『串カツ田中』がTikTokで“Z世代の来店”を急増させた理由とは? キーパーソンが語り合う「成功の秘訣」

『串カツ田中』のTikTokがZ世代に刺さった理由

チンチロリンに金魚テキーラ……Z世代に刺さるものをどう伝えていくか

ーー伊吹さんが先ほどお話していた“作り込まない”という言葉について、もう少し詳しく伺いたいです。

伊吹:伝えることが多すぎると、動画が成り立たないんです。ツッコミどころは多くするけど、伝えることは1つにするというのが、僕のなかのポリシー。TikTokは、綺麗な映像を撮ることが、バズることに直結するわけではないんです。ユーザー自身、作り込んだものを求めておらず、高校生の日常など、身近なものがバズる傾向にあるので。でも、その落とし込み方って、すごく難しいんですよね。企業さんの依頼だから、作り込まなきゃと思って自由に作れなくなってしまう子もいたり。誰もそこを求めてないというところまで作り込んでしまうこともあります。そこの理解をすぐにできるクリエイターって、なかなかいないんですよね。

ーーユーザーに近い環境のものの方が受け入れられる傾向があると。

伊吹:ただ、そこに関しては過渡期を迎えている印象もあります。普通に慣れてきてしまっているからこそ、スゴすぎる動画がバズることもある。今後は、まったく違う方向に転換していくのでは、と予想しています。

ーー今回の施策に関しては、投稿を2回に分けることで、認知拡大と来店促進のフェーズを分けていたんですよね?

奥原:はい。串カツ田中様の事前調査からZ世代の認知度が低いという結果が出ていたとのことだったので、まずは知ってもらうことに注力しました。こんなメニューがあり、楽しい店員さんがいるんだ……と分かったうえで、来店につながる施策を重ねた方がいいと思っていたので。

伊吹:認知から行動をさせるのって、すごく難しいですよね。クリエイターからしても、永遠の課題だと思っています。とくに、TikTokは簡単にスワイプできるし、王様気分で見られるのがいいんですよ。だからこそ、ファンにさせるのが大変ではあるのですが……。

ーーたしかに、動画単位でしか見ないから、その人のファンになるかどうかのハードルが高い。

伊吹:そうなんです。いまはライブ配信ができるようになったので、少しはラクになりましたが、60秒の動画だけでファンを作るのは、かなり難しい。なので、僕は認知を得てから、密接な行動をすることを心がけています。長時間の生配信をしたり、直接宣伝に出向いたり。

織田:客観的に見ても、今回のような施策は難しいだろうなと思っていました。ただ、現場のスタッフから、「TikTokを見て来ました」と言う人が増えていると聞いていたので、波が来ているぞ……と。お客様が、お店でTikTokを見ていることもあるようです。

伊吹:それは、うれしい! 僕がいちばん驚いたのは、1回目の動画を経て、2回目の撮影店舗をどこにするか? という話になった時に、「前の店舗がいい」と言うクリエイターが多かったことです。それって、『串カツ田中』で働いている店員さんが素敵だからこそですよね。

ーー具体的には、どれくらいの反応があったのでしょうか。

奥原:最初、800万回再生を目指そうというお話だったんですよね?

織田:そうでした。でも、2日くらいで超えましたし、串カツバケツの売上も204%増と大幅に効果を実感しました。

奥原:トータルでは再生回数2000万回を超え、いいね数も100万、コメント数約6000件という驚きのエンゲージメントとなりました。大きな特徴としては、第二弾の動画を投稿したとき、第一弾の投稿があらためて約200万回も再生されるといった反響もありました。また、クリエイターさんのなかの人気動画に、『串カツ田中』さんとのコラボ動画が入っていたり、投稿のタイミングを揃えることで、おすすめの投稿に上がることもできたんです。企業コラボとなるとPVが減ることが多いなか、本当にすごいなと思いました。コメント数が圧倒的に多かったのも、印象的です。そのおかげで、コメントを見ながら、第二弾の方針を見つけていくことができました。TikTokだけでなく、Twitterでも「最近、串カツ田中よく見ない?」と投稿されていたり。今回の施策と関係ない方が「串カツ田中行きました」という投稿をしただけで、バズっている方もいて。ユーザーを動かせている感覚がありましたね。

ーーそれも、TikTokのアルゴリズムの面白さですね。では、今回の施策を経て、さらに注力していきたいことはありますか?

伊吹:『串カツ田中』さんと組むことができたのが、今回の成功の要因だと思っています。お互いに、安心と信頼があるなかで、施策を行うことができたので。クリエイターとしては、どんどん新しいことに挑戦して行きたいと思っています。堅苦しいものはせずに、自由に。

奥原:こんなに自由にさせてくださる大企業さんって、なかなかいないですよね。また、このようなブームを作っていけたらうれしいです。

織田:『串カツ田中』は、これまでも“ファーストペンギン”として、リスクを恐れずに新たな挑戦をすることを心がけて来ました。そして今回、さまざまな方の協力により、魅力をより多くの方に知ってもらうきっかけができた。ただ、SNSは飛び道具としては大事ですが、サービスも重視していかなければならない。お店の雰囲気をさらに良くして、「また足を運びたい」と思ってもらえるような『串カツ田中』にしていきたいと思います。

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