渋谷ハルの「TSM FTX」加入から考える 世界のゲーム配信における日本市場の重要性

 先日、VTuberの渋谷ハルが世界的eスポーツチーム「TSM FTX」のストリーマー部門へ参加したことを発表した。渋谷ハルは屈指の『Apex Legends』プレイヤーであると同時に、VTuber限定の大型カジュアル大会『VTuber最協決定戦』の主催者でもある。

 TSM FTXは、2009年発足の世界最大級のeスポーツ組織。日本人ストリーマーが海外のチームに参加すること自体が稀ではあるのだが、TSM FTXは先日、16歳の若き日本人プレイヤー・Crylixの加入を発表するなど、精力的に日本人プレイヤーの採用を進めている。

 加入に際して、TSM FTXの公式Twitterは、『Apex Legends』最強のIGL(In Game Leaderの略、ゲーム中の指示役)と名高いImperialHal(インペリアルハル)選手に触れつつ、「1人のハルじゃ物足りないと思ったので、もう1人加入しちゃいました」とツイートするなどかなり砕けた雰囲気だ。

 『Apex Legends』はもちろん、『League of Legends』や『VALORANT』、『Rainbow Six Siege』や『Fortnite』など多数の部門で成績を残してきた名門チームのTSM FTXに、なぜ渋谷ハルが加入したのか。渋谷ハルはTSM FTXへの加入について自身の配信にて、「最近TSM JP(TSM FTXの日本語公式Twitterアカウントのこと)動かしてますよね」「みんなが驚くことがしたい」と多くのゲーミングチームの中からTSM FTXに話を持ち込んだきっかけや理由を語っている。

TSMに加入しました【渋谷ハル】

 最大のeスポーツチームでありながらも、海外チームであるゆえに日本からは壁を感じる存在であったTSM FTXだが、渋谷ハルの言う通り、2021年1月から日本語公式Twitterを開設し、日本語話者へ向けての情報発信をおこなっている。

 こうした取り組みはTSM FTXだけではない。イギリスを拠点に活動するプロeスポーツチーム・Fnaticも2019年7月から東京を拠点に日本版Twitterの運用を開始。欧州のチームではお馴染みとなる、ほかチームとのフランクな掛け合いは英語版Twitterアカウントと変わらず、日本のeスポーツチームにも気さくにリプライを飛ばす様子が見受けられる。

 これらの背景には、近年日本のeスポーツシーンが国際的な注目を浴びる機会が増していることが挙げられるだろう。

 先日開催された5vs5対戦型タクティカルFPS『VALORANT』の国際大会『2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 — Masters Reykjavík』には日本からZETA DIVISIONが出場。

 これまで日本のチームがなし得なかった世界3位という歴史的快挙を達成し、Twitterでは連日「#ZETAWIN」がトレンド1位、関連ワードの多くがトレンド入りした。

 5vs5の対戦型タクティカルFPSというジャンルでは、ZETA DIVISIONに限らず、日本という地域全体が「弱小地域」という評価を受けてきた。そのため、ZETA DIVISIONの快進撃は“シンデレラストーリー”として日本国外からも多くの注目を集めることとなった。

 海外キャスターによる日本語でのツイートも散見されるほか、ベスト4進出時点での大会公式Twitter上のアンケートは、ほかに大差をつけてZETA DIVISIONが人気を集めた。

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