aespaに異世界アイドル……王道の浸透により邪道が存在を示すバーチャルアイドル×K-POPの変遷と可能性

バーチャルアイドル×K-POPの変遷と可能性

王道の浸透により邪道が存在感を示し始めた

 先述のAIバーチャルアイドル達とは異なる「バーチャル的」なアプローチで注目を受けるのが、有名YouTuberの우왁굳(ウワクグッド)によるTwitchストリーマー育成オーディション番組を通じて誕生した異世界アイドルだ。アイネ、ジンバーガー、リルパ、ズルル、ゴセグ、ヴィチャンの6人による異世界アイドルは主にVRChatで活動しており、デビュー曲「RE:WIND」のMVもVRChat上で撮影されている。外見がCGによるバーチャルキャラクターなだけでいわゆる「中の人」がいるVTuberに近い存在というのが、先述のバーチャルアイドルたちとは大きく異なる点だ。作曲、編曲など専門性が必要な分野には該当分野に詳しいファンが製作に参加するという、まさに“ファンの手によって作られるアイドル”という部分も特異的と言えるだろう。2枚目のシングル『겨울봄』は韓国の最大手音源配信サービスMelOnのTOP100で36位・リアルタイム14位・デイリー137位、Gaonではデジタル総合85位、DLでは週刊1位と、3次元の新人アイドルと比較しても中々の好成績を残している。

[MV] 少女リバース(GIRL'S RE:VERSE )_ I Promise (Full Ver.) [日本語字幕]

 異世界アイドルと近いのが、ABEMAで開催中のバーチャルアイドルデビューをかけたサバイバル番組『少女リバース』だ。現実世界を生きる30名のK-POPアイドル(少女X)たちがバーチャル少女(少女V)として仮想空間(異世界W)に召喚され、新たにバーチャルアイドルグループとしてのデビューを目指すサバイバル番組で、視聴者投票などが審査結果に反映され、途中脱落となった少女Vは現実世界の正体を公表していくという展開が特徴。カカオエンターテイメントが主催の今回サバイバルは当初アバターの著作権問題などで開催が遅れたものの、現在は最終デビュー組5人が決まる佳境を迎えている。

 サイバーコリア21政策など、アジア圏ではいち早くインターネットやコンピューター関連事業支援を進めてきた韓国では1998年に国産バーチャル歌手第一号と言われるアダム、続くシア、サイダーといったCGIのルックスを持つバーチャルシンガー(当時はサイバー歌手と呼ばれていた)が存在していた。そこから20年、グラフィック・クラウド・VRなどの技術面が発展したのに加えて、新型コロナウイルス感染症がバーチャルシンガーの発展に大きな影響を及ぼしたことは否めないだろう。海外を含むオフライン公演の舞台がますます減った状況下で、オンライン公演の需要が増え、非接触文化とメタバースのトレンドがK-POP文化と融合し、韓国の大衆音楽・K-POPを牽引してきたアイドル系の芸能事務所だけではなくゲーム系やCG製作系の「異業種」からもアイドルが誕生するようになっている。アイドル以外でもAIウサギシンガーのAPOKIやバーチャルバンドの402号など、リアルの音楽番組に出演するバーチャルシンガーなども登場している。

 日本ではボーカロイドやアニメ・ゲーム、VTuberといった二次元系のカルチャーから発展してきた「非実在系アイドル」だが、それらとはまた異なる流れからの発展と融合を見せようとしているのが、K-POP系バーチャルアイドルの現在と言えるだろう。

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