教育系YouTuber「ヨビノリ」 その魅力は授業動画以外にも?

 本チャンネルで最近増えてきているジャンルの動画が、「学術対談」である。このジャンルの動画では、ヨビノリたくみと主に現役の研究者がトークをする、という対談動画だ。コンセプトは「誰にでも分かるのではなく、分かるようになりたい動画」と公式HPに記載がある。実際に動画を見てみると、研究者の専門分野に関する難しい内容がたくさん話されていて、話している内容を全て理解するのは困難だろう。しかしこういった動画の魅力は、“「面白そう」だと感じられること”だと考える。専門分野のことに関して話してる時の研究者は、「この技術はこういう物に役立っていて、将来はこういうこともできるようになるだろう」ととても楽しそうに話をしている。そういった姿を見ると、「そんな面白そうな技術があるのか」や「そんな技術が開発されたら便利だな」とワクワクしてくる。

 

これが我々が住む銀河の中心にあるブラックホールだ!【学術対談】

 数回投稿されている「大型授業」も大きな魅力の1つだ。どういう意味で大型授業なのかというと、授業時間が通常の授業動画に比べて長いのだ。中には2時間を超える動画もある。普段の動画より長い時間の中で「中学数学からはじめる微分積分」や「数式なしでもしっかり学ぶ量子力学」といった1つの大きな単元を網羅する内容を学習することができる。この動画の大きな魅力は、予備知識がほぼいらないということだ。「微分積分」や「量子力学」というと、難しい数式を操る学問のようなイメージがあるが、この大型授業では、そういった予備知識をほぼ必要としない授業構成になっている。それにも関わらず難解な単元を理解できてしまうところが大型授業の魅力である。

中学数学からはじめる相対性理論

 また本チャンネルでは理系の高校単元を解説する動画も投稿している。大学の科目に必要な高校知識を補う、といったスタンスのようだが、最近はそうではない動画も投稿している。その中でも特に着目したいのが、前述した大型授業だ。「高校の力学を全部解説する授業【物理】」といった大型授業動画を物理の3分野において投稿している。特に力学解説の動画は、前後編合わせて14時間を超えるまさに「大型授業」だ。

高校の力学を全部解説する授業(前編)【物理】

 しかしよく考えてみると、高校の授業では1学期の大部分を力学の授業に当てている。そう考えると、14時間で力学の基礎を一通り学べるということは、かなりお得ではないだろうか。現在この大型授業は力学、熱力学、原子の3分野について投稿されているが、残りの波動、電磁気の分野についての動画も現在準備中となっており、今後投稿されることが予想できる。長い動画だからといって授業のクオリティが下がっているということは全くない。むしろ特に熱力学を全解説した動画では、大学で学ぶことも踏まえた作りがなされていると感じた。

 大学生向けの動画でも「〇〇入門」となっている動画は基本、高校修了レベルの知識があれば理解できる内容となっている。もし進路に悩んでいたり、理系の大学へ進学することが決まったがどんなことを学習するのかが不安だったりする学生は判断材料・予習として動画を見てみるのもいいかもしれない。

 高校生や大学1・2年生の理系科目を学習していると、この学問は何の役に立っているのだろうか、といった疑問を抱く人もいるかもしれない。本チャンネルでは、高校生であれば、大学生で学ぶ基礎的な内容、大学1・2年生であれば研究室に関わる動画など、自分も行うことになるかもしれない少し先の勉強がイメージできる。最終的には、対談動画などで実際に社会でどのように役になっているのかといった情報も得ることができるかもしれない。

 また本記事で紹介したどのジャンルの動画にも言える共通点として、授業や対談をしている際のヨビノリたくみや出演している研究者などがとても楽しそうだ。受動的に、作業のように勉強に取り組んできた学生や社会人にとってはこれはとても衝撃的なことかもしれない。しかし本チャンネルを見ると分かるように、楽しみながら学問に取り組んでいる人はたくさんいる。

 要は本チャンネルを見ると「視野」が広がるのだ。視野を広げると、自分の知っている知識に別の色が付く。自分の知っている知識で見えなかった景色が見えてくる。そういった気付きを与えてくれるのが、このチャンネルの最大の魅力だろう。

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