連載:現実から仮想まで。建築家・水谷元と巡る建築探訪記 第1回
『ドラゴンクエストX』好きの建築家が「アストルティア」の都市と建築について本気で考察してみた
現実、仮想を問わず建造物という存在は空間を構成する大きな要素となっている。例えば現実における「駅」や「ビル」はランドマークともなり、そこを起点とした人々の営みなども生じ、都市空間を彩ってくれる。ゲームやアニメ、映画でも建築物がストーリーを語る上で、あるいはプレイヤーが没入するのになくてはならない要素となる。現役建築家が現実、仮想の建造物や都市空間について語る。
ゲームの世界はプレイヤー(以下、冒険者)に没入感を与えるために様々な工夫が見られる。特に村・町・城は、まるで本当にそこに存在しているかのような感覚を冒険者に与えるために、キャラクターたちが生き生きと暮らしているかのような風景が必要になる。DQXの世界であるアストルティアには様々な村・町・城と城下町が存在し、種族ごとに異なった文化やアイデンティティを表現するために、それぞれに装飾など独自の言語で構成されたまち並みが広がっている。今回は五種族の中の「プクリポ」が暮らす「プクランド大陸」に位置する「オルフェアの町」をご紹介する。
オルフェアの町は東西に伸びる町である。西側にはアストルティア五大陸を繋ぐ大陸間鉄道である「大地の箱舟」の駅が位置し、ここが玄関口となる。サーカステントの設置されている中央の広場が駅前広場と東側の広場を繋いでいる。
プクリポは笑いと夢に生きる花の民という設定で、どの村も町もポップで柔らかい印象の彩色で構成され、オルフェアのまち並みを構成する建物の装飾や街灯や塀には、花や洋菓子のモチーフが用いられている。プクリポは五種族の中で最も小さく、手足も短いため、家具やストリートファニチャーも小さく低くデザインされている。
オルフェアの地形は西側から東側にかけて低くなっている高低差のある町。駅前広場とサーカステントのある広場の間にはアストルティア全体に流れる「光の河」が流れており、光の河に掛かる橋にも洋菓子のモチーフで手すりがデザインされている。
駅前広場のある西側の丘の下には地下道が整備されている。地上と異なり、明るい雰囲気はなく、薄暗い空間。ドラゴンクエストでお馴染みの酒場もここにあり、冒険者が利用のために行き来する。薄暗い地下道を酒場の雰囲気が少し明るくしてくれている。現実の世界でいえば、ここの酒場は薄暗い路地裏の赤提灯のような存在だろうか。
集落の風景を構成する民家やお店は丸みを帯びていて、イタリアのアルベロベッロの集落を思い起こす。屋根はオルフェア周辺で採掘される石材を利用したスレート葺きだろうか……屋根の棟(屋根の頂点)は金属で納めている。街灯のデザインは花の蕾や果実をモチーフにしたのだろうか。今回は筆者自身がお気に入りの種族である「プクリポ」の暮らす「プクランド大陸」の町、「オルフェアの町」をご紹介した。他の五種族は現実世界のモチーフがどこかしら街並みに踏襲されている気がするが、プクリポはDQX完全オリジナルの種族であり、他の五種族に比べて人間と動物の中間のようなデザイン。五大陸の中でも、プクランド大陸の街並みは大陸で生活をするプクリポの世界観を表現するための工夫が最も感じられる。
小ネタだが、3D表現になってからの「ドラゴンクエスト」シリーズでは、内外部をつなぐ玄関扉などは内にも外にも開く。現実世界の一般的な外部開口部では、雨が振り込んだり、閉めている時にしっかりと止水するために外開きになっている。3D表現になってからドラゴンクエストをプレイした時、パタパタと羽のように動く扉は筆者の最初の違和感だった…。
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