悔しくて何度も挑んだ『海腹川背』 “激ムズ”ゆえの達成感と中毒性に魅了された話
最大の魅力は“上達するほどに楽しくなる奥深さ”
上述の通り、ゴム紐を用いた数々のアクションが画期的だった『海腹川背』。しかし同時に、同作のプレイフィールが”プレイヤースキル全般”に大きく依存していたのも事実で、ゲームを始めて間もない頃は足場を渡ることさえ難しかった。加えてゲームオーバーになると進行状況がリセットされるため、後半に進んでから失敗した際の喪失感も凄まじかった記憶がある。誇張を抜きにして同作は高難度、プレイヤーによっては“激ムズ”に値する難しさを誇っていたのだ。
とはいえ、なにも理不尽なまでに難しかったわけではなく、同作にはプレイヤー自身が研鑽を積み、テクニックをひとつずつ習得していくことで面白さが倍増する味わい深さがあった。
筆者が初めて『海腹川背』を触ったのは友人宅。リアルタイム世代では無いものの、すでに同作をやり込んでいた友人が軽々とキャラクターを操る光景に感心し、スーパーファミコン本体ごとソフトを貸してもらい、家に帰ってから一人で練習に明け暮れた。最初は振り子(海腹川背の基本アクション)に始まり、「振り上がり」(ゴム紐をグルっと回して上方向に飛び上がる)「延長掛け」(ゴム紐を伸ばしてからジャンプ)……等々のテクニックも何とか習得。同作に搭載済みのリプレイ機能を使い、友人とプレイシーンを見せあったり、ゴールを定めて擬似的な※タイムアタック等にも取り組んだ。
同作では何度も繰り返し練習することで操作が洗練され、思いがけない移動ルートの発見やクリアタイムの短縮に繋がることも珍しくない。そして何より、経験を重ねて思い通りに動けた時の達成感がとにかく印象深かった。その感覚は”初めて自転車に乗れた”状態に近く、こうした”上手くなればなるほど楽しくなる奥深さ”こそ、『海腹川背』並びに同シリーズ最大の魅力と言っても過言ではないだろう。もし興味があるなら、動画サイトでシリーズタイトルのタイムアタック動画をチェックしてみて欲しい。熟練プレイヤーが見せる驚きのテクニックに思わず声が上がるはずだ。
※タイムアタック機能の追加は『海腹川背・旬』から
昨今のアクションゲームと比べるとシンプルな印象の『海腹川背』だが、単純明快ゆえにいつ遊んでも安定した面白さを味わうことができる。まだ遊んだことがない方やプレイ済みの方も、30年近く続く同シリーズのポテンシャルをこの機会に体験してみてはいかがだろうか。