今夏はネコとキツネがアツい! 『Stray』と『エンドリング』から読み解く“アニマルゲーム”特有の奥深い魅力
ここ最近、可愛らしい猫が主役のアドベンチャーゲームが業界内で多大な注目を集めているのをご存知だろうか。件の『Stray』は7月19日にPS4/PS5版(PC版は7月20日リリース)が発売されるやいなや世界中で瞬く間に大流行、現在進行系で売上を大きく伸ばしている。
同作はPC版の同時接続者数が発売直後に5万人を上回ったほか、Twitter上には”同作のプレイ映像に興味を示す愛猫”の様子を収めたツイートが日夜溢れかえることに。ついには『Stray』関連の投稿をまとめた有志によるアカウントも誕生した次第だ。
The way she looks under the screen when he disappears though 😭 #Stray @CatsWatchStray pic.twitter.com/rtD4Yg7eBF
— Fuzz Pixels (@FuzzPixels) July 26, 2022
上記の通り大ヒットを叩き出した『Stray』ではあるが、動物を主役に捉えたゲーム作品がもう一本、奇しくも同じ日に発売されている。その名は『エンドリング - エクスティンクション イズ フォーエバー』(エンドリング)。こちらに主人公は一匹の母狐で、プレイヤーは子狐を世話しながら崩壊の危機に瀕した大地を巡っていく。『Stray』とジャンルや作風こそ違えど、”動物の視点を通して世界と向き合う”という点で両作品は共通しているように思われる。
そこで今回は、人間以外の動物が主人公を務める作品を「アニマルゲーム」と定義しつつ、『Stray』と『エンドリング』の特徴を踏まえながら同ジャンル特有の魅力について考えてみたい。
極端なまでに猫になりきり、猫の視点で世界を見つめる『Stray』
まずは『Stray』の基本情報をおさらいしよう。同作の舞台は、人間の代わりにロボットが生を謳歌しているサイバーシティ。プレイヤーは先の文明が滅んだポストアポカリプスの世界で暮らす猫となり、はぐれてしまった家族と合流するべく、街々を探索して脱出の糸口を見つけることになる。
サイバーパンク×アドベンチャーと言えば2020年に登場した『サイバーパンク2077』のような作風が想起されがちだが、『Stray』の場合は重厚長大と言うよりも、数時間のプレイで完結する短編アドベンチャーという印象だ。道中を進む上で幾つかのパズルを解く必要こそあれど、それらの難易度もそこまで高いものではなく、コンセプトはあくまでも”猫の視点で文明崩壊後の社会を眺める”ことにあると筆者は考える。
そして同作のウリとされているのが、徹底的なまでにゲーム内へ落とし込まれた猫のリアルな挙動。四肢の運び方や筋肉のしなやかな伸び縮みにはじまり、毛づくろいに爪とぎといったお馴染みの習性、睡眠時の休み方……等々、随所にいたるまで猫の所作が再現されている。それゆえ、プレイヤーは”猫という生物上の特性”を逸脱したアクションを行うことはできず、終始一貫、猫であることをゲーム側から義務付けられている。
猫の目線で街を歩き回り、往来するロボットたちの様子を眺め、人間では通れないような細道を猫の身体でスルスルと抜けていく……。主役の猫は超能力などを保有するわけでもない普通の猫。ゆえに”種を超越した立ち居振る舞いは行えない”という点は一種の縛りにも見受けられるが、この縛りがあるからこそ、かえって『Stray』は極端なまでに猫になりきることができる。
「猫が主人公」という新規性や単純に猫の可愛らしさも同作の魅力に含まれるが、本質的なテーマは「猫になることで世界に対する向き合い方の変化」や、人間とは異なる身体能力や不自由さからくる「猫であることの意味」にあるのではないだろうか。