ペイウォール”の形成? 購読者限定コンテンツがもたらす三方良し

 広告関連でいえば、「Patreonとの提携」は大きなポイントだ。「Patreon」はクリエイターが支援者を集うことができるプラットフォームで、クリエイターはパトロンになってもらった支援者に対して限定コンテンツの配信などのリターンを返すことができるというもの。言うなればクラウドファンディングや、ファンクラブのシステムに近いものだ。

 Spotifyにしては珍しい取り組みともいえるが、似たような事例は過去にもあったという。

「これも最近のアップデート内容にはなりますが、SpotifyもNFTの所有者だけが聴けるプレイリストをテストしていたりはするんです。ただ、今回のようにどこかのサービスと手を組む例は珍しいですね。NFTの例も今回の「Patreon」に近いと感じたのですが、おそらくSpotifyは対価を支払った人とアーティストがより濃いやり取りを行える、といった取り組みに関心があるのではないでしょうか」

 また、追加の金銭によってアーティストを支援することができ、限定コンテンツにアクセスできる仕組みはまさしく三方良しを生みだすものであると、ジェイ氏も肯定的だ。

「追加でいくらかの金額を支払うことでその人たちだけが聴ける楽曲があったり、先行で聴けたりといった体験ができる仕組みができれば、アーティストやクリエイターはそこでマネタイズができます。応援したいファンも喜んでそこにお金を投じるでしょうし、Spotifyにとっても収入になりますから誰にとってもWIN-WINだと思いますよ」

 また、こうした「Patreon」との連携、NFT所有者限定のプレイリストのテストなどを踏まえ、これらは「ここでしか見られないコンテンツ」を作り上げるための取り組みなのではないか、とジェイ氏は分析する。

「これは私の予想ですが、いずれはSpotifyのなかに“ペイウォール”(有料購読者専用のコンテンツ)を作りたいんじゃないかな、と。そうした時に、ユーザーがどれだけ寄付をするか、購読するかというのを検討するためにPatreonやShopifyの施策を推進しているのではないでしょうか。実際、購読した人はオーディオブックが先行で聴けます、とか特別なPodcastが聴けますとか、そういった取り組みはすでにPatreonではおこなわれていることですからね」

 発表されたアップデートについて、Spotifyが過去におこなってきた取り組みを踏まえて解説をしてくれたジェイ氏。最後に、今後の期待について話を聞いた。

「今後、アーティストやレコード会社、マネージャーの多くの方たち人たちが試行錯誤をしたり、頭の切り替えをしていったりすると思うんですよ。そして、今回追加されたアップデートや機能を活用するクリエイターが増えていくと思います。なので、今後クリエイターの方々が何をするのか、レーベルやマネージャーがどのように動いていくのか、非常に楽しみにしています」

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