PCエンジン35周年 周辺機器の拡張で進化し続けた長寿ゲームハード

PCエンジン35周年 周辺機器拡張による進化

 2022年10月30日は、PCエンジンの35周年記念日だ。本機はファミコンの寡占状態にあった家庭用ゲームの世界に一石を投じた機種であり、当時としては先進的な技術が多数盛り込まれていたことから、印象に残っているユーザーもいるだろう。今回はPCエンジンの35周年を機に、どのようなゲーム機だったのかを振り返ってみよう。

ハドソンとNECの共同開発により誕生

 PCエンジンは、1987年10月30日にNEC HEからリリースされた家庭用ゲーム機だ。「ボンバーマン」シリーズが有名なハドソンと、日本電気ホームエレクトロニクス(NEC)の共同開発により生まれた。ファミコンに比べるとややマイナーな印象もあるが、PCエンジンからリリースされたタイトルの総数は658本にものぼる。また、世界で約1000万台以上を売り上げた実績もあるハードだ。

 本機はファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)の発売からおよそ4年後にリリースされた。当時ファミコン一強だったゲーム業界では、その牙城を崩すべくさまざまなメーカーが家庭用ゲーム機を開発しており、PCエンジンもそのひとつといえる。

 ソフトウェアメーカーのハドソンは、ファミコン向けのゲームソフトも多数リリースしており、一定の成功を収めていた。しかし、ハドソンの目指す表現を実現するには、現行機では性能の限界が見えていたという。そこで、ゲーム用のチップセットをセイコーエプソンと共同で開発。これをNECに持ち込むことで誕生したPCエンジンは、グラフィックス・サウンドの両面でファミコンを大きく上回る性能を誇った。

長期にわたる活躍 進化し続けた家庭用ゲーム機

 PCエンジンを一言で表すなら、「周辺機器の拡張によって進化し続けたゲーム機」である。

 そもそも、PCエンジン本体にはゲーム機として最小限の機能しか搭載されておらず、対応メディアもHuCARD(ヒューカード)と呼ばれるカートリッジのみだった。しかし、本機は「コア構想」という拡張思想に基づいて設計されており、さまざまな周辺機器を接続することでさらなる性能を発揮したのである。

 たとえば、1988年に発売された周辺機器「CD-ROM₂(シーディーロムロム)」をPCエンジンにドッキングすれば、従来のHuCARDに加え、CD-ROM形式のメディアを読み取れるようになった。CD-ROMは当時主流だったロムカセットと比較すると圧倒的に容量が大きく、滑らかなアニメーションや声優のアフレコによるボイスなどを採り入れたゲームが実現した。なお、このような光学ドライブを家庭用ゲーム機に搭載したのは、CD-ROM₂が初である。

 最先端の技術を盛り込んだCD-ROM₂はゲーマーにとって憧れの存在だった一方で、庶民には手の届かない品でもあった。CD-ROM₂はPCエンジンとセットで57,300円という、現在の水準から考えても高い価格で販売されており、バブルショックの最中にあった当時、購入できる人は少なかった。しかし、『天外魔境 ZIRIA』や『イース I』などのヒット作も生まれており、ゲーム機に予算をつぎ込めるマニアからは支持されていたようだ。

 その後、1991年にはCD-ROM₂の上位規格である「SUPER CD-ROM₂」がリリース。旧CD-ROM₂のウィークポイントだったロードの多さがある程度解決された。こちらのシステムは「PCエンジン本体にSUPER CD-ROM₂を装着する」「旧CD-ROM₂システムにスーパーシステムカードを挿入する」といった2通りの手段で導入することができ、PCエンジンの拡張性の高さを裏付けている。

 一方で、本体そのもののバリエーションも豊富で、前述したSUPER CD-ROM₂の機能を一体化させた「PCエンジン Duo」や携帯式の「PCエンジンGT」など、さまざまな姉妹機もリリースされていた。

 このような進化を辿ってきたPCエンジンは、最終的には計5種類もの規格のメディアに対応する稀有な家庭用ゲーム機に。また、コア構想に基づいた進化を続けることで、後発のスーパーファミコンとも競合するほど長きにわたって活躍することになった。

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