『Nothing Phone(1)』がスケルトンデザインにこだわる理由 デザインケータイも挑戦した新しい切り口とは

『Nothing Phone(1)』がスケルトンデザインにこだわる理由

 ロンドンを拠点に展開するテック企業「Nothing(ナッシング)」は、同社初となるスマートフォン『Nothing Phone(1)』を発表した。日本では、2022年8月の発売を予定しており、販路は順次公開予定とのことだ。現在、オンラインストアにて、スペックはメモリ8GB+ストレージ256GBのみの取り扱い、カラーはブラックとホワイトの2色展開、価格は69,800円(税込)であることなどが確認できる。詳しい内容に関しては「Nothing」の公式サイトを見てほしい。

 本作最大の特徴は、背面の「スケルトンデザイン」にある。透き通った背面の奥には、独自に作られたパーツが並んでおり、高いデザイン性を感じさせる。緻密な内部構造は、ミラノ出身のデザイナー・マッシモ・ヴィネッリがデザインした、ニューヨークの地下鉄路線図からインスパイアされたものだ。2色展開のうち、ブラックからは重厚さを、ホワイトからは軽快さを感じられ、カラーによって全く違う表情を見せている。

 また背面は、ただ透けているわけではなく「Glyph Interface (グリフ インターフェース)」という機能を備えている。これは背面に搭載したLEDライトが、着信や各通知、バッテリーの残量などを光で伝えてくれる機能だ。スケルトンデザインのスマートフォンは昔から存在していたが、そこに実用性の観点から機能を加えたのは新しい試みといえる。

 そんな本作のスケルトンデザインに、懐かしさを感じている人は多いだろう。特に平成前後に生まれた世代は、ゲーム機などを通して、さまざまなスケルトンデザインに触れてきているはずだ。今でこそ、平成を代表する昔のデザイン、というイメージはあるが、当時はごくごく一般的なデザインとして愛されていた。

 「Nothing」は、昨今のスマートフォンデザインにおける画一化を打破するために、本作でスケルトンデザインを選んだ。一方、日本でも、ガラケー(フィーチャーフォン)デザインにおける画一化を打破するために、スケルトンデザインを選んだ製品が存在した。KDDIのブランド『iida』の第8弾として、2010年に登場したガラケー(フィーチャーフォン)『X-RAY(エックスレイ)』だ。

定番を崩すためのスケルトンデザイン

 『X-RAY』をデザインしたのは、日本を代表するデザイナー・吉岡徳仁だ。主にプロダクト製品を手がける吉岡の作品には、ガラスを用いた透明のデザインが多い。初期の代表作であり、パリ・オルセー美術館にも展示されているベンチ「Water Block」や、東京・六本木にパブリックアートとして展示されている「雨に消える椅子」なども、既存のモノを透明にしたデザインが特徴的だ。

 そして約12年前、吉岡が手がけたガラケー(フィーチャーフォン)『X-RAY』は、「透明なかたち」をコンセプトに作られた。ケースには、プラスチックとガラスを混ぜた新素材を使用。そこから見える内部構造もデザインし、各パーツを緻密に配置した。LEDライトを使ったサブディスプレイには、ドットのフォントが流れ、着信や各通知、時間といった情報を表示してくれる。

 偶然にも『Nothing Phone(1)』との共通点が多い。もちろん、完成品のデザインや機能は異なるが、似た問題意識を持ち、似た要素を持つ製品が、時代を超えて生まれたのは興味深い現象といえる。両者とも画一化の打破のために、スケルトンデザインを選んだのだ。

 その後『X-RAY』をはじめとするガラケー(フィーチャーフォン)は、スマートフォンの普及によって影を潜めていった。しかし、その個性的で目を引くデザインは、多くの人の記憶に残ったことだろう。保守的なデザインが増えた昨今の市場を見ていれば、いかにユニークな製品だったかがわかるはずだ。

 2014年にKDDIが発売したスマートフォン『Fx0』も、同じく吉岡がデザインを手がけた。こちらもスケルトンデザインを採用した意欲作だが、Firefox OSを搭載している点などを含めたマニアックな仕様により、一般層への人気にはつながらなかった。

 一方、「Nothing」は、スケルトンデザインを武器に、スマートフォンデザインにおける画一化の打破を実現しようとしている。

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