意外とわかっていないテクノロジー用語解説

最近よく聞く「VTuber」ってなに? バーチャルタレントの歴史を振り返る

 テクノロジーの世界で使われる言葉は日々変化するもの。近頃よく聞くようになった言葉や、すでに浸透しているけれど、意外とわかっていなかったりする言葉が、実はたくさんある。

 本連載はこうした用語の解説記事だ。第 20回は「VTuber(ブイチューバー)」について。YouTubeなどを中心に活動する配信者に使われる言葉だが、知らない人に向けて、この言葉の成立の背景について解説していこう。

 VTuberとは「Virtual YouTuber(バーチャルユーチューバー)」の略称で、CGで描かれたキャラクターの姿でYouTube配信を行うYouTuberのことを指す。ざっくりいえば「YouTuber(ユーチューバー)のバーチャル版」、というわけだ。キャラクターの姿には2D、3Dどちらのスタイルもあり、3Dゲームのキャラクターのように自在に動く者もいる。

 この言葉の意味するところは「CGの姿で活動するYouTuberである」というだけで、現在多数のタレントが活動するこの世界においてその定義は曖昧だ。「バーチャル世界に居ます」ということを公言するタレントもいれば、成人男性が外見と声を女性アバターの外見と声で配信していることも、それを明らかにしているケースもある。こうしたさまざまなキャラクター、タレントのことを指す広義の言葉として「VTuber」という言葉が便利に使われているという現状がある。

 近い言葉として「バーチャルライバー」というものもある。これは主にANYCOLOR株式会社が運営するバーチャルタレントグループ「にじさんじ」のタレントが名乗ったものであるが、現在では活動場所をYouTubeに限定せず、動画配信よりも生配信に軸足をおいたタレントが名乗る際に使われることが多い。

 そしてこれらのタレントを包括的に「バーチャルタレント」と呼称することもある。本記事では以後バーチャル世界で活躍するタレントを包括的に語る際にはこの語を用いることにする。

 VTuberを技術的側面から見ると、カメラによって人間の動作をトラッキングし、CGのキャラクターに反映させ、それを配信画面に合成するというものが多い。以前はモーショントラッキングというと専用の器具を使った大掛かりなものだったが、2014年にWebカメラで表情のトラッキングができる「FaceRig」が登場したことで、状況が大きく動く。

Animaze by Facerig「FaceRig Unveiling Video - English」より

 FaceRigはフェイストラッキングに加え、ある程度のモーショントラッキングも行えるソフトだが、動きを反映させるアバターとして3D CGだけでなく、「Live2D」で作成した2D CGにも対応する。Live2Dは3Dソフトを使わず、Photoshopなどの2Dグラフィックソフトだけで3次元的な動きを実現するソフトで、イラストの原画の風合いを生かしたままキャラクターが動かせる。それまでは2次元のキャラクターを3D化するとどうしても違和感が出てしまうものだったが、これを低減できたのが「Live2D」の大きな特徴だ。3Dのノウハウを持たないイラストレーターなどが比較的気軽に参入できるということもあって、日本で爆発的に人気を集めた。VTuberには3D CG、Live2Dの両方がいるが、Live2D派が多数派を占めているのはこうした背景もある。

Live2D「【Live2D】しずくの時間【iPhoneアプリ】」

 現在はスマートフォンでアバターを使った配信が行えるアプリも登場しており、さらに全身の骨格をAIが推測して、全身のリアルタイムなモーショントラッキングを実現する技術も登場しているため、技術的な障壁はさらに下がっている。「顔出し不要」で「匿名性」という安心感もあり、誰でもお手軽にバーチャルタレントとしての配信を行える素地が広がっていることが、VTuber人気をさらに高めているといえるだろう。

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