『マイクラ』『ARK』『Rust』……激戦区となっているクラフトサバイバルにおいて、なぜ『Vライジング』はヒットしたのか

 2022年5月17日のリリース以降、またたく間に話題となり、一か月で200万本の売り上げを達成した『Vライジング』。6月には日本語に正式対応し、日本国内でも話題となった。そんな本作は、今年最も成功を収めたインディーゲームの一つといって間違いないだろう。

 本作のジャンルはクラフトサバイバルなのだが、このジャンルはすでに『Minecraft』、『Terraria』のような名作に加え、『ARK: Survival Evolved』や『Rust』といった今なお配信で人気を博しているタイトルが存在する。また、2021年にリリースされた『Valheim』の成功は記憶に新しく、今年3月には『Core Keeper』が好評を得ているほか、今後も様々なタイトルがリリース予定となっており、話題に事欠かないジャンルだ。

 同時に、このジャンルは飽和気味になっており、生半可なゲームでは成功をおさめることは難しい。にもかかわらず、本作はメガヒットを記録している。その理由としてまずあげられるのが、本作がクォータービュー視点で楽しめるクラフトサバイバルであることと、ヴァンパイアをテーマにしていることによる話題性だ。クォータービューとヴァンパイアはどちらもコアな人気を獲得しており、これらの要素が好きなゲーマーの耳に入れば、ついついプレイしたくなるタイトルであることは想像に難くない。

 とはいえ、クラフトサバイバルという激戦区では、話題性だけではここまでの成功を収めることは難しいのではないだろうか。本稿では、その要因を探っていく。

一見すると地味なゲーム

 さて、本作をプレイしてまず感じるのは、プレイヤーが操作することとなるヴァンパイアの虚弱さだ。ヴァンパイアといえば、マントを羽織り、丘の上に建った怪しい城に住む高貴な存在というようなイメージを持つ人も多いだろうが、本作における吸血鬼は、人類に敗れ去り、没落してしまった種族として描かれる。そのため、ゲーム開始時は領土や眷属はおろか、裸一貫で武器もない状態で行動しなければならず、自ら木や石といった資材を集めて拠点を作り、そこで装備を揃えていかなければならない。

 斧を片手に木を伐採するヴァンパイアは、「らしく」ないが、一方で日光やニンニク、銀といった弱点はそのままで、これらからダメージを受けてしまうし、血を吸わないでいると空腹で倒れてしまう。

特に日光の脅威は常につきまとい、夜になるまでは日光を避けて行動しなければ簡単に死んでしまう。日中は資材集めや、野生動物や人間との戦闘、屋根のない場所での建設まで危険と隣合わせなのだ。

 こうした従来のヴァンパイア像とのギャップや、日光を浴びると死んでしまうような虚弱さは、『Valheim』の「通気口がない場所でたき火をすると、いぶされて死ぬ」ようなシビアさと似ており、ユーモアとして話題になった側面もあるだろう。

 ともあれ、ヴァンパイアの虚弱さに加え、建設に必要な資源が多かったり、戦闘の難易度も高いことから、本作は序盤から根気よくプレイする必要がある。それに加えて、クオータービューと言っても「ハクスラ」的な要素も薄く、レベルアップの概念やスキルツリーによるビルド構築などは存在しないし、戦闘の演出も派手さにかけていることから、実際にプレイしてみると予想以上に地味なゲームだと感じてしまう。

日光は悩みのタネとなる

ヴァンパイアというテーマと世界観

 だからといって、本作は話題性だけのゲームなのかと問われればそうではない。むしろ地味に思える序盤からしっかりとした導線が引かれており、ついついプレイしているうちに面白さが分かってきてハマってしまう、いわゆる「スルメゲー」の類だと筆者は感じた。

 まず、本作は常に「〇〇を操作する」「〇〇をクラフトする」といったように、次にやるべきことが示されており、それを達成することで新たな要素が解禁されていく。最序盤は基本となる骨の装備を作りながら、拠点作りのために必要な要素を解禁するといった風にだ。

 指示されたとおりに目標を達成し、ゲームを進めていくと新たなクラフトレシピを解禁するためには各地にいるボスを倒す必要がでてくる。ボスはかなり強敵なのだが、倒さない限り次の段階に進めなくなってしまう。

 本作では敵を倒して経験値を獲得し、レベルアップをすることで成長するようなシステムは存在しない。キャラクターの強さは何を装備しているかで決まるので、当然今自分が作れる最高の装備をクラフトすることが求められる。そして、その装備をつくるのには作業台といった施設が必要で、当然施設にはそれを配置するのに相応しい拠点が必要となってくる。

 このように本作では、ボスを倒すために拠点を整備し、ボスを倒して解禁された技術を用いて拠点や装備を強化し、さらに強いボスへと挑むこととなる。クラフトサバイバルでありながら、目的としての戦闘に焦点が当たっているタイトルなのだ。

装備の質が高いほど、ギアレベルという数値も上昇し、それによりステータスが決まる

 肝心の戦闘は、この手のゲームの中でもかなり面白い。ボスの行動はしっかりとパターンを把握しなければならないし、道中にいる雑魚敵も侮れない。一般兵の大群に捻り潰されるなんてこともザラで、慣れるまではなんども死んでしまうような難易度だ。

 戦闘システムはスキルを駆使したもので、ダッシュや遠距離魔法、自己バフ、カウンターなど、様々なスキルを駆使して戦闘を行う。スキルをセットできる数は決まっているので、状況に合わせてどのスキルを装備するかがポイントとなる。

 いま装備できる最高の装備と、適切なスキルの選択、そしてプレイヤーの腕が揃っていなければ、ボスの攻略は難しく、上述した通り地道な努力が必要だ。しかし、そのどれもが「ヴァンパイアという種族の復興」というテーマに紐づいているので、高い没入感を維持したまま、ついついプレイしてしまうゲームとなっている。

 ボスを倒すことを目的にゲームを進行していくと、最初は掘っ立て小屋のようだった城はいつの間にか巨大になり、強力な装備とパワーを身に着けており、従来のイメージ通りのヴァンパイア像に近づいていることに気付くだろう。その時に得られる達成感はかなりのものだ。

強くなるためには装備が必要で、装備を作るためには施設が必要。そのため、施設を置くために城はどんどん大きくなる

 また、本作ではヴァンパイアらしく、人間や野生動物の血を吸って空腹を満たす必要があるのだが、この吸血は飢えを満たすだけでなく、吸血対象によって様々なバフを自身へともたらす。また、同じ種類の敵であっても血のクオリティに差があり、よりよい血液からは効果の高いバフを得ることが可能となっている。さらに、本作では人間を魅了し、眷属として扱うことができる。眷属は拠点の防御の他、クエストに出してアイテムを採取させることも可能となっている。

 食事にするにせよ、眷属にするにせよ、効力の高い対象を見つけるためには、集落や軍事拠点を何度も襲って血の厳選を行う必要がある。こうした要素は、レアドロップを狙って同じモンスターに何度も挑むような感覚で楽しむことができ、眷属の厳選は本作における数少ない収集・やりこみ要素となっており、ロールプレイにも一役買っている。

効果の高いバフを求めて、よりよい血液を求めることとなる

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