THE PRIMALSが再確認した“光の戦士”との絆 植松伸夫も登場した、4年ぶりの単独公演を振り返る

根底にある「一緒にゲームを作って一緒にゲームを楽しんでいるという感覚」

『THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow』に登場した植松伸夫(撮影=西槇太一、MASANORI FUJIKAWA)

——今回の大きなトピックとしては、植松伸夫さんのゲスト出演がありました。これは、いつくらいから考えていらしたのですか?

祖堅:ライブの2〜3カ月くらい前かな。植松さんがアルバムを出すという話は聞いていて、それを発表する場としてTHE PRIMALSのステージがいいんじゃないかと。そういうお話を植松さんに差し上げたら、「じゃあ前座でいいから出させてよ」って。前座じゃなくちゃんとした演目としてやりましょうと言ったんですが、ずっと「前座がいい」と言うんです。ワガママなおっちゃん状態で、これはちゃんと話をしに行かないといけないと思って(笑)、直接行って話をしたんです。『FFXIV』でも使われている曲を演目としてやっていただければ、プレイヤーがゲームを追体験できるので……といった説明をして。そこでやっと「そこまで言うならじゃあやるわ」と、折れてくれました(笑)。

——「師弟対面」といった感じで、2人でMCしている姿はアツかったです。

祖堅:いやあ、本当にみんなが喜んでくれていたので、僕もすごくうれしかったです。

たちばな:僕は海外のフェスでご一緒させていただいた時に、植松さんと少しお話をさせていただいたことがあって。すごく気さくな優しいなという印象の方なんですけど、その時もTHE PRIMALSのステージをずっと袖で観てくれていたので、出ていただけると決まった時はうれしかったですね。

——昔、植松さんを取材した時に、曲は探し出すものだと言っていました。頭の右上にもやがかかっていて、もやを取り除くと曲が出てくると。

祖堅:植松さんが自分の音楽観を通して、“『ファイナルファンタジー』の音楽はこういうものである”と自問自答して出した答えは、いくつか聞いたことがあります。たとえばわかりやすい話で言うと、「昨今のRPGや『ファイナルファンタジー』の音楽と言えばオーケストラといったイメージがあるけど、そうじゃなくて何でもアリなのが『ファイナルファンタジー』の音楽なんだよね。わかってると思うけど」って。そんな話を、酒を飲みながら聞いたことがちょいちょいあって。僕の考えとしては、「ファイナルファンタジー」シリーズの音楽は植松さんのものだと思っているので、そこははずせなくて。植松さんがつぶやいてくれたことを自分なりに咀嚼して、『FFXIV』というタイトルに落とし込んで、それをゲーム体験として消化したお客さんの思い出に火を付けるのが、我々THE PRIMALSである。そういう流れの中に、また植松さんが戻って来たのは、輪廻転生じゃないけど(笑)。ライブでのあの瞬間は、本当にやって来て良かったなと思いました。

——ゲームや音だけじゃなく、心や思いも、しっかり受け継がれているなと感じました。

祖堅:そうだったらいいなと思いながら、いつも模索しています。いまだにどれが正解かはわかりませんけど。別に教わったわけではないけど、会話のなかでいろいろなことを気づかせてくださるんですよ。

『THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow』の一幕(撮影=西槇太一、MASANORI FUJIKAWA)

——お客さんを信じることとか音楽を信じることが、続けていくためのモチベーションに繋がるとも言っていました。THE PRIMALSのライブを観ると、プレイヤーとの信頼関係の強さを感じて、そういう面でもしっかり受け継がれているなと。

祖堅:ありがとうございます。ゲームというエンターテインメントは世界最高のものだと思っているし、信じる信じないの以前に、僕は同じ趣味を持った人たちが集まっているわけだから、楽しくないわけがないじゃん! という気持ちです。それに『FFXIV』はこれまでに大失敗したこともあって、その時からプレイヤーのみんなと一緒にゲームを作って来たという感覚なんです。だからこのライブにおいても、来てくれたプレイヤーはずっと一緒に作ってきてくれた人だし、そこに新しく来てくれた人が融合してどんどん進化しているんだけど、根底にあるのは一緒にゲームを作って一緒にゲームを楽しんでいるという感覚なんです。だからこの空間で一緒にライブを楽しもうねという一体感が、普通のアーティストよりも全然強いんじゃないかなと思っています。

FINAL FANTASY XIV: Beyond the Shadow – Rise Music Video (THE PRIMALS)

——ゲームのプレイ体験という部分では、「ライズ 〜機工城アレキサンダー:天動編〜」での時間停止演出で、会場のお客さんも一緒に止まっていたのが壮観でした。ステージからはどんな風に観えましたか?

イワイ:実は観えていないんです(笑)。後ろを向いて止まっていたので。

たちばな:僕も観てない。

マイケル:僕も違うところを観ていたような気がする。

祖堅:俺もね、横を向いてるから観えてないの。

GUNN:ここで僕は観てましたと言うのはおかしいんだけど。

祖堅:GUNNさんは客席を観ていたよね。

GUNN:その上のほうを観ていたから。でもそこからの立ち上がりがテツさんのドラムで始まるんですけど、その一瞬だけ観れるんです。

たちばな:毎回僕から曲が再開するんだけど、なんか緊張するよね(笑)。

祖堅:我々が止まるのは、もともと演出として決まっているわけだけど、会場の皆が止まるのは、別に僕らから「やってね」と言ったわけじゃないんです。でもゲームではあの時報サウンドが鳴ると光の戦士は動けなくなるので、それを彼らはリアルで演じてくれていたわけですよ。同じ空間で同じ気持ちでいれていることの証だし、その時そこで起きたことを共有できているのは、ゲームならではのエンターテインメント性だなと思いますね。

——これは、誰がやり始めたんですか?

祖堅:韓国のライブじゃないかな?

コージ:「THE PRIMALSが時間停止したら俺たちも止まろう」って、インターネットに書き込んでくれた人がいて。

祖堅:しかもゲーム中のクエストモードと同じ紙を作って、会場の前でビラを配ってくれたんです。でも僕らはそんなことをやってくれていたなんて知らなかったから、最初は「やっちまった!」って思ったんです(笑)。

GUNN:びっくりしたよね。

祖堅:その前にドイツとか東京でやった時はウワ〜ッて盛り上がってくれていたのに、韓国ではシーンとしちゃって。さっきも言ったように僕らは客席を観ていないから、「何がどうなってるんだ?」って。

GUNN:「スベった!」って思ったよね(笑)。

関連記事