『PSO2』10周年&「PSO」35周年記念 懐かしの楽曲も登場したコンサート『シンパシー2023』レポ

「PSO」周年記念コンサート取材レポ

 昼公演の終幕後、サウンドディレクターの小林氏は各メディアからのインタビューを受け付けていた。編集部では今回の公演におけるこだわりや選曲について聞くことができたので、ここからはインタビュー内容をお届けしていこう。

──『NGS』から『ファンタシースター』シリーズを体験したファン向けに、プロフィールをお聞かせください。

小林秀聡氏(以下、小林):セガに1998年に入社しまして、2000年に発売された『ファンタシースターオンライン』からシリーズのサウンドを担当しております。現在はサウンドディレクターという立場でもあり、今回の公演では選曲を含む楽曲の準備全般に携わっております。

──『PSO2』10周年と「ファンタシースター」シリーズの35周年、ふたつの節目が重なって実現したコンサートだったのでしょうか。

小林氏:じつは『シンパシー』自体も10周年を迎えているうえに、天野さんと東京フィルハーモニー交響楽団には『シンパシー2013』から10年にわたって演奏してもらっているので、そのときに演奏してもらった楽曲を10年ぶりに再演してもらった曲もあります。

──オーチャードホールでの『シンパシー』公演は2度目とのことですが、東京フィルハーモニー交響楽団の本拠地ということもあって、素晴らしい音響の中でコンサートを聞くことができました。

小林氏:オーチャードホールでの開催時には「自分の曲がすごくかっこよく聞こえる!」と感動しました。また『シンパシー』では、打ち込み音源が流れるなかでオーケストラが合わせて演奏する、という生演奏において非常に難しい演奏をしてもらっています。

──今回の曲目の多くは小林さんが決めたとお聞きしましたが、選曲の基準などについてお聞かせください。

小林氏:第一部の「Phantasy Star Medley for Sympathy」は、10年前に初演してもらって以来ずっとやっていなかったので、シリーズ35周年を振り返るためにも、今回の曲目へ入れることになりました。

──第一部の前半はシリーズ作に思いを巡らせ、後半は『PSO2』の記憶が呼び起こされるような流れになっていましたね。

小林氏:そうですね。今回もっとも時間をかけた選曲は、第一部全体でした。1曲目の「Phantasy Star Online OPENING THEME ~The whole new world~」は、毎回の『シンパシー』で演奏するのが定番となっているのですが、4曲目以降は『PSO2』初期のテーマ曲に加えて、『PSO2』関連のタイトルではない作品の楽曲も入れていきました。ほかには『シンパシー2021』でのアンケートにおける人気が高かった曲を選びつつ、「歌唱がついてほしい楽曲アンケート」で選ばれた楽曲など、第一部にはさまざまな要素が詰まったこともあり、最終的なセットリストの形成まで時間がかかりました。

──その一方で第三部は『NGS』の楽曲だけで構成されていたのは、どういった経緯からなのでしょうか。

小林氏:第三部を『NGS』楽曲のみで作ることは最初から決まっていました。むしろ第三部のコンセプトが固まっていたことによって、第一部はバリエーション豊かな内容にしよう、ということになりました。

──ライブパートである第二部に関してはいかがでしょうか。

小林氏:個人的に感慨深かったのが「Living Universe」、「Ignite Infinity」の演奏でした。私が自分で10年以上前に作った曲でもあり、「Living Universe」は制作当時のボーカルであるエイミーさんに歌ってもらうことができ、「Ignite Infinity」は『シンパシー2015』から8年ぶりにをアネットさんに歌ってもらうことができたので、一番グッと来た瞬間でしたね。

──そんななか、第二部のラストは近年の楽曲である「戦いの歌 ~Against fate~」が演奏されていましたね。

小林氏:第二部は前半から後半にかけて、シリーズの過去から現在までの流れを追えるように楽曲を選んでいきました。『ファンタシースター』全体を含め、『PSO2』は年数の経過に応じて雰囲気が大きく変わっていくのですが、そこに合わせて音楽も変えていくことになりました。そしてこれまでの『ファンタシースター』のボーカル曲にジャズが取り入れられたことがなかったので、『NGS』ではゲーム開発側からも音楽をジャズにしたいという要望がありました。

──「戦いの歌 ~Against fate~」がジャズだったのは、開発陣からの声を反映した結果でもあると。

小林氏:そうですね。ですが、音楽をジャズ一辺倒にはせず、『PSO2』の流れをくむようなSF要素も出したく、シンセサイザーの音を入れたりもしています。

──そこから続く楽曲は、ほとんどがメドレーとなっていましたが、どういった理由から今回の形式になったのでしょうか。

小林氏:もともと各曲の時間は長めだったので、それぞれ独立した曲として演奏することもできたのですが、「『NGS』に登場している4つの地域の音楽をすべて聞いてもらいたい」という思いから楽曲をメドレーにして、地域ごとにまとめることになりました。今回は原曲の良さを損なわないように2、3曲のメドレーで尺を調整して、各地域を表現しています。

──最後の楽曲についてもファンを意識して選んだ部分が多そうですね。

小林氏:コンサートの公演時に最新のボス戦である曲を聞いてもらいたかったので、その2曲をメドレー「Dark Falz - Second Invasion ~ Meteorn’s Song」としてお送りすることにしましたなりましたのと、アンコールには前回も演奏した「Thank you」を演奏しました。ただゲーム本編では「Thank you」の後「The whole new world - Short Version -」と楽曲がつながっており、「シンパシー2021」でもそのように演奏したのですが、今回は『NGS』OPテーマである「A World Beyond The Sky」を最後に持ってくることで、前回のコンサートから変化もつけてみました。

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