ニンテンドー3DSのe-Shopが3月28日で終了 立体視とコミュニケーションに見るその先見性

『3DS』向けe-Shop終了に寄せて

 ニンテンドー3DSシリーズのダウンロードソフト販売ポータル「ニンテンドーeショップ」が3月28日にサービスを終えることとなった。同日午前9時にて、ソフトウェアの購入や追加コンテンツ・ゲーム内アイテムの購入が不可能になる。ここでは、『ニンテンドー3DS』の魅力を振り返りながら、改めてその先見性について考えてみたい。

 『ニンテンドー3DS(3DS)』はニンテンドーDSの後継機として2010年に発表、2011年の2月に発売された。その後より大きなディスプレイを搭載した「ニンテンドー3DS LL」や立体視の機能をオミットした『ニンテンドー2DS』などの機種も発売され、2014年には上位モデルの『Newニンテンドー3DS』・『Newニンテンドー3DS LL』、2017年には『Newニンテンドー2DS LL』が発売されるなど、長きに渡りブラッシュアップとアップデートを重ねてきたモデルだ。

https://www.nintendo.co.jp/hardware/3dsseries/index.htmlより

 『ニンテンドー3DS』発表当時の最大のウリは、「裸眼で3D映像が楽しめる」というところにあった。特殊なゴーグルを掛けずとも、手で持ってそのままプレイしているゲームが3Dで楽しめる、という体験には大きなインパクトがあった。本体に内蔵された3Dカメラも、この機能をより楽しむために実装されたものだろう。3D映像機能が必要ないゲームも多々リリースされ、ニンテンドー自身が立体映像描写機能のない「2DS」を発売するなど、この3D機能が興行的に成功していたのかはわからないものの、インパクトがあったことは間違いなく、いま見ても驚かされる。

 また、3DSは単なるゲーム機としてだけではなく、コミュニケーションツールとして使われることが想定されていた。特にはじめから入っているソフトの「顔シューティング」は、家族や友人の顔を3DSで撮影してシューティングゲームを行うソフトで、3D技術とコミュニケーションをいずれも促進するようなツールだといえるだろう。

 翌年、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現・ソニー・インタラクティブエンタテインメント)はPSPの後継機種として『PlayStation VITA(PS Vita)』を発売した。最初期のPS Vitaには3G対応モデルがあり、SIMカードを挿入すればどこでもインターネットに接続することができた。任天堂もソニーも、携帯ゲーム機が持つポータブル・マルチメディア・デバイスとしての可能性をさらに発展させようと苦心していたように思う。

注:写真の『PS Vita』は後期型で、SIMカードスロットは非搭載。

 ちなみにニンテンドー3DSが発売された2010年というのはAppleの『iPad』が初めて発表された年であり、iPhoneだと『iPhone 4』が発売された年である。iPhone 4は高解像度な「Retinaディスプレイ」を採用しており、小さな筐体に高精細な画面が搭載されたことは話題になった。スマートフォン・タブレットに代表される小型のスマートデバイスはここからの10年で大きく飛躍し、「スマホアプリ」が前述した携帯ゲームの市場に大きく食い込んできたのだ。ソニーは2019年にPS Vitaの出荷終了を発表。以後ソニーは携帯ゲームの市場から完全に撤退した。また同年任天堂は『Nintendo Switch Lite』を発表。翌年2020年9月に3DS全シリーズの生産終了をアナウンスした。

 ゲーム機がコミュニケーションツールになる未来を提案した2社だったが、その後スマートフォンというコミュニケーションツールが大きく発展し、ゲームのプラットフォームになってしまった。小型デジタルカメラなどにも似た形で、「携帯ゲーム機」という製品ジャンルは衰退していったのだ。

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