『Weekly Virtual News』(2023年3月20日号)
774inc.グループ統合や、VRChat公式パートナー企業の相次ぐ登場。年度末に向けた“新体制”構築の動き
774inc.がグループ統合。『ななしいんく』という”大きなハコ”がもたらすものとは
『有閑喫茶あにまーれ』『ハニーストラップ』『シュガーリリック』『緋翼のクロスピース』の4グループ、今年1月解散となった『ブイアパ』も含めれば5グループを運営してきたVTuber事務所『774inc.』が、3月19日に大きな決断を下した。これまで展開していたグループを全て統合し、ソロタレントを含めて全員を単独の事務所『ななしいんく』所属とすることを発表したのだ。
特色も強く出ていたグループ分けを解除することで、各タレントのより自由な活動を後押しすることが目的、とのことだ。
『774inc.』は、個性もチャンネル登録者数も一定値以上を確保したタレントを多く有する事務所であり、業界内でも5本の指に入り得る実力派である。そして、VTuber業界では細かなグループ分けよりも、「ひとつの大きなハコ」を用意し、運営する流れが強い。
『774inc.』改め『ななしいんく』も、この流れに乗ってきたということだろうか。年度末の大きな体制変更が、来年度にどう作用するか注視したいところだ。
VRChat公式パートナー企業が相次いで誕生。理解者によるメタバースへの道案内が加速するか
メタバース方面では、『VRChat』の公式パートナー企業の登場が続いている。3月16日には、映像制作会社のイアリンジャパンが、VRChat社との正式なパートナー契約の締結を発表した。
CMだけでなく、VTuberの関連映像制作も手掛けているイアリンジャパンだが、一方ではIPプロジェクト『GBXD』も展開しており、ここからVRChat向けアバターをいくつか展開している。そして昨年にはワコムのアートイベントに合わせてVRChatワールドも制作しており、VRChatを軸にした展開を続けている。イアリンジャパンはパートナー契約に加え、VRChatで活動するクリエイターを迎えたクリエイティブチーム「MIGIRI」も設立しており、より魅力的な体験創造へ大きく一歩を踏み出している。
イアリンジャパンだけでなく、今月には株式会社往来もVRChat公式パートナー企業となったことを発表している。両企業とも、VRChatでの一定実績を積んでおり、その内容も理解度の高いものになっている。「コミュニティの理解者が、コミュニティと外をつなぐ存在になる」という文脈のもと、今後さらに公式パートナー企業が増える可能性もあるだろう。熱気とカオス渦巻くVRChat界隈に、ひとつの転機が訪れる一年になるかもしれない。
また、日本VR学会が主催している学生コンペ「IVRC(Interverse Virtual Reality Challenge)」でも、2023年度からメタバース部門が設立されることが発表された。長い歴史を持つ学生のVR・インタラクティブ作品コンペにも、メタバースの流れが来たことは象徴的だろう。キックオフイベントには様々な現役クリエイターも登壇しており、コミュニティの理解者による伝導がなされるかもしれない。