AI作画とアナログ作画の融合漫画『僕の彼女はAI作画』はどのようにして作られた? 作者に聞く「AIから発想の刺激を受ける」適切な距離感
AI絵師ブームに思うこと
――ここ最近、SNS上にAIで制作した画像を投稿する動きが活発化しています。こういった傾向にクリエイターとしてどのように感じていますか?
えいち:特に危機感は抱いていません。むしろ、誰にでもアイディアさえあれば面白い作品が作れるので、AIを使った面白い作品が出てくることを楽しみにしています。また、この流れに乗って「人の手で絵を描く時の補助をしてくれるAI技術がたくさん出てきてくれないかな~」という期待感もあります。
――とはいえ、「お絵描き配信中の画面をスクショされ、AIに読み込ませてクリエイターよりも早く仕上げて投稿された」という問題も起きています。
えいち:このことが発覚した際、「いくらなんでもやっちゃ駄目な事でしょ」といった批判的な意見が多く出ました。つまり、「手で絵を描いている人を守りたい」という意識を持っている人が多いことがわかり、とても安心感を覚えました。
また、新しい技術が出てきた時、その技術を使うことで生じる悪事は、行う人が必ず出てきてしまうもの、と考えています。AIによる生成技術を規制するよりも、AIの技術による何らかの被害があった場合にはすぐに訴え出ることができ、そのうえで問題のある画像を削除したり、投稿者へのペナルティを課したりなど、迅速に行えるシステムを整備されると良いのではないでしょうか。
AI画像というジャンルの確率
――規制に関しては、ドワンゴはニコニコにおいて、「生成物をそのまま投稿して収益を得ることはNG 」という基準を表明しました。この対応についてはどのように感じましたか?
(参照:ニコニコインフォ 【10/19追記】AIを利用した作品のクリエイター奨励プログラム・作品収入の奨励金付与について)
えいち:作品から収益を得られる投稿サービスでは、質より量を投稿する作戦で利益を上げようとする人が出てきてしまいます。プログラムで自動的に生成と投稿が簡単にできてしまうAI画像の投稿に対して制限をかけるのは当然です。
しかし、「AIの作った作品だからと世の中から完全排除をする」というのも、せっかく生まれた新しい技術を使ったり成果物に触れたりする機会を奪うことになるため、慎重に対応しなければいけません。
――どういった対応が良いのでしょうか?
えいち:pixivではAI作品だけのランキングが創設されたり、AI生成作品専用投稿サイト・chichi-pui(ちちぷい)ができたりなど、AIで生成した画像を新しいジャンルとして独立させる動きが出てきています。規制を設けることも大切ですが、AI作品というジャンルを確立させる流れが加速すれば、良い方向に落ち着いたのではないでしょうか。
人の手とAIの二人三脚
――AI時代においてクリエイターにはどういった価値観が求められると思いますか?
えいち:AIが話題になったここ数ヶ月、AI生成画像をいろいろと見てきました。その中には「この色の使い方は上手い」「この塗り方を真似してみたい」「モチーフの組み合わせ方の発想に人間のような先入観がない」と思えるような、「自分の作品に積極的に取り入れていきたい」と思える画像がたくさんありました。
AIに任せる比率を高めの設定でテキストから画像を生成すると、「その発想はなかった!」と思えるとんでもない画像ができ、思わぬ刺激になったりもします。“自分の中から出てこない発想をもらう”という使い方で重宝できそうです。人の手とAIと二人三脚で、むしろ「AIから良いとこ取りをしてやる!」くらいの気持ちで自分の作品を作れるようになっていくのが一番だと思います。
――人の手とAIと二人三脚したえいちさんの今後の作品が楽しみになりました。
えいち:今回『僕の彼女はAI作画』を制作する中で、実際に使用してとても面白かったこと、作品に使用して好意的な反応を得られたことなど、様々な発見がありました。「AI技術が新たな面白い作品を生み出すような方向に発展していくといいな」と思いますし、私自身もそういった作品を発表していきたいです。