AI作画とアナログ作画の融合漫画『僕の彼女はAI作画』はどのようにして作られた? 作者に聞く「AIから発想の刺激を受ける」適切な距離感
40代になり漫画制作を再開
――普段どのように制作活動を行っているのですか?
えいち:若いころ、「漫画家になりたい」という気持ちからオリジナルの漫画を精力的に描いていました。ただ、20代で「自分は漫画を生業にして生きていくのは難しそう」という気持ちになり、趣味として漫画を描く方向に移行したんです。その後、LINEスタンプの作成など、漫画以外の創作活動を色々とするようになりました。
――最近、再び漫画を描くようになったのですね。
えいち:そうです。40代になっても気ままに趣味の創作活動をやっていました。ただ、つい最近漫画家をやっている弟夫婦から、「アシスタントをしてほしい」と頼まれたのです。漫画制作を手伝っている時、「あれ? まだ全然漫画を描けるんじゃないか?」と気付き、「またオリジナルの漫画を描いてみたい」という気持ちが湧いてきました。実は『僕の彼女はAI作画』はオリジナル漫画制作の復帰作です。
海外からも反響が
――復帰作となった『僕の彼女はAI作画』を制作した経緯を教えてください。
えいち:以前からAIで画像生成するサービスをいろいろ試しており、「これを使って何か漫画が描けないかな」と考えていました。そんな中、「AIで作ったキャラクターがラーメンを上手く食べられない」という絵がSNSで流行っていたので、「これを取り入れてみたら面白いかも」と突然閃きました。
――どのようにアイデアを膨らませたのですか?
えいち:いまのAIでは同一キャラクターを何度も生成するのが難しいと言われています。しかし、このアイデアなら特徴がだいたい同じキャラクターを生成すれば問題ありません。むしろ、「登場する度にキャラの特徴にズレがあったほうが良いネタになる」と思いました。一応、漫画家の弟夫婦にネームを見せたらめちゃくちゃウケてくれたので、「これはいけるのでは?」と確信して本格的に作画に取りかかりました。
――Twitter上では大きな反響がありましたね。
えいち:とても驚きました。特に「AIで描いたキャラクターはラーメンを上手く食べられない」ということは日本語圏だけで通用するネタだと思っていたんですが、意外と海外の人にも面白がってもらえたことは意外でした。AIで画像を生成することが世界的にかなり注目されている現状、さらには漫画というメディアの強さを実感しました。
AI絵師の欠点は?
――今回AIの画像制作サービスとして“NovelAI”を使用していましたが、そのクオリティや実力はどのように感じましたか?
えいち:NovelAIは日本の漫画やアニメ、ゲーム系の画風のイラストの出力に強いと感じました。詳細な指定がなくてもばっちり決まったポーズのイラストを作りやすいです。全体的な色合い、構図のバランスなども一枚絵のイラストとしてしっかりしたものが生成できるのでとても驚きました。
――欠点などは見られましたか?
えいち:クールやカッコイイという印象よりも、愛らしさや可愛さを感じさせる格好やポーズ、表情に寄りやすいという特徴を感じました。実際、男性キャラクターを想定した指定をしても、若い女性のキャラクター寄りになることも珍しくなかったです。
――漫画内では「箸を使った作画が苦手」という指摘がありましたが、他にも苦手な表現はあるのですか?
えいち:漫画内でも箸の本数が多かったり、持ち方がおかしくなっていたように、道具を持つのが苦手みたいです。また、漫画の1ページ目でスクールバッグを持って歩いてくる画像を使っています。ただ、この姿を生成しようとしたら、カバンがとてつもなく巨大化したり、カバンを手で持っているはずなのに肩にカバンのベルトが出現したりなど、なかなかユニークな画像ができました。