糸田屯が選ぶ、2022年のゲーム音楽配信リリース作品10選

『SPELLJAMS』

 

 2022年は『マジック:ザ・ギャザリング』だけでなく、テーブルトークRPGの代表格『ダンジョンズ&ドラゴンズ』も公式サウンドトラックを発表した。本作は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第5版のキャンペーンとして2022年8月に発売された『Spelljammer: Adventures in Space』のサウンドトラック。公式の音楽アルバム(ビデオゲーム版のサウンドトラックを除く)としては、2003年の『Dungeons & Dragons - Official Roleplaying Soundtrack』以来、約19年ぶり(!)となったことも見逃せないポイントだろう。

 ポートランドのインディー・ロック・バンド The Decemberistsのギタリストであり、熱心なD&Dプレイヤーであるクリス・ファンクがプロデュースを手がけ、バンド/ミュージシャンに参加を呼びかけ、最終的にアルバム2枚分におよぶコンピレーションアルバムに仕上げていった。エレクトロポップ、ガレージ・ロック、サイケデリック・ロック、フォーク、ヒップホップ、ヘヴィ・メタル、実験音楽まで幅広く網羅しており、ゲームセッション用音楽のみならず、インディー・ロックのコンピレーションとしても刺激的な内容だ。本アルバムのより詳しい内容や、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のこれまでのサウンドトラック作品についてはこちらの記事を参照いただきたい。

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『NeverAwake Original Sound Tracks』

 

 2Dファンタジック・シューティング『VRITRA』『VRITRA HEXA』を手がけた株式会社ネオトロの最新作『NeverAwake』は、目を覚まさない少女レムが見続ける悪夢の中の世界が舞台の、全方位ツインスティックシューター。コンポーザーは『VRITRA』シリーズや『GRAND CROSS: ReNOVATION』(開発:Eternal Sphere4)などの音楽を手がけ、さまざまな音楽要素を吸収したロック・バンド・プロジェクト PURE SONIC MANIFESTOのギタリストとしても活動を展開する植草史仁。

 愁いを帯びたメインテーマ「Sleeping Bloom」のメロディモチーフを随所に散りばめ、ドリーミーなエレクトロ/シンセフレーズと、タイトなビート/ロックサウンドがせめぎ合う。シリアスに寄りすぎることなく、ミステリアスでありながらどこか暖かみを感じさせる楽曲が、確固たる統一感と聴きごたえを生み出している。なお、植草によるサウンドトラック全曲解説がnoteで公開されており【 https://note.com/uekusa/n/n25ba2f5b9cd4 】、ぜひとも一読をすすめたい。2023年1月19日にはNintendo Switch/PlayStation4向けパッケージ版の発売を控えており、限定版(プレミアムエディション)に同梱のサウンドトラックCDには、ヨナオケイシによるアレンジトラックも収録されるとのこと。

『WaveTale Original Game Soundtrack』

 

 スウェーデンのThunderful Development開発による『WaveTale』は、滅亡に瀕したストランドヴィル諸島を舞台に、少女シグリッドが海に沈みかけた街の水面を駆け抜け、海中に隠された秘密を解明してゆくストーリー重視のアクション・アドベンチャー。Zoink Games開発の3Dアクションゲーム『Fe』や、VRパズルゲーム『Ghost Giant』の音楽で絶賛を浴びたコンポーザー/マルチインストゥルメンタリストのジョエル・ビレ(サイケデリック・フォーク・ロック・バンド De Stora Hattarnaのメンバーでもある)は本作において、まさに雄大な波のうねりを思わせる趣の音楽をつくりあげてみせた。

 フリューゲルホルン、フルート、マリンバ、ヴァイオリン、ヴィオラ、アコースティック・ギターからなる室内楽アンサンブルを大々的にフィーチャーし、ネオ・クラシカルやフォークトロニカの色合いにも富んだ楽曲は、キャラクターの感情を余すところなく包み込み、ゲームの自由なリズムとも自然な形でシンクロしてゆく。重厚かつ甘やかな低音の響きもさることながら、「At the Plaza」や「Between The Fog」などの楽曲ではリズムセクションやエレクトロビートも交えたダイナミックで胸躍る展開も登場。オーガニックで鮮やかな音のコントラストが静かな感動を呼び起こす。

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