『Weekly Virtual News』(2022年7月19日号)

広瀬香美がVRChatにやってくる? 注目集まる国内のメタバース情勢と「黒船」迎える日本VTuber業界

 「冬の女王」が、「VRChat」にやってくるかもしれない。

 代表曲「ロマンスの神様」が「TikTok上半期トレンド大賞」に輝いた広瀬香美が、「VRChat」アバターを活用したフェイスダンス動画をきっかけに「VRChat」に興味を示してから一週間。なんと彼女は「Meta Quest 2」を購入し、「TikTok」にてセットアップの様子を配信したのである。

 桁外れの行動力を前に、「VRChat」ユーザーからも驚きの声が上がっている。国内のTwitterブームの火付け役の一人とも語られる広瀬香美が、今度は「VRChat」を日本に広めていくのか、ただただ目が離せない。もしかしたら、その時の姿は「ロポリこん」かもしれない。

 なお、「ロマンスの神様」のフェイスダンス動画は、ニコニコ動画で100万再生を記録した。投稿者のLein./キノピオProの他の動画も再生数を伸ばし始めており、まさに時の人である。ここからニコニコ動画全体で「VRChat」人気がくるかどうか注視したいところだ。

 国内のメタバースへの注目度は、「ロマンスの神様」の熱気以外でも伺える。特に大きな動きといえば、かのMetaが日本で開催を発表したビジネスエキスポ「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」だろう。約30のメタバースビジネスに関わる企業、団体・官公庁が登壇する、なかなかに大きなビジネス向けイベントである。メディア・一部関係者向けのイベントとなるが、発表内容は10月18日から開催予定の「CEATEC 2022」にて公開される見込みだ。

 7月14日には、一般社団法人Metaverse Japanによるイベント「Metaverse Japan Summit」も開催され、様々なテーマでトークセッションが展開された。また、官公庁に目を向けると、経産省、総務省で相次いでメタバース関連の研究会が発足した一週間でもあった。エンドユーザーやエンタメとは異なる観点からも、国内のメタバースの注目度は高まりつつある。

 新興メタバースにも動きが見られる。Webブラウザからアクセス可能なメタバースを提供できるプラットフォーム「Vket Cloud」は、ベータテスト参加者による制作ワールドの一部先行公開を開始した。最初に公開されたワールドは20個で、7月11日の公開後も少しずつ増えつつある。

 この先行公開されているワールドたちが興味深い。「VRChat」で公開されているワールドもあれば、アバタークリエイターの作品を紹介するワールドや、NFTアートを展示するギャラリーにフォトグラメトリワールドなど、かなり幅広い文化圏からワールドが投稿されている印象だ。ソーシャルVR文脈とクリプト文脈が混ざり合う「潮目」となるか、「Vket Cloud」のさらなる拡張には期待したい。

 「にじさんじ」と「ホロライブプロダクション」からは新人男性タレントのデビューが相次いだ。

 「にじさんじ」からは、バーチャルタレント育成プロジェクト「バーチャル・タレント・アカデミー」出身者によるグループ「VOLTACTION」がデビューした。7月11日にデビュー広告を渋谷駅に掲示、7月13日にメンバー公表、7月16日にデビュー配信と、これまでの「にじさんじ」としてはめずらしい形式をとった。

 事前に大きく場を温めてから、満を持してのデビュー、といった趣きだろうか。3月にデビューした「Ranunculus」と同様に、「バーチャル・タレント・アカデミー」出身者は初動を手厚くケアするという体制が一般化しそうだ。

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